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実録、これが読む人間の目線

或る視点~審査かくありき

 まず短刀で刺す(直入)。

▲審査時読書のイメージサンプル

 この画像は、とある原稿に対して、俺自身が「下読みをしている時と同じ感覚で読みながら、考えたことをその都度言語化した」もの。読者というのは、どういうところに目をやりながら読んでいるのか、という参考になるのでは、と思う。

 Wordの20×20原稿用紙フォーマットで原稿を開き、読みながら思ったことを逐一「コメント」機能で記録してある。(本当の審査の時には、別にメモ用のアプリを開いていて、書き残したいことはそちらにまとめている)

 右枠外の、カードのようになった部分が「コメント」で、そこに、読みながら感じたあれこれを記述してある。拡大したりすれば確認できると思う。
 本当はもうちょっと入れても良かったが、コメント欄がうるさくなりすぎると醜くなるので抑えた。

 実際に審査として原稿を読む時、さすがにここまで細かいところまでメモを「残す」ことはしていない(頭で思うだけだ)が、校正や校閲に近い、意地悪く言うとねちっこい読み方をしているのが分かると思う。

 書く人にとっては、ある種の読み手はこういう指摘をする、ということを知って、自分の「どう書くか」に生かせるのではないかと思う。もちろんこの指摘通りその通りにするということではなく、自分のスタイルに噛み砕いて、咀嚼していく方が良いのは間違いない。

 読む人にとっては、自分の解釈や読み取りの幅を広げたり、そのことについて考えるきっかけになるのではないだろうか。ああ、こういう読み方をすることも出来るのか、と考えたり、なるほど自分と同じ読み方で、だから間違ってはいないのだなと安心したり。

 サンプル数としては少ないが、こういう実例で、応募者諸賢は応募原稿の執筆時や見返す/推敲の際に、審査する側がどこを見て読んでいるのか分かるはずだ。別に審査ということを考えなくても、他人の「読み方」を知ること自体が、読者の目線を知るという意味で役立つはずだ。



それ以外にもあるチェックポイント

 こういうマーカー方式の指摘方法だと、文字になっていないことを書き残すのが難しいので、それ以外に読みながら考えていることを、一部列記してみよう。チェックシート的にこれらずっと気にしているわけではないが、読み進めて「おや」と気になる部分はこんな要素に関してだ。

  • その場面の情景/風景/状況が読者に伝わるか

  • 世界観に不明なところはないか

  • 人物像は固まっているか/魅力的に描けているか

  • 物語のはじまりはどこか

  • 物語の筋道を、読者に自然に示せているか

  • 物語と主人公はしっかり関連しているか

  • 物語は面白いか/盛り上がりのアップダウンが設計されているか

  • 読者が予想できるストーリーと比べて、実際はどうか

  • 描写の過不足はないか

  • 言葉のチョイスは適切か

  • 良い文章表現があるか

  • 作品テーマはあるか、あればどう描いているか

  • そのテーマは面白さに貢献しているか

 これらの要素は、触れようとすると長くなりがちで、Wordのコメントでは書き残すことが難しい。実際の審査では自分用メモなので、重要なポイントは長くなっても書き残している。特定の作品に紐付かない内容にボカしつつ、実例を挙げる。

実例1:

 文章は下手の部類なのだが、さして読みにくいとも感じない。「こう書きたい」という自分の文体をイメージ出来ているが、語彙や知識が足りないので言葉の意味や使い方を間違えたり、文章の構成が煩雑になってしまっている状態、と見る。文意は通る。ちゃんとしたものを読んでインプットを増やしていけば、きっと巧くなるだろう。

実例2:

 するするーっと半分まで読んで来ちゃったけど、主人公は「能力者」ってだけで、何かを背負っている様子が、仄めかされるだけで明示はしないから、なんか物足りないんだな。具体性が欲しい。焦点がぼやけている。
 エピソードが足りず、言ってみればよくある異能バトルものの域を出ない。イベントでしかないことに筆を割いているからストーリーに費やす分が足りなくて、途中からの展開に自然さが弱く唐突感。作者都合が仄見える。イベントは削って、もう少しキャラの背負っているものに触れた方がいいのでは。

実例3:

 巧い文章を書けていて、情景もあるし会話にも味があり、その点は評価したい。冒頭から主人公の抱えるテーマが明示され、期待を持てたのだが……面白みに繋がらなかったようだ。エンタメとしては、主人公には快刀となって乱麻を断って欲しいのだが、組織の設定が足を引っ張って、乱麻に蓋して隠してしまう。これではカタルシスが訪れない。主人公の能力やテーマさえ蓋をされて、魅力を発揮できずに終わったと感じる。ポテンシャルは感じるのにもったいない。

 補足的に述べておく。登場するもののビジュアルの言及についてだ。
 いち読者として、何もビジュアル面の言及・描写がない文章は読んでいてとても困るが、純粋な外見情報がないだけなら、ライトノベルのようなライト文芸の場合、実際に本になったら挿絵や表紙で補完されるのだ。なので、「本になった作品を手に取った読者」には補完されるビジュアル情報を、応募時の本文で無言及であることは、実は不都合ではないのだ。
 だから人物のビジュアル言及が薄いだけならば、それだけで低評価にはしないよう心がけていた。

 ちなみにだが、冒頭でサンプルにした原稿について、突っ込んだ評価コメントを残すとしたら、こうなるだろう。

 小説の冒頭としては凡庸で、ここだけ読んで感心したり、引き込まれるということはない。だが文章が破綻しているわけでもなく、先へ進むことに支障はない。漢字を多用して印象が固いこと、やや冗長になりがちなのは気がかりだが、文体から小説「らしさ」は一応感じられる。この「らしさ」があるなら、この先に期待が持てないわけでもない。総合して、印象としてはネガティブもポジティブもなく、まだニュートラル。展開を待ちたい。
 審査通過するの可能性をこの時点で予測すると、かなり低い。

 サンプルになった原稿の著作権については安心安全。これは自分自身で三十年前(オエーッ!AA略)、1994年に書いた小説だ。
 三十年前というところにオエーッ! と来たが、読んでコメント書き残すたびにまたオエーッ! となったわ。



サンプルファイルダウンロード

 コメントを実際に参照してもらえるよう、画像のもととなったWordファイルを用意した。画像は原稿用紙一枚分のみだが、ファイルには10枚分が含まれており、ボリュームたっぷり大サービス。
 1994年に書いたものそのままなので、時代背景がもう現在とはだいぶ違っていてまた吐きそうだオエーッ!


▲詳細版サンプルWordファイル

 ダウンロードすると、ローカルのWordで開いたり、あるいはオンラインのMicrosoft365(無償でも可だとは思うのだが……)で開くことが出来る。ファイルダウンロードはセキュリティ的な不安もあろうし、まぁ付録程度で。手元のNortonによってスキャン済みではあります


今後の展望

 今後、有料のサービス提供をここnoteなり外部の『ココナラ』のようなスキル売買サイトで考えていて、このファイル、というかこの記事自体、自分が提供できるサービスのサンプルというつもりです。
 「このように読み込んでいく人による、執筆お手伝いサービスをやりますよ」という感じ。

 小説冒頭の原稿用紙10枚分を対象に、上記のようなWordコメントを付けるサービスを、3000円とかでまずやってみようかなと思っております。どうだろう。需要ありますかー。

(2025/06/07)追記

ということでやっております、そのサービス。


そのセルフプロモーションのための記事も参考にしてください。


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久保田弥代 チップ!? え、そんなことあるの? マジで?