闇の子どもたち 断片23
目を覚ますと兄がいた。だから、彼の第一声は最悪だ、だった。
「申し訳ありません」
掠れた声で言うと、窓の外を見ていた兄が振り返る。怒られるのかと思ったら、大きなため息をつかれた。
「事情は聞いた。あの、ジャギスという子が、ひどく落ち込んでたぞ。お前を殺しかけたらしい」
殺されかけたのか、と兄は笑いを含んで聞いた。
「いえ、私が自分でしたことです」
「倒れる前に、失敗したと言ったらしいな」
「申し訳ありません」
彼はもう一度言った。
ラスエトに集められた子どもたちは、たとえ命を落としても、親元へ帰ることはない。任務で何があっても、親兄弟が呼ばれることもない。
家を離れた瞬間が、家族との永遠の別れだ。なのに、自分が捨てたはずの家族が、兄たちが故郷から呼ばれたことが、何を意味するか分かる。
どれだけ自分が愚かだったかも。
自分の役割を、どれだけ軽視していたかも。
今は、一番上の兄しかいなかったが、彼を助けたのは二番目の兄のはずだ。家にいたころ、その役割を担っていたから。
ラスエトの力をもってしても、彼を助けられないと気がついた誰かが、家に連絡したのだろう。それだけ、ことは深刻だったというわけだ。
「あのな」
兄は椅子を引き寄せて、彼のそばに座りながら言った。横になって未だ起き上がる力は出ない彼の、手に触れる。
「お前、勝手に出ていったから言えなかったけどな……俺たちは、お前を駒にしようなんて考えてないからな」
そう言われるだろうと思っていた。兄は引き止めるだろうと思っていたから、決められた出立日を勝手に破って先に家を出た。
「あいつがお前の伯父だからって、お前を国の駒にする気もないからな」
彼は嫌になって、兄から顔を逸らした。
「兄上は、ご自分の息子をかわいがってあげればいいんですよ」
「……お前、そんなことを気にしてたのか」
呆れたような声と共に、ため息が聞こえる。
「あいつが、お前にろくでもないことをしでかしてるのは、知ってたが……それは、俺とあいつの問題だろう」
「そうでしょうか? 今後、家の存続を揺るがす面倒な事態になりますよ」
「だとしても……そんなこと、お前が気にすることじゃないだろう……」
「それに、いずれにしても、私がここへ来るのが最善の道だった、そうでしょう」
兄はまたしてもため息をついた。
「すまない」
「それは、兄上が、母上を嫁にしなかったことについて、ですか? 仮に、母上が兄上に嫁いでいても、私という結果がさほど変わったとは思えません」
そういうことじゃなくてだな、と兄は言葉を濁した。
「お前、本当に俺のかわいいニコリスか? あんなに、あにうえ、あにうえ、って懐いてくれてたやつはどこ行ったんだよ」
「子どものころの話です。それに、もうニコリスではありませんから」
「今も子どもだろ……」
そんなことより、と彼は兄に向き直った。
「早く帰ったほうがいいですよ。さもないと、弟を二人もラスエトに取られかねませんから」
はあ、と兄はわざとらしくため息をついた。
「困ったやつだな、本当に。もうちょっと寝ろ。無理はするなよ」
それでは
断片は
ここまでです笑
つながっても
間に別のお話が
挟まりまくると思うの笑

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