青紫の花火、アガパンサスで真夏の庭に涼を呼ぼう
梅雨が明けて、いよいよ本格的な夏の到来ですね。春の花はひととおり終わり、真夏の花はまだ咲きそろわず、7月の庭はぽっかりと寂しくなる時期でもあります。猛烈な蒸し暑さで、庭に出る気力すら失せてしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな真夏の庭に、青紫色の花火のような花房を打ち上げて、涼しさを一気に運んできてくれる花があります。それがアガパンサスです。細い花びらが放射状に開き、まるで夜空に上がった大輪花火のようなユニークな姿は、遠くから見ても存在感抜群です。しかもこの植物、水やりも肥料も控えめでよく、病害虫にも困らないという、じつに気の利いた宿根草なのです。今回は、真夏の庭を涼しく彩ってくれるアガパンサスの魅力と、長く楽しむための管理のコツをご紹介しましょう。
アガパンサスとはどんな植物か
アガパンサスは南アフリカのケープ地方が原産の宿根草です。以前はユリ科に分類されていましたが、現在はヒガンバナ科アガパンサス属という独立した仲間に整理されています。ちなみにアガパンサスという名前は、ギリシャ語の「アガペー(愛)」と「アンサス(花)」を組み合わせたもので、「愛の花」という意味なのだそうです。この由来を知ってから花を眺めると、なんだか少し親しみが増すのではないでしょうか。
草丈は品種によってずいぶんと幅があります。30cmほどのミニタイプから、花茎が1.5mを超える大型タイプまであり、庭の広さや使いたい場所によって選び分けることができます。花色は青紫を中心に、真っ白の白花種、濃紺に近い深い青、内側と外側で色の異なる複色、近年は淡いピンクがかった品種も少しずつ増えてきました。
葉のタイプで見ると、冬にも葉が残る常緑タイプと、冬に葉が枯れる落葉タイプの2系統があります。落葉タイプのほうが耐寒性が高いので、寒冷地では落葉タイプを選ぶと安心でしょう。関東平野部くらいの気候なら、常緑タイプでも問題なく越冬してくれます。
おすすめ品種の紹介
はじめてアガパンサスを育てる方に、私がおすすめしている品種を3つご紹介します。
「ピーターパン」は草丈40cm前後の矮性タイプです。花付きが良く、7号くらいの鉢でも豪華に咲いてくれるので、狭いベランダガーデンでも真夏に涼しげな一角を作ることができます。二番花も上がりやすい、鉢植え派には特に向く品種です。
「アフリカンブルー」は草丈1mほどの中〜大型タイプで、庭のシンボルにしたいときにぴったりです。花色は深い青紫で、遠くから見ても存在感があります。花期も比較的長く、6月下旬から8月上旬まで庭を彩ってくれます。
「クイーンマム」は花房が20cmを超える豪華な品種です。花茎が1.5mまで伸びて、大株になると花火大会のショーのような迫力があります。庭のフォーカルポイントを作りたい方に向くでしょう。
これら以外にも、白花種の「アルバ」やダブル咲きの「フラワーオブラブ」など個性的な品種がありますので、慣れてきたらぜひコレクションしてみてください。
植え付けと基本の育て方
植え付けの適期は3月から4月、または9月から10月です。もっとも、開花株を園芸店で購入した場合は、7月に手にしたものでも植え付けることができます。その際は根鉢を絶対に崩さず、ひとまわり大きな鉢に静かに移してあげてください。
用土は、市販の草花用培養土に軽石を1割から2割ほど混ぜて、水はけを良くしたものが向きます。庭植えの場合は、植え穴を深さ30cm、径30cmほどで掘り、掘り上げた土に堆肥をひとつかみ混ぜ込みましょう。アガパンサスは根がゴボウのように太く長く伸びる植物なので、地下に配管やブロックといった埋没物のない場所を選ぶことが大切です。
日当たりは、一日3時間以上の直射日光があれば十分に育ちます。西日が強く当たる場所でも問題なく元気に咲いてくれますが、真夏の反射熱がきついコンクリートの南面際は、鉢が煮えてしまうことがあるので避けたほうがいいでしょう。
日常管理のコツ
アガパンサスは、南アフリカの乾燥地帯出身とあって、非常に乾燥に強い植物です。地植えなら真夏でも自然の雨だけでほとんど足ります。鉢植えの場合は、鉢の表面が乾いたら朝のうちにたっぷりと水を与えてください。日中の暑い時間に水をやると、葉温が高く上がっている状態で根が急に冷やされて、かえって株が傷むことがあるので避けたほうがいいでしょう。
肥料は3月と9月に緩効性化成肥料を株元にひとつかみ与えるだけで十分です。開花期に追肥をしすぎると、花色がかえって薄くなったり、葉ばかりが茂って花付きが悪くなったりすることがあります。ちなみに、アガパンサスは「多少ほったらかしのほうが、よく花を咲かせる」ともよく言われる植物です。かまいすぎないほうが、かえって上機嫌でいてくれるタイプなのですね。
花後の管理と二番花のねらい方
花が終わったら、花茎を株元からきっぱりと切り落としてください。花房をそのままにしておくと種子ができはじめ、株が疲れてしまいます。運が良ければ、切り戻しから2週間から3週間で新しい花芽が上がってきて、8月下旬から9月上旬に二番花を楽しめる株もあります。とくに「ピーターパン」など矮性タイプは二番花の確率が比較的高いようです。二番花を狙うなら、花後すぐの切り戻しを忘れずに、そして液体肥料を1回だけ薄めに追肥してあげるといいでしょう。
株分けで殖やす「線香花火分け」
アガパンサスは、植えっぱなしにしておくと3年から4年で株が込み合い、花付きがだんだん落ちてきます。そのタイミングでぜひ株分けをしてください。花付きが回復するだけでなく、株を殖やして庭中を青紫で埋めることができます。
株分けの適期は、暑さが落ち着いた3月または10月です。掘り上げた株は、まず水で洗って根の間の土を落とし、鋭利な園芸ナイフで芽を3個から5個ずつのかたまりに切り分けます。ちなみに私は、この株分け作業を勝手に「線香花火分け」と呼んでいます。切り分けた芽の一つひとつが、翌年また花火のような花房を上げてくれる姿を想像すると、まさに線香花火を庭のあちこちに配って回っているような気分になるからです。
分けたばかりの株は、根を3分の1ほど短く整えてから植え直します。植え直したあとの2週間ほどは半日陰で管理し、根が動き出してきたら通常の場所へ移してあげてください。株分け直後の株はまだ花付きに時間がかかりますが、翌年から翌々年にかけて、しっかり花房を上げてくれるようになります。
病害虫と扱う際の注意点
アガパンサスは病害虫がほとんどつかない、じつに手のかからない宿根草です。強いてあげれば、風通しの悪い場所では梅雨の時期にナメクジが葉を食害することがあります。株元にコーヒーの搾りかすを乾かして撒いておくと、ナメクジ除けとしてなかなか効果があるので試してみてください。
なお、アガパンサスの葉や根には毒性成分(サポニン類)がわずかに含まれています。ペットや小さなお子さんが誤って口に入れないよう、庭のレイアウトで少し気をつけてあげてください。株分けの作業時は、素手だと皮膚が荒れることがあるので、園芸用の手袋を必ず着用しましょう。
応用アドバイス 他の植物と組み合わせて涼しく見せる
アガパンサスの株元は、開花期になると花茎が高く上がるぶん、足元の葉ばかりが目立って少し寂しく見えることがあります。この寂しさをカバーする組み合わせとして、株の手前に低めのグラウンドカバーを植えるのがおすすめです。同じく南アフリカ原産のヒメイワダレソウや、ライムグリーンの葉が涼しげなヒューケラなどを合わせると、株元まで完成度の高い一角になります。
また、アガパンサスと同じ7月に咲く宿根草として、モナルダやフロックス、キキョウなどと寄せて植えると、真夏の庭がまさに花火大会のように華やぎます。色の対比を楽しむなら、アガパンサスの青紫に、黄色いルドベキアや白いカラミンサ、オレンジのヘメロカリスなどを合わせると、目にも鮮やかな夏の風景ができあがるでしょう。
まとめ
アガパンサスは、水やりも肥料もほどほどでよく、真夏の暑さに強く、病害虫にも困らず、株分けで手軽に殖やせるという、忙しいガーデナーにはうれしいことづくめの宿根草です。青紫の花火のような花房が真夏の庭に涼しさを運んでくれるので、猛暑で庭に出るのがおっくうになる季節こそ、その存在感が際立ちます。
今年の夏はまず一株、庭のワンポイントに迎えてみてはいかがでしょうか。うまく育てば来年には二株、再来年には五株にと殖えて、線香花火のような光景があちこちで楽しめるようになります。真夏の庭をぐんと格上げしてくれる、頼もしい相棒になってくれるはずですよ。
猛暑を涼しく乗り切る園芸のコツをもっと知りたい方には、私のKindle本『園芸植物と共に夏を生きる ― ガーデナーのための夏越しテクニック』もぜひ読んでみてください。真夏を植物と一緒に元気に乗り切るための実践テクニックを、一冊にまとめています。
