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『水の司』(ミズ ノ ツカサ)㉗

第二十七話 頼りになる奴 

竜治と洋二郎が家に到着すると
「おい、竜治(タツハル)、
あんなこと請け負って
大丈夫なんか?」
「古間真平(フルマ シンペイ)氏に
アポイントを取ることか?」
「お前にそんなツテがあったんか?」
「お父さん、
高校時代からの友達の
アキやんを覚えているか?」
「アキやん?
どんな子やったかな?」
「良平叔父さんから聞いているやろ、
学園祭で一緒に
漫才をしたヤツや。」
「あぁ、お前が立ち直る
きっかけの・・・あの時の相方か?」
「そうや、アイツは
大学の推薦で
大手飲料メーカーの
『サンバード』に就職してな、
そこで新商品の販売促進を
担当する部門に配属されて、
今では誰もが知っている
『弥右衛門(ヤエモン)』て言う
ペットボトル入りのお茶を
ヒットさせよったんや。
当時は『洋酒メーカーが
お茶を売るんやて。』
と周りから
散々言われたそうやけれど、
今では当たり前のことのように
なっているやろ、
その功績で今は
サンバードの常務さんや。
そして、サンバードは
古間真平がキャスターを務める
ニュース番組のスポンサーや。」
「そんなすごい友達がおったんか!」
「うん、そうやから
今度約束を取り付けて
美咲(ミサキ)と一緒に
会いに行って頼んでくるわ。」
「ほな、頼んだで! 
あっ、そうや、美咲ちゃんの
観光ガイド雑誌の方でも
『京の名水・霊水巡り』
と銘打って
地下水の広報活動の協力を
頼んどいてくれ。」
「わかった、
ちゃんと言っておく。」

竜治は部屋で美咲に
観光ガイド雑誌に
『京の名水・霊水巡り』
の記事を載せる依頼をして、
アキやんとの面会に
同行しないかと誘った。
「いいわね、
アキやんと会うのは
何十年ぶりかしら? 
でも、京の名水の取材や
下調べで忙しくなるから、
今回はあなた一人で行って。
なんせ京都市内だけでも
名水・霊水と
呼ばれている所が
30ヶ所近くあるの。」
「それは残念だな、
じゃあ、別の機会に
完全プライベートで
会う約束をしてみるよ。」
「ありがとう、
それなら
気兼ねなく話せるわ、
できれば、
他の同級生なんかも呼んで
同窓会にしてしまわない?」
「その方がいいかもしれないね。」

「友田常務(アキやんのこと)と
午後1時の約束しております、
京都の木舟です。」
「少々お待ちください。」
「常務、京都の木舟様が
お見えです。
・・・はい、第三応接室ですね。」
「木舟様、ご案内いたします。」
「常務は間もなく参りますので、
こちらにお掛けになって
お待ちください。」
案内の女性が出て行くと
しばらくして、
「失礼します、友田でございます。」
と小太りの壮年男性が入ってきた。
「やあ、マロ(竜治のニックネーム)、
何十年ぶりだぁ?」
「アキやん、すっかり
オジサンになったな!」
「お互いにな!ハハハハハ」
二人は肩を叩き合い
久しぶりの再会を喜び合った。
「ミサキは一緒に
来ていないのか?」
「すまない、誘ったのだけど
仕事があってね。」
「それは残念やなぁ~。」
「今回の件でミサキにも
観光雑誌を通じて
京都の地下水のアピールを
頼んであるからな。」
「それは大事な役目やし、
仕方ないな。」
「アキやんも
仕事がいそがしいやろうに
今回の事で色々と動いてくれて
ありがとうな。」
「他でもないマロ(竜治のこと)の家
の一大事やないか、気にするな。」
「そこでやけどな、
古間真平さんとは初対面やし
どう言うて話したら
エエやろうかな。」
「あんなマロ、
人にものを頼む時には
いくらこちらに
正義・正論があっても
一方的に『頼みます』
『お願いします』
ばっかりではあかんねん。
動いてほしいと思っている人に
『なるほどそうやな』
と納得してもらわへんかったら、
また、納得や理解がもう一つでも
『このひとが言うんやったら』
と言う信用が
なかったらあかんねん。」
「そうやから言うて
どう話したらエエのやろ?」
「何呑気なこと言うてるねん、
選挙はもう来年やろ!
僕が一緒に付いて行くから、
この間電話で僕に話したことを
そのまま言うたらええねん。
後は僕が横から
カバーしてやるさかい。」
「うん、頼んだで、
口添えしてくれると助かる。」
「ほな、車を回すから
今からテレビ局へ行って
本人さんと話しするぞ!」
「ええっ、
もうアポを取ってあるのか?」
「当たり前やがな、
お前から電話で
この件を聞いた時点で、
もう動き出してる。」
「相変わらず
段取りのエエ奴やなぁ~!」

テレビ局に着くと
二人は応接室に通され
すぐに古間真平が現れた。
「友田常務(アキやんのこと) 
本来なら私の方から
うかがわなければならないのに、
わざわざお越しいただいて
申し訳ございません。」
「いやいや、夕方のニュースの
準備もあるやろうと
思いましたから、
無遠慮に押しかけてしまって
返って迷惑を
かけてしまいましたね。
話は前もって
弊社の社長から
聞いてもらっていると
思いますが、
こちらが京都の関係者の
代表として来られた
木舟さんです。
ちょっと話を
聞いてあげてくれますか?」
竜治は京都の地下水の危機が
『京都の内々の集り』
の中で問題視され、
それに対する対策の一つとして
(第二十四話~二十六話参照)
来年の参議院選に
『北陸新幹線延伸計画の
小浜~京都案』への反対をかかげ
古間真平の立候補を依頼する旨の
『京都の内々の集り』の要望を
切々と訴えた。
そして、アキやんこと
友田常務が補足として、
自然・地場産業・伝統文化の保護
と言う大義名分をかかげて
自主党に対抗し
刷新の会の
勢力拡大にもなる
と言うメリットを説明し、
古間真平氏にとっても
国政参加の
大きなチャンスである
と訴えた。
古間は最後まで
二人の話を聞き終えると、
お茶を一口飲んでから
少し間を置いて返事をした。
「私のような者に
このようなチャンスのお話を
持ってきていただいて
ありがとうございます。
とても魅力的で
やりがいのあるお話です。
ただ、この場ですぐに
お返事するのは
事が大きいので
私の立場では難しいです。
このお話を刷新の会の
幹部と相談の上
改めて後日お返事を
させてください。」
古間真平は丁寧にそう言うと
仕事に戻るからと退出した。
「アキやん、
どうだったんだろう?」
「たぶん、本人的には
興味を示したと思うよ。」
「それじゃあ何とかなるかな?」
「後は刷新の会と
テレビ局の上層部が
首を縦に
振るかどうかやね。」
「いい方に動いてくれると
いいんだけれどな。」
「マロ、僕が出来るのは
ここまでや、
後は京都のお歴々にも、
もう一押ししてもらうように
言うといた方が確実やぞ。」
「わかった必ず言うておく、
色々とありがとう!アキやん。」
「マロ、頑張れよ!」
アキやんはそう言うと、
胸元でグッド・ラックの
サインを作って
乗ってきた車で
自分の会社に戻って行った。
 
つづく

※【この話はフィクションです。
実際の企業や団体とは無関係です。】

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