【新連載】概観 日本音楽史 ◆まえがき
当noteでは2021年の開設当初から、「各ジャンルそれぞれの音楽史を接続する」という試みを記述してきました。音楽ジャンルの分断や価値観のすれ違いに対する疑問を出発点とし、クラシック音楽史と各ポピュラー音楽史を並列で触れていくことを大きな指針として記事を投稿してきました。
メタ音楽史のシリーズや、分野別音楽史のシリーズで、従来バラバラに存在していた各音楽史の系譜を同じ土俵に乗せる、という目標はひとまず達成でき、その系譜を詰め込んだ音楽史図表も多くの方に見ていただけました。
しかし、これだけではまだゴールではありません。上記の系譜はすべて「西洋音楽史」であり、日本人として重要な「日本音楽史」が入っていないからです。そのため、西洋史編の完成後も引き続き勉強を進めてきました。そして、時間がかかりましたがようやくnote記事としてここからじっくりとまとめなおして発信していこうと思います。
「日本音楽史」と一言で言っても、西洋音楽史のときと同じようにジャンルや立場によって本当に視点が分かれてしまっており、それを同じ土壌に乗せて1つのシリーズとして記述していくためには、単に受験勉強のように正解が定まった知識を学んでいくのではなく、立場毎に視点の異なる膨大な書籍を比較しながら頭に入れていかなければならず、本当に苦労しました。
まだ完全に咀嚼しきれていない部分もありますが、記事にしていく過程で改めて情報整理しながら皆様と一緒に学んでいけたら良いかな、と思っています。
こうした取り組みを発信するにあたっての問題意識は、まさに上記のような状況に対してです。
西洋音楽史についての問題意識も振り返ってみると、「クラシック音楽史」「ジャズ史」「ロック史」「ヒップホップ史」・・・それぞれの界隈にそれぞれの史観が存在しているけれど、それらはバラバラに存在していて、単に「音楽史全般をざっくりと知りたい」と思っても各ジャンル史を個別に深く勉強していく必要があり、概観するには非常に難しい状況でした。
日本音楽史も同じです。伝統邦楽史、クラシック芸術受容の視点、流行歌~レコード歌謡、ロック、平成JPOP・・・通史としてだけでもこれだけの立場が分裂して存在している上に、さらにフェスの歴史、アイドル史、ヴィジュアル系、ボカロ史、ゲーム音楽史、同人音楽史、K-pop史、日本語ラップ・・・などなど、個別に調べていかねばならない分野が山のようにあり、令和現在に辿り着くまでの全体像を把握することは非常に困難な状況なのが現状であり、それは極めて問題だと思っています。
僕は別に「考古学的に新事実を発掘・検証したり、統計調査をして独自に何かを論証したい」などとは考えていませんし、「マニアックな世界へと誘いたい、深い知識を伝えたい」みたいな動機でも決してありません。マニア的な愛を持った深い動機を持って発信されている方は非常に多い気がしますが、そこを混同されてしまうと僕の問題意識やスタンスとズレてしまうので、ご理解いただきたいです。
そしてそれが、アカデミアの分野でこうした取り組みができない原因でもあります。学術の作法としては、何かテーマを絞って疑問と仮説を設定し、それを注意深く論証していく、という「狭く深く」の「過程」が重要視されます。そのため「広く触れるだけ」という一般人のレポートは非難の対象となり、馬鹿にされてしまうのです。
僕が西洋史編を終わらせて日本史編の勉強を取り組んでいる最中、僕に先駆けて同じような取り組みをなされた方が居ました。音楽評論家・YouTuberのみの氏です。2024年3月に発売された邦楽通史の書籍は、問題意識や記述範囲がまさに共通しており、「先にやられてしまったぁ」と思いましたが、この書籍の発売情報がアナウンスされた2023年12月の地点で、専門家や音楽愛好家のような層から大バッシングを受けてしまいました。
「“YouTuber” が “通史”を “単著”で記述するなんて危険だ」
「お金儲けだ」
「先人の研究に対して烏滸がましい」
「学術の作法を弁えていない」
「浅いもの」に対して「深い」側が徹底的に叩くというこうした空気は、音楽文化全体への間口を狭めるとても悲しい風潮であり、憤りを感じます。学者風情は誤った主観的なものが広まるのを危惧して声高に「危険」などと言う割には、きちんと資料に基いたことを紹介すればそれはそれで「孫引きでしかない」「新奇性が無い」「情報が足りない」「先人への敬意がない冒涜」だの。もっともらしい批判に見せかけて、マウントを取りたいだけとしか思えません。
とはいえ、みの氏の当該書籍が完璧な出来だとは全く思いませんし、それはみの氏本人も認めています。異論を全く認めないということではなく、ネガティブな否定ではない「前向きで建設的な議論」を進め、音楽を嗜むわれわれ日本人の音楽史認識をブラッシュアップしていくことが期待されます。
僕の取り組みは、みの氏のプロジェクトよりも前から構想していたことではありますが、せっかくみの氏からも問題提起が蒔かれたのですから、それにも乗っかって苗木を育てる意識も持ちながら、独自の視点も織り込んで、自分なりのバランス感覚でまとめていけたら良いな、と思っております。
「点としては既に詳述されて分離している、そのそれぞれの史観を一気に並べることで、全体像を把握できるものが欲しい。」
この一心で、僕はこれまでの音楽史記事もまとめてきましたし、今回からの日本音楽史もまとめていきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
この記事シリーズは以下のマガジンにまとめていこうと思いますので、フォローも是非よろしくお願いします。
※ [追記] 本シリーズの執筆方法について:当noteでは、常に複数の書籍や各種資料を参照・比較しそれぞれの記述内容を相互に照合しております。記事執筆過程におきまして異なる資料間で重複して記されている情報やあるいは各文献に特有の独自情報などを突き合わせて解釈し、それらを統合的に編集して原稿を構成しており、個々の文章は基本的に特定の一書からの逐語引用ではなく複数の情報源に基づく総合的な再構成の結果として提示しているものであるため、文章単位での直接的な出典明示が困難であり、個別の引用註記は省略しておりますが、情報源は上記の参考文献一覧記事リンクからご確認いただけます。厳密な学術論文の引用形式には則しておりませんが、本シリーズはあくまで正式な論文ではなく個人記述によるnoteであるということあしからずご承知おきいただければ幸いです。
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