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リンダ・ロンシュタット Linda Ronstadt (1)

リンダ・ロンシュタット Linda Ronstadt
1946/07/15- アメリカ・アリゾナ州生まれ

▶はじめに 〜 懐かしいあの日々に帰りたい

現在の私は主にクラシック音楽を聴いていますが、クラシック以外の音楽を聴かないわけではありません。そもそも中学・高校時代の私はクラシック音楽に興味はなく、主に西洋のポップス、特にロックやソウル・ミュージックを好んで聴いていました。高校三年間の途中からジャズにも興味を持って、ロックやソウル・ミュージックからジャズまで、西洋の大衆音楽を幅広く聴き始めました。大学生の頃は熱心にジャズを聴いていましたし、社会人になってクラシック音楽を聴くようになっても、ジャズとクラシック音楽を半々で聴いていました。今でも私は昔の西洋のポップス、ロックやソウル・ミュージックが懐かしくなり、時々無性に聴きたくなります。懐かしいあの日々に帰りたい、というノスタルジーです。過ぎ去った時間は戻らないので、ルサンチマンとも言いますね。

▶リンダ・ロンシュタット 〜 ジュークボックスの歌

リンダ・ロンシュタットの歌を初めて聴いたのは高校生だった頃で、くっきりしたアルトの歌声や、澄みわたるようなファルセット、聴き手の感情を揺さぶる歌唱に心惹かれました。といっても、当時はFMラジオのポップスの番組で聴くくらいで、レコード盤 (シングルのEPやアルバムのLP) を買うことはありませんでした。その後、50代になってから彼女の歌を思い出して、1970年代のアルバムのCDを何枚か買いました。最初に聴いたのはどの曲だったか覚えていませんが、彼女の1975年のアルバム Prisoner in Disguise (哀しみのプリズナー) の収録曲ではなかったかと思います。スチールギターやバンジョーの響きが美しい曲からは、彼女の歌のルーツが、アメリカのカントリー・ミュージックにあるということがわかりました。ロックやソウル・ミュージック、ジャズを聴いていた私には、彼女の歌は新鮮に聴こえました。

最近、リンダ・ロンシュタットの歌に偶然出会ったのは、映画『ミニオンズ・フィーバー』の中で、彼女の1974年のヒット曲 You're No Good (悪いあなた) が、グルーとミニオンたちの冒険のキーワードとして使われていて、映画中とエンドロールで流れた時です。ご存じのように、グルーは世界一の悪党になることを夢見る少年です。映画の作者たちがこの歌を選ぶセンスに脱帽しますし、この映画が描く世界はディスコが流行った1970年代中盤で、まさにこの歌がヒットした時代だったのも見事でした。映画『ミニオンズ』シリーズは子供向けのアニメ映画ですが、大人も楽しめる内容です。特に西洋のポップスに馴染んだ方なら、楽しめること間違いなしです。話がそれましたが、この映画でロンシュタットの歌を改めて聴いて、いい歌だなぁ、いい声だなぁと思いました。

リンダ・ロンシュタットは2011年に歌手生活から引退することを発表し、2013年に発表した自伝『シンプル・ドリームス: 音楽回想録』の宣伝の中で、パーキンソン病に罹患していることを明かし、それが引退の一因だと述べました。しかし後にこの診断は誤りであることが判明し、パーキンソン病と似た進行性核上性麻痺 (PSP) と呼ばれる難病だということが明らかにされました。彼女は2022年には「もう歌えなくなった」と告白し、2024年には新型コロナウイルス感染症との闘病もあり、話すことも、聞くことも、歩くこともできなくなったといいます。しかし彼女はその後回復し、新たな回顧録を執筆しているということです。ロンシュタットは今年80歳になるので、仮に病気でなくても歌うのは難しいでしょう。あの美しい歌声をもう聴けないと思うと、とても残念です。

Heart Like a Wheel (悪いあなた 1974)

Prisoner in Disguise (哀しみのプリズナー 1975)

このアルバムの収録曲の中では ジュークボックスの歌 (Hey Mister, That's Me up on the Jukebox) という曲が私は特に好きです。原曲はシンガー・ソングライターの ジェームス・テイラー (James Taylor) が 作詞・作曲した曲 (1971年) です。リンダ・ロンシュタット・ヴァージョンは、抑制の効いたバンドアレンジも、哀愁をおびたロンシュタットのアルトの歌声も素晴らしいのひと言。歌詞はタイトルと同じく「ねぇミスター、ジュークボックスの上に飾られているの (シングル盤のカバー写真) は私よ」と歌いだします。まさにアメリカを代表するポップシンガーである、リンダ・ロンシュタットのためにあるような美しい曲です。私が中学・高校生だった頃は街のスナック、ピンボールやビリヤードなどの遊戯場にまだ ジュークボックス がありました。今ならスナックにあるのはカラオケ、遊戯場はゲームセンターですね。ジュークボックスなどありません。月日は過ぎ去ってしまったし、私も年齢を重ねてしまいました

Hasten Down the Wind (風にさらわれた恋 1976)

Simple Dreams (夢はひとつだけ 1977)

▶リンダ・ロンシュタット | 1970年代ヒット曲集
Linda Ronstadt | 70s Hits That Defined an Era
ある意味で
1970年代のアメリカそのもの、とも言えるリンダ・ロンシュタットのヒット全17曲。

私はこの17曲の中では 誰か私のそばに (Someone to Lay Down Beside Me) という曲が特に好きです。アルバム 風にさらわれた恋 (Hasten Down the Wind) に収録されているこの曲は、シンガー・ソングライターの カーラ・ボノフ (Karla Bonoff) がリンダ・ロンシュタットのために作詞・作曲した、もの哀しく美しいメロディーの曲。カーラ・ボノフもこの曲をとても気に入り、セルフカバーして自分のアルバムに収録 しています。

▶ケネディセンター名誉賞を受賞
Linda Ronstadt | Kennedy Center Honors
2019年 第42回 ケネディセンター名誉賞 | ケネディセンター・オペラハウス | ワシントンD.C. 2019/12/8

リンダ・ロンシュタットはアメリカ文化への長年の貢献を称えられ、ケネディセンター名誉賞を贈られました。贈呈式で、ロンシュタットはステージではなくバルコニー席にいます。贈呈式は、元イーグルスのドン・ヘンリー (Don Henley) がプレゼンターを務めて始まり、ロンシュタットのこれまでの人生を紹介します。イーグルスは一時期ロンシュタットのバックバンドを務めたので、ドン・ヘンリーは最初のプレゼンターに最適でしょう。そしてプレゼンターが次々に交代して、さまざまなシンガーをステージに招き、シンガーがロンシュタットの歌を歌います。座席のロンシュタットが、一瞬驚いた表情を見せて、自由に動かない両手を天井に向けて突き上げ (ガッツポーズをして)、涙を拭ったのは エミルー・ハリス (Emmylou Harris) がプレゼンターとして登場し、ロンシュタットへの親愛と称賛を語った時です。これは胸に迫るシーンでした。エミルー・ハリスは、1970年代からロンシュタットのコンサートやレコーディングにコーラスとして参加し、またロンシュタットとデュエットで歌ってきました。さらに、1980年代後半から1990年代末までは、同世代のドリー・パートン (Dolly Parton) を加えた三人で、コンサートやレコーディングで共演してきました。リンダとエミルーは、つねに大切な仕事仲間であり、プライベートでも親しい友人でした。いつの世にも歌は時代を映す鏡ですが、何よりもシンガーの存在そのものであり、シンガーが生きてきた人生 (過ぎ去った時間) にほかなりません。

リンダ・ロンシュタットは1990年に娘のメアリーを養子に迎え、そして、1994年には息子のカルロスを養子に迎えました。ロンシュタットは娘のメアリーについて、「娘がバックコーラスを歌えるのは私が教えたからよ」と、2021年7月にイギリスの Closer Magazine に語りました。息子のカルロスは公の場に姿を見せていませんが、彼もミュージシャンだと言われています。「息子は本当に才能豊かです。ギターを手に取ってすぐに上達しましたが、それは彼の目標ではありません。彼はIT関係の仕事に就いています。私の子供たちは二人とも音楽を楽しんでいます。それこそが音楽の本来の目的だと思います」とロンシュタットは語りました。

これはアルバム Trio II / Dolly Parton, Emmylou Harris, and Linda Ronstadt (1999) リリース時のフォトセッションでの写真。ドリー・パートン、エミルー・ハリス、リンダ・ロンシュタットの三人のコラボレーションは、アルバム Trio / Dolly Parton, Emmylou Harris, and Linda Ronstadt (1987) から始まりました。三人はハーモニーを磨き上げ、ともにステージに立って歌い、プライベートでも友人でした。しかし、1999年のオーストラリアでのインタビューでは、三人の間にどこか沈んだ雰囲気がありました。彼女たちは深くもの思いにふけるようすを見せ、まるで三人のコラボレーションが終わりに近づいていることを悟っているかのようでした。そこには言葉にならない多くの思い出があり、三人は視線を交わし合い、別れを惜しんでいるようでした。

リンダ・ロンシュタット | ディスコグラフィー
Linda Ronstadt | Discography.

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