闇の子どもたち 断片17
自分の中にあるものが何なのか、小さいころはずっと分からなかった。
あるとき、なんのきっかけか分からないままに暴れ出す。痛いといえば痛い。苦しいといえば苦しい。
うまく説明できた試しがない。
ただ、彼も普通の子どもと同じように、風邪をひいて熱を出したし、食べ過ぎて腹痛を起こすこともあった。
が、それとは違う。
それとは違う、と説明できるようになって初めて、兄と父が顔色を変えた。まだ幼かったがその日のことは忘れられない。
彼が家の中でも頭抜けた魔力を持って生まれたことは、すでに誰もが知っていた。
彼は五歳になったばかりで、ちょうど兄に魔力の使い方を教わり始めたころだった。それまでは、母と家で待っていなければならず、話を聞くことしかできなかった日々が一変した。
兄は彼に力をコントロールする方法を教えてくれた。同時に、それが自分や人を傷つけることも教わった。
上手にできるようになったら、一緒に仕事ができるよ。
そう言われて、ずっとずっと楽しみにしていた。大きくなって兄や父のように働きたい。だから、彼は頑張った。
彼が力を上手に使えるようになるたびに、兄はとても喜んでくれた。それが嬉しかった。褒められることより、兄や父の力になれることが嬉しかった。
なのに。
併せて知らなくてもいいことまで知ってしまった。
これまで自分が苦しんできた正体が何なのか。
違う、と分かったのは、それが兄との訓練の中でコントロールしていたはずの力だったからだ。
普段はずっと、どこか彼の奥の方で「おとなしくしている」。彼が力を使おうとすれば、それに応じて「適切に」引き出される。
兄は「お前は筋がいい」と言って褒めてくれた。魔力を持っていても、上手に使うことができないものもいる。コツを掴むことができるのも、大事なことで、それを併せて「お前は大物になれる」そう、兄は褒めてくれた。
「お前は大物になれる」
普通の子でいたかった。
魔力も普通でよかったし、そこまで褒められなくてもよかった。あのリーデンみたいに、調子に乗って失敗して、怒られてもよかった。
そうしたらリーデンだって、彼のことを嫌いはしなかっただろうし、一緒に仲良く大人になれたかもしれない。
別に、兄の息子であるリーデンが家を継ぐことを、彼はなんとも思っていなかった。
もし自分が、普通の子だったら。リーデンをちゃんと支えて、家業を今よりももっと繁栄させられたのに。
彼の持つ力は、彼の意思を破って暴れ出す。
父はいずれ大人になれば制御できると言った。体がもっと大きくなって、体力がつけば、抑え込めるはずだという。
彼はそう信じている。自分にならできる。
でも、この力が肉体を苦しめなくなっても、彼がこの力を持って生まれてきたことと、その源がどこにあるかを変えることはできない。

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