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新藤兼人監督、乙羽信子主演映画「縮図」

新藤兼人監督、乙羽信子主演映画「縮図」。綺麗事でない芸者の世界の実態を、「縮図」とは良く言ったもので、実に上手く描いており、歴史的な記録映画以上の価値がある作品だった。

山田五十鈴が主演して、まるで共産党の左翼のように、舞妓・芸姑なんて前近代的・搾取的な仕事はなくなった方が良いと短絡的に主人公に捨て台詞を吐かせて終わった溝口健二監督の「祇園の姉妹」よりも、その映画の主張が問題視され批判されたからか、逆に業界に忖度しまくったような、木暮実千代若尾文子主演の同じく溝口の「祇園囃子」よりも、この新藤兼人監督・脚本で乙羽信子主演の「縮図」はずっと秀作だった。

@齋藤江梨  ”好きでもない爺さんに体を捧げて…”というまるで”売春婦”のように思われる偏見を業界は非常に嫌います。だから溝口健二の映画「祇園囃子」では、舞妓を演じた若尾文子が無理やり体・接吻を求めて来た客の舌を噛み切り大怪我をさせたエピソードが入れられました。

奇しくも「縮図」と「祇園囃子」は同じ1953年度に封切られ、キネ旬のランキングでは前者が10位、後者が9位になっている。しかし、乙羽信子が主演女優賞を獲得した。ブルーリボン賞もである。興味深いことにキネ旬の助演女優賞を獲得したのが「祇園囃子」に出演した浪花千栄子であり、助演男優賞も同映画の進藤英太郎であった。「縮図」に芸者置屋の女将役で出演した山田五十鈴も実に適役だった。

特筆すべきは、新藤兼人の売れない脚本家時代の自伝的な監督初作品映画である「愛妻物語」(宇野重吉と乙羽信子が夫婦役共演で、「縮図」では宇野が父親役、乙羽が娘役だったが全く違和感なし)に出てくる、脚本に厳しい意見を述べる監督のモデルが溝口健二であったのが、興味深い。なお、僕が観た新藤兼人監督作品では「愛妻物語」が一番好きである。

新藤兼人のウィキペディアを読むと、彼の人生がいかに劇的であったかが分かり、一時いっとき、浮かばれなくても、諦めずに頑張れば、人間は大成することができるのだという実例を示されて勇気が湧く。

因みに、鈴木清順監督を僕は高く評価している、彼が監督した高橋英樹主演の映画「けんかえれじい」が好きだった(ピアノ演奏シーンが観物!)からなのだけれど、その脚本を新藤兼人が書いていたことをウィキで知って、改めて彼を見直した。好きになれない作品も多かっただけに、意外だった。

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