コンサルをそんなに増やしてどうするの? 需要増の理由を探る
この記事は、2025年6月4日初出のテキストの転載です。
コロナ禍の直前くらいからコンサル業界が活況といわれています。大手には一時期さばけないくらいの案件が舞い込んでいたそうです。
一方でコンサルに対しては、昔から不満の声も少なくありません。どうしてこういう状況になっているのか、長年業界に身を置く株式会社K.I.D.S.代表の吉江彰洋に聞きました。
ちなみに普段はメディア関係の仕事をしているK.I.D.S.広報も、雑誌関係者から「コンサル特集は売れる」という話を耳にします。
●企業のホワイト化
――どうしてコンサルの需要が増えているんですか?
理由は大きく2つあると考えています。1つ目は企業のホワイト化です。
電通の過労死事件が判明したのが2016年秋。長時間労働が社会問題となり、2019年4月から残業の上限規制などが始まりました(中小企業は翌年から)。社員を長時間働かせられなくなったわけです。
そこで残業を代替させるためにコンサルに注目が集まったと考えています。

――残業のアウトソーシングってことですね
倫理面はともかく、法令上はコンサルって何時間働かせても問題になりにくいんです。会社員の場合でも裁量労働制(みなし労働時間制)が採用されていることが多いからです。
東大生の就職先ランキングで官僚人気が落ち、コンサルが上位にきはじめたのも2017年卒ぐらいからのようです。
たとえば、2016年卒だとトップ10を金融や商社が占めていますが、2017年卒ではアクセンチュア、野村総研、マッキンゼー、シンプレクスといった企業の名前が確認できます。

官僚もコンサルもどちらも労働時間が長い点では似ています。
東大新聞は東大生のコンサル人気を「成長」という言葉で分析していますが、ホワイト化した大企業よりも幅広い経験を積めるし、官僚よりも稼げるという発想がありそうです。
調査では自由記述式でコンサルを志望する理由について聞いている。そこには「いろいろな業界に携われる」「BtoBを知る(ことができる)」「大企業の経営課題解決に携わることができる」といったコンサルの業務に関する志望理由もある一方で、「能力があれば相応の収入を約束され、また転職もしやすい」「自己の成長の機会がある」「転職ができる」といった、自らの成長機会や転職のしやすさを挙げた志望理由も目立っていた。
自分はまだ読んでいませんが、『東大生はなぜコンサルを目指すのか』なんて本が出たばかりなので、読んでみると面白いかもしれません。
●団塊世代の退職でリスクテイク困難に
――残るもうひとつの理由は?
団塊世代(1947〜1949年生まれ)の定年退職だと思います。周辺の世代も含めて、この年代はとにかく人数が多く、良くも悪くも「エイヤー」で思い切りよく物事を進める人がたくさんいました。
一方で、団塊世代が定年退職する2010年前後というのは、会社法の施行(2006年)など、コーポレート・ガバナンスの強化が進んでいった転換点でもあります。
エイヤーで物事を決める人たちがごっそり減り、企業コンプライアンスやガバナンスの意識が浸透していく―。そうなると新たに意思決定する人たちは、リスクを徹底的に洗い出して、慎重に物事を進めるようになります。
しかも、社員は法律上、長く働かせることができないという流れができてきた。そこでやはり外部のコンサルを活用しようという流れになっていきました。
●依頼者の利益は実現できているか
――残業規制がなかったら不要だったコンサルがたくさんいるということ?
残念ながらそういうことだと思います。労働力の代替というレベルでは、お客さんの利益は増えづらいでしょう。そのあたりがコンサルのマイナスイメージにつながっているような気はします。
コンサルの代表的なイメージのひとつとして、見栄えのするきれいな資料をつくるというのがあります。我々の業界では、それしかできないコンサルを「高級文房具」や「高級筆記用具」などと呼んでいます。
自分がこの仕事を始めたころは批判される存在でしたが、今は企業の業績もいいから、それすらも需要があります。でも、個人のキャリア形成も含めて、それって健全なのかなとは思ったりもするんですよね。
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