すずめは あいを もとめている
ねこが
すりよってくるのは、
餌が欲しいからに他ならない
という人がいる
それを信じているなら
人生は
少し寂しいかもしれない
とぱちこは思う
ねこねこは
食べ物ではなく愛を求めている
ねこに
いえがないのは
可哀想なことだ
という人がいる
それを信じているなら
人生は
少し窮屈かもしれない
とぱちこは思う
ねこねこは
家ではなくて自由を求めている
愛されたい
でも
縛られたくない
触りたい
でも
触られたくない
それが
ねこ

朝、家を出ると、すずめ(ねこ)が門柱の門灯の横に座っていた。わたしを見ると、もうたまらない、といったようすで、
にぁぁぁぁぁ!
と叫ぶ。
お腹が空いているわけではない。尻尾を一生懸命に立てて、ぎゅうっと背中をできるだけ持ち上げて、もう、前足も後ろ足も、門柱から離れて行かんばかりになって、
にぁぁぁぁぁぁ!!!
と叫んでいる。目と鼻の先にいるのだから、ここにすずめがいます、と叫んだところで、一目瞭然なのだが、もっともっと、もっともっともっともっと、わたしに見てもらおうと、懸命に叫ぶ。
わたしが通り過ぎるまで、彼は必死だった。
すずめ、とは、わたしが姉に買ってもらった、みけねこのぬいぐるみの名前だ。それに雰囲気が似ていたから、すずめ、と名付けた。
ちなみにくじゃくさん(ねこ)がもらったのは、ロシアンブルーのぬいぐるみで、すみれ、という。ぶちねこのつばめ、とらねこのひよこもいる。
生きているこねこのほうのすずめは、最初、二重人格だとされていた。時と場合によって、異常に人懐こいときと、ビビリなときがあるからだ。
のちに、二重人格ではなく、ドッペルゲンガーであることが判明した。否、双子だった。片方は迫り来るすずめ、片方は遠くからチラ見しているすずめ。
だと、姉は言うのだが、わたしにはなぜかどちらも迫り来る。ときにこうして、門のところで待機していて、なにやらかにやらと、主張してくる。
彼の動きを見れば、わたしに擦り寄りたいか、撫でてほしいか、おそらくそのどちらもだろう。ねこねこが親愛の情、というか愛を求めるときにいつもこんな仕草をする。
ところが、わたしが彼の思う範囲にほんの少しでも近付こうものなら、引き攣った顔をして後ずさる。撫でてほしいのに触られたくないなんて、かわいそうなことだ。だから仕方なく彼は、体いっぱいに叫ぶしかないのだ。
ねこねこは、人々に誤解されがちである。
彼らはツンデレであることが、相手の気を引けると本気で信じている。もしも、猫と仲良くなりたいなら、何回かに一回は無視をするといい。彼らは愛を試されているかと勘違いして、勝手に仲が深まる。
ねこねこの残念なところは、人々も自分たちと同じにツンデレかと思っているところだ。何回かに一回、無視をしてやればこちらが釣れると思っている。
猫好きならそれで釣れるのだが、猫を知らない人々の中には、猫は冷たい、愛想がない、などと悪様に言うものもいる。どころか、頭が悪いとさえ思われていて、勝手に忘れたのだと解釈されていたりもする。
違うのだ。ツンデレが正攻法なのだ。
最も困るのは、それをねこねこの側が勝手にやっているところだ。彼ら妄想癖がひどくて、たとえば道端でこちらが気が付かなかったことを、勝手にツン1と数える。
あまりにツンが続くと思い余って、あの人はぼくのことを大好きに違いない、だから無視をしているのだ、と解釈する。こちらは、ねこねこではないから、植木の陰や車の下、ましてや側溝の中にいるねこねこに気がつくわけもない。
そしてある日、こんなふうに思い余って、
にぁぁぁぁぁぁぁ!!!
と、なるわけである。ここに、食べ物の介入する余地もなければ、飼い猫になる余地もない。単にわたしとすずめの関係性の問題だ。
夕方帰宅すると、同じ場所に同じほうのすずめがいた。本当は、わたしが帰ってきたのに気がついて、おそらくは木の上から飛び降りたらしい音がしたのだが、素知らぬふりで声をかける。
ただいま、ずっとそこにおったん?
にぁぁぁぁぁぁ!!!!
わたしの発言は彼のお気に召したらしい。曰く、いいこにぱちが帰るのを待ってましたよ、と。
郵便受けを確認しようとすると、もうわたしに触らんばかりに前足を動かして叫ぶ。
にもかかわらず、わたしが門を通るとき、彼の意図しないタイミングでテリトリーに入ってしまい、彼は後ろ足が門からずり落ちた。
謝ると、気を取り直してまた叫ぶ。
帰るね。おやすみ。
にぁぁぁぁぁぁ!!!!
もちろん、ねこねこは潔いので、ドアを閉めると静かになる。きっとすでに別のことを考えながら、どこかへ出かけたことだろう。
振り返ったらまだ手を振ってくれているかわいい彼女、みたいなサービスはしてくれない。

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