「最初の1ヶ月は、上手くなることを期待しないでください」——新年度にバドミントンを始める子どもを持つ親へ
4月になりました。
毎年この時期、「バドミントンを始めたい」というお問い合わせが増えます。
新しい学年、新しい環境、新しいスタート。子どもたちの「やってみたい」という気持ちが一番高まる季節です。
体験レッスンにいらした保護者の方に、私が必ずお伝えすることがあります。
「最初の1ヶ月は、上手くなることを期待しないでください」
この言葉に、少し驚く方もいます。コーチが「上手くなることを期待しないで」と言うのは、確かに不思議に聞こえます。
でもこれには、深い理由があります。
最初の1ヶ月に子どもの中で起きていること
バドミントンを始めたばかりの子どもを観察すると、こんな状態が見えます。
シャトルに当たらない。ラケットの振り方が分からない。どこに動けばいいか分からない。周りの先輩たちの動きを目で追うだけで精一杯——。
この状態を見た保護者の方が「うちの子、大丈夫でしょうか」と心配そうに言います。
でも、これは全く正常な状態です。
脳科学の観点から言えば、新しい環境に入った時、人間の脳は「安全確認モード」に入ります。新しい場所・新しい人たち・新しい動き——これらの情報処理だけで、脳のリソースの多くが使われます。
この状態では、技術の習得は起きません。脳が「安全確認」に集中しているからです。
技術の習得が始まるのは、脳が「ここは安全な場所だ」と認識してからです。その安心感が育つまでに、おおよそ1ヶ月かかります。
だから「最初の1ヶ月は上手くなることを期待しないでください」とお伝えするのです。最初の1ヶ月は、技術が育つ前の「土台づくりの時間」です。
「下手でいい」が最速の上達ルート
15年間の指導経験の中で、確信していることがあります。
最初に「下手でもいい」と思えた子どもほど、後から大きく伸びる。
これは逆説的に聞こえますが、理由は明確です。
「下手でもいい」と思えた子どもは、思い切りシャトルを打ちます。失敗を恐れずに体を動かします。その「思い切り」の中で、体が動きのパターンを学習していきます。
スポーツ科学では「変動練習」の効果が示されています。完璧なフォームを繰り返すより、多少ぎこちなくても様々な動きを経験する方が、長期的な技術習得に優れているというものです。
「下手でいい」と思って思い切り打った100球は「上手くやらなければ」と縮こまって打った100球より、はるかに多くの学習を体にもたらします。
逆に「上手くしなければ」と思っている子どもは体が縮こまります。縮こまった体では感覚が育ちません。感覚が育たなければ技術も育ちません。
最初に「下手でいい」という環境を作ることが、最速の上達ルートです。
最初の1ヶ月に保護者がやること
では保護者の方は、最初の1ヶ月に何をすればいいのか。
元小学校教師として、そしてバドミントンコーチとして確信している3つをお伝えします。
① 「楽しかった?」だけを聞く
練習後に「上手くできた?」「先生に何か言われた?」ではなく「楽しかった?」とだけ聞いてください。
この質問が、子どもの脳に「バドミントンは楽しいもの」という記憶を積み重ねます。この記憶が「また来たい」という気持ちを育てます。
「また来たい」という気持ちさえあれば、技術は必ず後からついてきます。
② ミスを笑顔で受け取る
「なんで当たらないの」ではなく「惜しかったね!」と言ってください。
ミスを笑顔で受け取ってもらえる経験が積み重なると、子どもは「失敗しても大丈夫」という安心感を持てるようになります。
この安心感が、思い切ってシャトルを打てる土台になります。
③ 「続けること」だけを目標にする
最初の1ヶ月の唯一の目標は「また来たいと思えること」です。技術の向上は、その後に自然とついてきます。
「今日は先週より上手くなったかな」ではなく「今日も来られた」という事実だけを認めてあげてください。
コーチとして、春が一番好きな理由
正直に言います。
私がコーチとして一番好きな季節は、春です。
新しく入会してきた子どもたちの「初めてラケットを持つ瞬間」を見ることが、何より好きです。
ぎこちなくてもいい。当たらなくてもいい。どこに動けばいいか分からなくてもいい。
その「何も知らない状態」から始まる子どもが、1年後にどんな選手になっているか。そのプロセスを見届けることが、15年間コーチを続けてきた一番の理由です。
この春、また新しい子どもたちに出会えることが楽しみでなりません。
春から始めようとしているあなたへ
バドミントンを始めようと思っているお子さんへ。
最初はシャトルに当たらなくていい。うまく動けなくていい。周りの先輩より下手でいい。
ただ、コートに来てください。
来るたびに、少しずつ何かが変わります。最初はその変化が小さすぎて見えません。でも3ヶ月後、6ヶ月後に振り返った時、必ず「あの時とは全然違う」と感じる瞬間が来ます。
その瞬間が、バドミントンを好きになる瞬間です。
ミンピーベーサーでは無料体験レッスンを随時受け付けています。長野県の塩尻・松本・千曲・上田・茅野エリアで展開しています。
この春、一緒にコートに立ちましょう。
