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「Cello Bass」― バイオリンベースとチェロを合体させて弓弾きできる“エレキコントラバス”を作った

はじめに

エレキベースであるバイオリンベースにチェロのパーツを組み合わせ、弓弾きもできる“エレキコントラバス”を制作しました。
エレキベースのように指弾きもできて、チェロやコントラバスのように弓弾きもできる、かなり独特な楽器になっています。

これが完成品(現在の姿)です。


きっかけはジミー・ペイジだった

きっかけは『Guitar magazine Archives Vol.5 ジミー・ペイジ』を読んだことでした。そこで、Jimmy Page がエレキギターを弓で演奏していることを知り、「そんなことできるのか」と興味を持ちました。

まずストラトキャスターで試す

さっそく自分でもストラトキャスターにバイオリン弓を当てて試してみたのですが、これが全然うまくいきません。

バイオリンやチェロと違い、通常のギターやベースはブリッジにアーチがありません。つまり弦高がほぼフラットなので、弓を当てると複数弦に同時に触れてしまうのです。

単一弦をまともに弾くことすら難しい。

YouTubeで見るジミー・ペイジの演奏は確かにかっこいいのですが、実際にやってみると、バイオリン属のように自由に演奏するのはかなり無理があると感じました。

そこでまず、ストラトキャスターのブリッジサドルを限界まで上げ、弦全体が山なりになるよう調整してみました。すると多少は単一弦を狙いやすくなりました。

しかし次の問題が発生します。

ボディが大きすぎるのです。特に1弦と6弦は、弓を深く入れようとするとボディに弓が当たり、まともに演奏できませんでした。

つまり、

  • もっと弦高が必要

  • もっと小さいボディが必要

ということがわかってきました。

当時は小型ボディということで Steinberger なども候補に考えていました。

そんな中、偶然目に留まったのが、Paul McCartney の使用でも有名な“バイオリンベース”でした。

見た瞬間、「これだ」と思いました。

もともとバイオリンをエレキベース化したような楽器なのに、それをさらに弓弾き方向へ戻していくのが逆転の発想みたいで面白いと思いました。しかもボディサイズや形状が、今回やろうとしていることに完璧にマッチしていると思えたからです。

こうして、“弓弾きできるバイオリンベース”の制作が始まりました。


指板問題 ― 普通のベースでは弾けない

次に問題になったのは指板です。

普通のベース指板では、弓弾き時に単一弦をきれいに弾くことができません。

そこでコントラバスやチェロの指板形状を調べ、バイオリンベースのネックサイズと比較していきました。

その結果、チェロ指板がかなり近いことがわかりました。

そこで、

「バイオリンベースの指板をはがしてチェロ指板を貼ろう」

という方向に決定。

そんなタイミングで、ちょうどヤフオクに「指板が剥がれたジャンクの Greco バイオリンベース」が出品されているのを発見しました。

運命すら感じ、その個体を母体にすることにしました。

チェロ指板もネックもなじむように削ってタイトボンドで合体させました。

ネック裏の塗装がはがれている個所はチェロ指板に合わせてかんなで削った個所です。


駒問題 ― 高すぎてもダメだった

指板をチェロ化したので、当然ブリッジも通常のベース用では対応できません。そこでチェロ用の駒を調べ始めました。

ただ、実際に試してみると問題がありました。チェロのボディ前提で作られているため、そのままだと高さがありすぎるのです。各弦ごとの間隔は理想的でしたが、演奏性が極端に悪くなってしまいました。

結局、チェロ駒を削り、今回のボディに合う高さへ加工することで落ち着きました。

駒部分。元のサイズより半分くらいの高さになっていると思います。
また滑り止めとして下に防振シートをかませています。


エンドピン問題 ― そして座奏へ

最初は普通のエレキベースのように立って弓弾きを試しました。

しかし、これがかなり弾きづらい。

さらに問題だったのが、1弦側を擦ると弓がズボンの股部分も擦ってしまい弾き終わったら股部分が松脂で白っぽくなる事態に(笑)

「これはさすがにどうにかしないと」と思いました。

そんな中、チェロ奏者の演奏動画を見ていて、チェロには伸縮させられる(または着脱式?)エンドピンがあることに気づきました。

「これ、そのまま使えるのでは?」

と思い、チェロ用エンドピンを導入。

結果、これがうまくいきました。

しかも偶然、収納時にはエンドピンがホロウボディ内部に綺麗に収まったのです。

こうして座奏スタイルが完成しました。

エンドピンを伸ばしたところ
エンドピンを収納したところ


PU問題 ― “擦弦楽器の音”を拾えない

完成後に弾いてみて、さらに問題が見つかりました。

もともとの Greco バイオリンベース用マグネティックPUだと、弓弾き時の音量がかなり弱かったのです。

おそらくマグネティックPUは、撥弦楽器的なアタック成分には強いものの、擦弦楽器的なニュアンスは苦手なのだと思います。

そこでピエゾPUを追加。

すると弓弾きの音がしっかり拾えるようになりました。

ただ、ピエゾとマグネティックPUでアウトプットジャックが2つになってしまったので

「アウトプットジャックを一つにし、PUはブレンド率をコントロールできるようにしたい」

と思うようになります。

そこで、いつもお世話になっている楽器店のリペアマンさんにお願いし、マグネティックPUとピエゾPUのブレンド比率を調整できる回路を組み込んでもらいました。

結果的にかなり自由度の高い音作りができるようになりました。

左から、マスターボリューム、フロントPU、TONE、リアPU(不使用)、ピエゾとマグネティックPUのMIXノブ。ノブはRolandのシンセサイザー用ノブだと思いますが似合ってると思ったのでこれにしました。


サウンドホール問題

最初はリアPUも使っていました。

しかし弓弾き時にどうしても“苦しそうな音”が強く出る。

試しにリアPUを外してみると、音が少し自然になりました。

そこで、リアPU跡はそのまま即席サウンドホールとして使うことにしました。

ただ、見た目は正直ちょっと“口が開いてる”感じでもあります。

やはり理想はfホールです。

サウンドホール(リアPU跡)


蓄光サイドポジションマーク

組み上がったあと、実際に弓弾きをしてみて気づいたことがあります。

「指位置をかなりシビアに確認できないと音痴になる」

ということです。

そこでサイドポジションマークを追加することにしました。

これは、いつもお世話になっているリペアマンさんに施工していただきました。

しかもなぜか、

「ちょうど蓄光素材あるよ」

という話になり、最終的に蓄光サイドポジションになりました。

かなり気に入っています。

蓄光サイドポジションマーク


初めてまともに弓弾きできた瞬間

初めて弓弾きしたときはドキドキしました。
ネックは細いし、ボディには(ジャンクだったこともあり)小さな亀裂も入っていて強度とか大丈夫なのかな?とだいぶ不安だったのですが実際に完成し、初めてまとも(?)に弓弾きできた瞬間は本当に感動しました。

ちなみに弦はコントラバス弦を張っています。コントラバスとはスケールがだいぶ違い弦が余るのですがリボン部分以外は切ってしまうと弦がほどけてしまうのでヘッド部分でまとめています。

ヘッドの様子。もう少しきれいにまとめたい

しかも想像以上にボディやネックが振動する。

最初は壊れそうで怖かったのですが、慣れてくるとその振動がむしろ心地よくなってきます。

最初の感想は、

「やばい、すごい楽しい」

でした。

弓弾きフォームについては前例がないため、かなり試行錯誤しています。
今もまだ研究中です。

また、音についてはボディが小さいため、弓弾き時には低域が全然ふくよかじゃない少し“苦しそうな鳴り方”をします。

でも、その不完全さも含めて面白いと思っています。

一方で、指弾きは意外なほど普通のエレキベース感覚で演奏できました。

チェロ指板なのに、立奏スタイルで違和感なく弾ける。

これは自分でも驚きでした。

撥弦楽器と擦弦楽器の間を行き来しているような感覚があり、それがこの楽器最大の魅力だと思っています。

エンドピンも出すとすごく細長いイメージです
弓はコントラバス1/4サイズ弓(上)、チェロ弓(下)を気分で使い分けている状態です


この楽器を通して変わった考え方

私はここ数年、ギターやベースの制作・改造にかなりハマっています。

そして、いつもお世話になっている楽器店のリペアマンさんにもいろいろ教えていただき多分に影響を受けました。

以前は、

「ギターはギター、ベースはベース」

という考えが強かったのですが、最近は少し感覚が変わってきました。

今は、

「ギターやベースは、かっこいい木の棒」

くらいの感覚で見ています。

もちろん歴史や様式は大切です。
でも、それに縛られすぎず自由に考えてみると、いろいろな再発見がありそうだと思いました。

この楽器は、そういう発想から生まれたものなんじゃないかと思っています。


まとめ

サイレントアップライトベースのように、「コントラバスをエレキ化する」方向の楽器はすでに存在しています。

しかし逆に、

「エレキベースをアップライト化し、弓弾きできるようにする」

という発想は、自分が調べた限りではほとんど例がありませんでした。

かなり変わった改造ではありますが、実際に作ってみると、撥弦楽器と擦弦楽器の間にはまだまだ面白い可能性があると感じています。

免責事項
・本記事執筆者は電子工作・回路設計の専門家ではなく、試行錯誤しながら製作した内容を紹介しています。
・内容には誤りが含まれている可能性があります。
・本記事を参考に製作・使用された際の、機材故障・怪我・その他トラブルについては責任を負いかねます。
・製作・使用は自己責任にてお願いいたします。

参考音源

このベースを使用して録音した音源もあります。
全編で指弾きをしており、後半には弓弾きによるソロも少し入っています。


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