にじいろ
今年はまだ、虹を見ていない。
夕方に小雨が降るたびに、空を見上げているのに、今年の虹は恥ずかしがりやなんだろう。
もしかしたら本当は、あまりに恥ずかしすぎて透明になってしまったのかもしれない。
雨粒のつぶつぶは本当は透明で、でも中にはなにやらかにやらぎっしり詰まっている。
ずっとずっとずうっとむかし、まだ文字が書けなかったころに、そんな絵を見た。
大きな雨粒の中にぎっしりとなにやらかにやら詰まっていて、みんなは、きもちわるい、きたないって言ってたっけ。
雨が降るたび、あの絵を思い出す。
だから、雨を飲んじゃだめなんだって、言われたっけ。
だけど本当は、それだって降ってきたものじゃない。
降ってきたものは、また天に戻る。
わたしたちが、そうであるように。
高い空から堕ちてきて、地面に叩きつけられて、それでも這いつくばって、だけどやっぱり力尽きて、
ときには、
地の底や海の底まで沈むけど、
また、あの空に戻っていく。
虹なんてただの現象に過ぎない。
夢も希望もない。
光と水膜があれば、屈折の具合で光が分かれて見えるだけだ。
光に色が見えなければ、この世界は白黒だったから、虹なんて見えても見えなくても、世界は虹の色をしている。
それでも振り返ると、虹がかかっていないかなって、期待してしまうよね。
虹が見れたら、やっぱりなんとなく、得した気分になるよね。
恥ずかしいなら仕方ないか、しゃぼんだまでも吹いていよう。

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