裁量労働制野郎マクガイバー

若い頃、冒険野郎マクガイバーに憧れていた。

どんなピンチでも、一人で乗り切る。
手元にあるものだけで状況を読み、構造を見抜き、突破口を作る。

ガムテープ。
ペーパークリップ。
古い配線。
よく分からない工具。

銃で解決するのではない。
力で押し切るのでもない。
頭と手先で切り抜ける。

それが格好よかった。

でも、実際にそれに近いことを長くやってみると分かる。

一人でできる、ではない。
一人でやるしかない、になる。

何でもできる、ではない。
何でも自分に来る、になる。

工夫で乗り切る、ではない。
仕組みの穴を、自分の身体で毎回ふさぐ、になる。

マクガイバーも、内心では思っていたのではないか。

「いや、これはSWAT案件やろ」
「爆発物処理班は何してんねん」
「フェニックス財団、現場に俺しか出してへんのか」
「裁量労働制にも限度があるやろ」

なんでもできる男は、たいてい便利な男でもある。

そして便利な男のところには、仕事が集まる。
できてしまうから。
最後には何とかしてしまうから。

解決すると、周りは言う。

「さすがマクガイバー」

ちゃうねん。

さすがで済ませるな。
体制を整えろ。

若い頃は、マクガイバーに必要なのは、ガムテープとペーパークリップだと思っていた。

でも今なら分かる。

必要だったのは、各種手当と、仕事を切り分ける上司だった。

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