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大東流と密教 ― 裏章:意識を変容させる密教儀礼の身体技法(上)

密教の儀礼には、身体と意識を深く揺さぶる独特の構造があります。本裏章では、表章では触れきれなかった「密教の実践的身体技法」を取り上げ、大東流との接点を静かに照らし出してみたいと思います。
三十数年前、私の知人が高野山の密教儀礼に参加しました。密教修行者の誘いを受けてのことで、場所は金剛峯寺・金堂。そこで行われたのは、春(胎蔵界)と秋(金剛界)に執り行われる「投華得仏(とうけとくぶつ)」を伴う「結縁灌頂(けちえんかんじょう)」でした。
結縁灌頂は、平安時代から続く「仏と縁を結ぶための入門儀礼」で、一般の信者でも参加できる数少ない密教行法です。しかし、その内部は想像以上に“身体的”であり、五感と意識を強烈に揺さぶる構造を持っているのです。
 
儀礼の体験:五感を奪われ、宇宙へと開かれる身体
知人の語るところによれば、儀礼は次のようなものでした。
 真っ暗な金堂に、お香がむせ返るほど焚かれている。
 参加者はぎゅうぎゅう詰めに並び、目隠しをされ、両手で印を結ぶ。
 指の間にはシキミ(樒)を挟み、前の人の背中にそっと当てる。(シキミ
 とは、強い香りと神経毒を持つ植物で、古来より儀礼に用いられてきたも
 の)
 先導者(阿闍梨)の声に従い、「おん さんまや さとばん(普賢菩薩の真
 言)」を唱えながら、金堂の中を延々と歩き続ける。
 暗闇・香・密集・真言・歩行-五感は次第に混線し、思考は薄れていく。
やがて、指先のシキミを離すよう指示が出る。床には曼荼羅が描かれており、シキミはその上に落ちる。中には大日如来の上に落ちるものもある。準備が整うと、目隠しを外すよう命じられ、その瞬間、一筋の光が曼荼羅の中心・大日如来(その上にあるシキミ)を照らす。
 「あなたは大日如来と縁が結ばれた」
 「あなたの守り本尊は大日如来である」
そう告げられたとき、参加者の多くは深い感動に包まれたという。
 
密教儀礼は“意識変容のテクノロジー”といえます。この儀礼は、単なる宗教的演出ではありません。五感を操作し、意識を変容させるための、数百年にわたり洗練された身体技法の体系でそのものなのです。

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