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幸福が現実となるのは、それを誰かと分かち合った時だ。

 旅は嫌いではない。むしろ…、とくれば肯定の意味が続くことはお分かりだろう。
 言葉遊びはさておき、三寒四温の季節を過ぎれば、行楽シーズンを前に「旅に出たい」「遠出をしたい」という気分が頭をもたげている方も多いはず。外国人旅行者に触発され、すでに旅をしてきた、という方もいるのでは、と察する。

 風来坊を気取る身のくせに、このところ、旅や旅行には、とんとご無沙汰だ。そろそろ、ふら~っと、あてどなくどこかへ旅したい、とは思う。しかし、社会の一員というしがらみをかなぐり捨てて旅に出る、というのは、この年齢になると、身軽なつもりでも、なかなかムズかしいのが現実だ。

 そんな想いは、若かりし頃にバイクに乗って一人であちこち出かけていたこととも関係がありそうだ。

オンロードバイクだとこんな感じ。
九州旅行へ出かける前だろう

中型自動二輪免許を取って全国を走りめぐる

 20代後半のころ、先輩や友人の感化もあって、中型自動二輪免許を取得、すぐに友人の父が経営する店からバイクを購入。翌年から、バイクに寝袋とテントほか数泊分の着替えなどをくくりつけ、1週間の夏季休暇を使って、ひとり旅に出た。

 当時の自分にはすこぶる新鮮な旅だった。なにしろ北海道から鹿児島までのほぼ全国を、3年連続でバイクにまたがり走破したのだから。

 ひとり旅の何が面白いのか、なぜ興味があるのか、と問われて「そこに道があるから」などというキザな理由は虚栄心だわな。本当の理由は、その地方独特の山川草木を眺めていろいろ体験してみたい、という冒険精神の発露がある。

冒険精神の発露であり、好奇心を満足させる旅

 自分で言うのも何だが、旺盛な好奇心を満足させたいわけだ。もちろん、おいしい食べものや温泉を含む銭湯探索・探訪もある。加えてバイクの燃費チェックも、その後の走りに生かせるので意外と重要ではあった。

 こうした非日常を体験して、親族や先輩、友人らへ、ささやかな自慢を含みつつ、感動した場所や景色のようすなどを伝えて、やや身勝手な幸福感に浸る、という理由もある。
 ひとり旅という日常の向こうにある感動や興奮は、ハッピーなことの一つなのだ。

オフロードバイクでの旅行姿

 実は、ひとり旅そのものだけでなく、旅を描いた小説や映画、音楽、絵画など、カッコつけて言えば芸術作品も総じて好きである。

 正直なところ、たどった順番としては、小説や映画に影響されて旅が好きになった、ということになる。小説ならジャック・ケルアックの「路上」、映画なら「イージーライダー」をはじめとするロードムービー、絵画であれば東海道五十三次、という具合。

2007年のアメリカ映画「イントゥー・ザ・ワイルド」

 旅に限らず体験時の喜びが、誰かと分かち合った時に幸福として現実となる、というのは分からんでもない。
 取り上げておいて何だが、似た内容の「(結婚や夫婦、友人との)喜びは倍に、悲しみは半分に」という諺、格言は案外多く月並みな気がしないでもないが、あえて紹介した。

 真に迫る何かが名言にある気がするのは、マッカンドレスの生涯のメインイベントを描いた映画の影響が大きい。彼は、ひとりぼっちのままアラスカの地で餓死しているからだ。そこへ至る過程は2007年のアメリカ映画「イントゥー・ザ・ワイルド(Into The Wild=荒野へ)」に詳しい。

 彼を主人公にしたノンフィクション小説(ジョン・クラカワー著、邦訳あり)の映画化で、俳優でもあるショーン・ペンが監督した作品なので観た方もいるはずだ。

 音楽をパールジャムのエディ・ヴェダーが担当、躍動感を感じさせつつも、どこか物悲しい旋律に乗せた、少しかすれながらもよく響く歌声の詩が、旅する人物の感情の動き、風景映像にマッチしていたのを覚えている。

幸か不幸か、サバイバル精神は持ち合わせていない

 厭世的な気分になって、彼のようにぶらりとひとり旅に出たいと思うこともあった。ただ、大自然の中でサバイバル生活をしてまで旅を続けようという強靭な精神というか根性は、幸か不幸か持ち合わせていなかった。

 そのおかげで半身を流浪にさらし、風来坊を気取れる今の自分があるわけだし。いやぁ、旅っていいもんですね。

クリス・マッカンドレス
【1968~92】カリフォルニア州生まれ。大学卒業後、米国放浪の旅へ。アラスカ州で廃棄バスを拠点にサバイバル生活を送ったが、24歳で餓死。同バスは彼をまねたハイカーの目的地になり、数人の事故死者も出たことから撤去された。

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