「夢」が意思決定フレームになるとき——Kenzo Estate の30年が農業経営に教える3つの構造
「ビジネスを続けられる理由は?」という問い
農業を長く続けている人に、「なぜ続けられるのか」と聞いたとき、返ってくる答えは大抵、「好きだから」でも「儲かるから」でもない。
「これをやらないといけないという感覚がある」
「作りたいものがある」
「ここにしか作れないものがある」
それは夢と呼べるほど壮大ではないかもしれないが、明確な「目指す先」があるという点では同じだ。
カプコンの創業者・辻本憲三氏が米国ナパ・ヴァレーに設立したKenzo Estateの30年の歩みを、私は「農業経営のビジョン設計論」として読み解いている。
土地取得から初収穫まで15年。その間に何があったか

1990年、辻本氏はナパ・ヴァレーに約470エーカーの土地を購入する。
目的は「世界最高のワインを作ること」。
ところが、1998〜99年。著名な栽培家デイビッド・アブリュー氏の精査を受け、すでに植えていた14万本の葡萄樹をすべて引き抜き、土壌を一から作り直すという決断を下す。
普通、考えられない。時間もコストも、すでに積み上げた努力も——すべて「やり直し」だ。
しかし辻本氏のチームはそれを選んだ。なぜか。
「世界最高のワインを作る」というビジョンが、その判断の「基準」として機能していたからだ。
ビジョンとは、「目指す場所」であると同時に、「何を受け入れ、何を捨てるか」を決めるフィルターでもある。
3つの逆境が生んだ「意図せざる価値」
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