姉がわけのわからないことを言ってきます 3?4?
「人間は気が付いてないんやけどね」
と姉が言う。
「本当は、世界を支配しとるんは、植物なんよ、分かる?」
まあ、あながち間違いでもないだろうな、とは思うが、なんとなくニュアンスが違う。わたしが考えている生態系における貢献度云々の話ではなさそうだ。
「だって植物は、動きも話もせんやろ。そやのに、いろんなことを人間にやらせてくるわけよ。品種改良とか、環境保全とか。みんな、自分の利益のためやと思って、一生懸命色々しよるけど、それは全部、植物にやらされよるだけなんよ」
という、わけのわからない主義を、ひと月ほど前から姉が掲げてくるようになった。特に害はないので放ってある。
先日、我が県が必死で開発したらしい柑橘が中国に流出して売られているという話を、姉がスクショして送ってきた。この人、何かにつけて世界のニュースを送ってくれる。帰ってから話してくれることもあるが、どうやら今すぐに言いたいときは、送られてくる仕組みのようで、この柑橘事件もすぐにお伝えしたいことの一つだったようだ。
わたしの返事は、
笑
だ。
我が県の人々というのは、田舎ならどこでもそうなのかもしれないが、とにかく見栄っ張りで目立ちたがりで、自分が一番になりたいという気持ちが強い。自己顕示欲の塊みたいなもので、まあ、それでも辺鄙な場所にあるから、どんなに頑張っても人は来ないし、なんとなくゆるくてぬるいままに、今に至る。
ちなみに、観光客を誘致しようと頑張っているが、実際に我が県に泊まってくれる人はものすごく少ないのだそうだ。交通の便が悪すぎて、香川か広島から、一瞬やってくるだけなんだろう。高知まで行けば、泊まるしかなくなるが、対岸からちょっと見ただけで帰れるというのも痛い。ていうか、見るところがなさすぎなところも痛い。県庁所在地は、コンパクトシティとか言っちゃって、自分たちではそれがすごいことのように言っているが、要は、コンパクトすぎてさっさと帰っちゃうんだよ、超笑える。
この柑橘だって、有名になりたいがばっかりの、欲の結晶である。県外の人に、ふるさと納税で食べてめちゃくちゃおいしかった、なんて言ってもらったら、恥ずかしくて穴に入りたくなる。
それが、中国に盗まれちゃってるとか、笑えるじゃないか。
姉の返事も、
「ね、みんな怒ってたけど笑」
だったので、そういうことかと思った。
思ったら違った。
帰ったら、いかに植物が人間を支配しているかについて、また持論を展開された。ちなみに、この部分、ゲームのストーリーを読みながら、うんうん、と返事をしていたので、枝葉末節まで覚えていない。
姉曰く、品種改良をしたのも、植物の生き残り戦略の一つで、そのために人間は支配されてこき使われているのだとか。
中国へ流出したのも、ひと所にとどまっているのはナンセンスだから、海を越えたかったのだが、いかんせん、植物であるから簡単には日本海を越えられない。風で運ばれる距離ではないからだ。まあ、飛んだところで逆なんだけど。
そこで、上手に中国人の心理を利用して海を渡ってあちらで繁殖するに至った。のだそうだ。
まあ、あながち間違ってはいない。
植物は、巧みな生存戦略を展開している。自分で動くことも声を出すこともない代わりに、他のすべての動力を利用して繁殖し、ここまで子孫を残し続けてきた。
「そうなんよ、だって、太古の昔から植物はずっと生き残ってるわけやん? 彼らこそが世界を支配しとるんよ」
という姉は、家にある鉢植えを、毎日あちこちに移動して、日があたるように、適温であるようにと気を配っている。そのうちの一つはわたしが県境の道の駅で見つけてきた蘭で、もう一つは近所のスーパーで売られていたガジュマルがかわいいかわいい、お家に連れて帰りたいと言っていたら、姉が買ってきたものである。
間違いなく、姉は植物とわたしに支配されている。もっというなら、猫にも支配されている。
先日は、草木染めの番組を見ながら、嘆く。
「でもこれだって、支配されとるんやで、そやのに気になってチャンネル変えてしまった」
それに、と姉は続ける。
「わたしなんか、生まれたときから支配されとるんやで、名前だって、植物が蔓延ってるっていう意味の名前やもん」
まあ、かなり昔から確かに支配されてるよね、月を見て悦に行ってたけど、彼もまた、植物に支配されてたわけね笑

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