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第2章 ゴルフ場運営のリアルコロナ後、早朝プレー、そしてコスト構造


第1章では、ゴルフ場ビジネスの基本構造を整理しました。
ゴルフ場は、広大な土地を使い、長時間滞在する利用者を受け入れ、限られた時間の中で組数を設計しながら、プレーフィーを中心に複数の収益を積み上げていく事業です。

しかし、ビジネスの構造が分かっただけでは、ゴルフ場の実態はまだ見えてきません。
なぜなら、現場では理論どおりに運営できることのほうが少ないからです。

社会環境の変化、利用者ニーズの変化、人手不足、設備負荷、気候、そして現場の体力。
こうした現実が、毎日の営業の中で絶えず運営に影響を与えています。

とくに近年、ゴルフ場を取り巻く環境は大きく変わりました。
コロナ禍をきっかけに利用スタイルは変化し、収益の作り方も変わり、現場に求められる対応も変わっています。
早朝プレーの拡大やスループレーの定着は、その象徴の一つです。
また、売上の裏側では、芝管理、人件費、設備維持といった重いコストが常に存在しています。

この章では、そうしたゴルフ場運営のリアルを見ていきます。
コロナ後に何が変わったのか。
なぜ早朝プレーが増えているのか。
ゴルフ場のコスト構造にはどのような特徴があるのか。
そして、そのすべてを踏まえたうえで、ゴルフ場運営とは何を意味するのかを整理していきます。


第1節 コロナでゴルフ場はどう変わったのか

コロナ禍は、多くの業界に大きな変化をもたらしました。
ゴルフ場も例外ではありません。
ただし、ゴルフ場に起きた変化は少し独特でした。

一般には、コロナ禍でレジャー産業は厳しい影響を受けたという印象が強いかもしれません。
しかし、ゴルフ場に関しては、むしろ来場者が増えた局面がありました。
その理由は明快です。
ゴルフは屋外スポーツであり、人との距離を取りやすく、比較的感染リスクが低いと受け止められたからです。

密閉空間を避けたい。
大人数での会食や旅行は控えたい。
それでも休日に外で過ごしたい。
そうした心理のなかで、ゴルフは「行きやすいレジャー」として選ばれやすくなりました。

しかし、ここで重要なのは、来場者が増えたことそのものではありません。
来場者の中身と、利用のされ方が変わったことです。

従来のゴルフ場では、会社コンペ、接待ゴルフ、団体予約といった需要が大きな存在感を持っていました。
コンペが入れば、プレーフィーだけでなく、昼食、パーティー、飲み物、賞品、ロッカー利用など、関連する売上も伸びます。
ゴルフ場にとって、こうした団体需要は単なる予約ではなく、収益性の高い営業機会でした。

ところがコロナ禍では、接待の自粛、団体イベントの中止、企業活動の縮小が続きました。
その結果、コンペ需要は減少し、ゴルフ場は個人予約中心の営業へと比重を移していくことになります。

この変化は、単に予約の取り方が変わったという話ではありません。
運営の前提そのものを変えました。

個人予約が中心になると、利用者の属性は分散し、来場動機も多様になります。
接待や団体イベントのような「まとめて動く需要」ではなく、個人や少人数グループが、自分たちの都合で動くようになります。
その結果、ゴルフ場には、より柔軟な時間設計や価格設計が求められるようになりました。

さらに大きかったのが、スループレーの定着です。

以前のゴルフでは、前半9ホールを回り、昼食休憩を取り、後半9ホールを回るスタイルが一般的でした。
これはゴルフ場にとっても、レストラン売上を確保しやすい運営形態でした。
ところがコロナ以降は、接触を減らす、滞在時間を短くする、昼食時の混雑を避けるといった目的から、昼休憩を取らずに18ホールを回るスループレーが一気に増えました。

当初は感染対策として始まったこの流れも、いまでは多くのゴルフ場で定着しています。
利用者から見れば、短時間でラウンドを終えられることは大きなメリットです。
一日の可処分時間を有効に使えますし、ゴルフ後の予定も立てやすくなります。

一方で、ゴルフ場側から見ると、この変化は単純ではありません。
レストラン利用の前提が変わり、滞在時間が短くなり、従来の収益構造にも影響が出るからです。
つまり、コロナ後のゴルフ場は、来場者が増えたか減ったかではなく、収益の取り方と運営の回し方が変わったと考えるべきなのです。

この変化に適応できるかどうかが、現在のゴルフ場運営における大きな分岐点になっています。


第2節 なぜゴルフ場は早朝プレーを増やすのか

近年、多くのゴルフ場で早朝プレーが増えています。
これは単なるサービス拡充ではなく、ゴルフ場のビジネス構造を考えれば、非常に合理的な動きです。

第1章でも述べたとおり、ゴルフ場は回転ビジネスです。
そして、その回転は「組数」によって決まります。
いかに多くの組を、無理なく、時間内に入れられるか。
それが一日の売上を左右します。

しかし、通常営業だけでは、スタートできる時間には限界があります。
たとえば朝8時前後からスタートを始めると、その前の時間は基本的に売上を生みません。
広大なコースは存在していても、使われていない時間があるわけです。

ここに着目したのが、早朝プレーです。

たとえば朝5時からスタート枠を設ければ、通常営業が始まる前に複数組を追加できます。
コースの状態、季節、日の出時刻、組数設計にもよりますが、仮に10組から20組程度を積み増せれば、それだけでかなりの売上になります。
プレーフィーが一定額であれば、その追加分は大きなインパクトを持ちます。

つまり早朝プレーとは、
もともと売上が発生していなかった時間を、収益時間へ変える仕組み
なのです。

これは、回転ビジネスとしてのゴルフ場にとって非常に魅力的です。
新たに土地を広げる必要はありません。
コースを増設するわけでもありません。
すでにある資産を、時間の使い方によって再活用しているだけです。
その意味で、早朝プレーは投資効率のよい施策ともいえます。

しかも、早朝プレーは利用者ニーズにも合っています。
暑い時期には涼しい時間帯に回りたい人がいます。
一日を有効に使いたい人、混雑を避けたい人、仕事前や家族時間を確保しながらプレーしたい人にとっても、早朝枠は魅力的です。
したがって、運営側の都合だけではなく、市場の変化にも合致した施策だといえます。

ただし、早朝プレーには当然ながら課題もあります。

最も大きいのは、現場への負荷です。
営業開始時刻が早まるということは、マスター室、フロント、コース管理、場合によっては清掃や設備確認も、より早い時間から動かなければならないということです。
組数が増えれば、それに応じて人の動きも設備の稼働時間も伸びます。
単に売上が増えるだけではなく、現場の体制まで含めて設計しなければ、無理が生じます。

また、早朝プレーはその後の通常営業にも影響します。
進行が乱れれば後続組に波及し、プレー時間の長期化や顧客満足度の低下につながる可能性もあります。
したがって、早朝プレーは「追加枠を作ればよい」という単純な話ではありません。
売上設計と運営設計を同時に考えなければ成立しない施策なのです。

ここに、ゴルフ場マネージメントの難しさがあります。
空いている時間を売上に変えたい。
しかし、そのためには現場が回る前提が必要です。
結局のところ、早朝プレーの成否を決めるのは、営業企画だけではなく、現場全体をどう支えるかにかかっています。


第3節 ゴルフ場の意外なコスト構造

ゴルフ場経営というと、どうしても売上の話に目が向きがちです。
何組入るか。
プレーフィーはいくらか。
レストラン売上はどうか。
もちろんそれらは重要です。

しかし、現場から見れば、ゴルフ場の本当の難しさはコスト構造の重さにあります。
売上があっても、支えるための負担が大きい。
そこにゴルフ場経営の厳しさがあります。

ゴルフ場の代表的なコストは、大きく分けて三つあります。
芝管理、人件費、そして設備です。

まず一つ目が、芝管理コストです。

ゴルフ場の品質を決める最も大きな要素の一つが芝です。
プレーヤーは芝の状態に非常に敏感です。
フェアウェイやグリーンの品質は、その日の満足度に直結します。
そして、その品質は自然に保たれるものではありません。

芝刈り、散水、施肥、薬剤散布、目砂、バンカー整備、落葉や雑草の管理。
こうした作業は季節ごとに内容が変わりながらも、365日続いていきます。
真夏も、冬も、雨の日も、暑い日も、コース管理は止まりません。
プレーヤーが見ているのは「その日のきれいなコース」ですが、その裏には毎日の積み重ねがあります。

つまり芝管理とは、単なる美観維持ではなく、ゴルフ場の商品価値そのものを守るコストなのです。

二つ目が、人件費です。

ゴルフ場は広大な施設です。
しかも、ただ広いだけではなく、業務が細かく分かれています。
フロント、レストラン、マスター室、コース管理、清掃、施設管理、送迎、ショップ対応など、多くの部門が同時に動いています。
利用者からは少人数で回っているように見えても、実際には見えないところで多くの人が関わっています。

さらに近年は、人手不足が深刻です。
必要な人数を確保しづらくなり、一人あたりの負担が重くなりやすい。
早朝プレーやスループレーの導入で運営形態が変われば、その影響は人員配置にも及びます。
したがって人件費は単なる支出項目ではなく、運営可能性そのものに関わるコストです。

そして三つ目が、設備コストです。

ここは利用者から見えにくい部分ですが、実はゴルフ場経営において非常に重要です。
ゴルフ場は、コースだけの施設ではありません。
クラブハウスには、ボイラー、温浴ろ過設備、給排水設備、電気設備、空調設備、厨房設備など、多くの設備が存在します。

とくに見落とされやすいのが、ゴルフ場が実質的には温浴施設でもあるという点です。
ラウンド後の入浴は、多くの利用者にとって大切な体験です。
もしお風呂が使えない、水が出ない、給湯が止まるといった問題が起きれば、その日の営業評価は大きく下がります。
場合によってはクレームや信用低下に直結します。

また、設備は目に見えないからこそ、更新が後回しにされやすいという問題もあります。
故障していないうちは、投資の必要性が見えにくい。
しかし現場では、老朽化は静かに進行します。
いざ止まれば営業への打撃は大きい。
このリスクを抱えながら運営しているのが、実際のゴルフ場です。

つまりゴルフ場は、
芝を守り、人を動かし、設備を止めずに回し続けることで初めて成り立つ事業
なのです。

売上だけを見ていると、この構造は見えません。
しかし現場を支える側から見れば、こここそが経営の核心です。


第4節 売る仕事であると同時に、支える仕事でもある

ここまで見てきたように、ゴルフ場運営には多くの現実があります。
コロナ後には利用スタイルが変わりました。
早朝プレーによって回転率を高める工夫も進んでいます。
その一方で、芝管理、人件費、設備維持という重いコストが常に存在しています。

この全体像を見たとき、はっきり言えることがあります。
それは、ゴルフ場運営とは単に「売る仕事」ではないということです。

もちろん売上は必要です。
組数を増やさなければ、事業は成り立ちません。
プレーフィー、レストラン、物販、付帯収益を積み上げなければ、経営は維持できません。
しかし売ることだけを優先すると、現場は壊れます。

たとえば、早朝プレーを増やせば、そのぶんスタッフの始動は早くなります。
スループレーを増やせば、レストラン利用の前提が変わります。
価格を下げて集客すれば、単価が下がる一方で、現場負担だけが増えることもあります。
設備投資を先送りすれば、一時的には支出を抑えられても、将来の営業リスクは高まります。

つまり、売上を増やす施策は常に、現場のどこかに影響を与えます。
逆にいえば、現場を支える視点なしに売上だけを追うと、運営全体のバランスが崩れてしまうのです。

この意味で、ゴルフ場運営とは、
売上をつくる仕事であると同時に、現場を破綻させずに支える仕事
だといえます。

ここが、ゴルフ場経営の本質的な難しさです。

集客ができればよいわけではない。
設備が動けばよいわけでもない。
芝がきれいならそれでよいわけでもない。
それぞれが噛み合って、はじめて営業が成立します。

この視点を持つと、設備管理や清掃、マスター室、コース管理といった裏方の仕事の意味が変わって見えてきます。
それらは単なる現場業務ではなく、ゴルフ場運営を成立させる土台だからです。

第3章では、まさにその土台の側を見ていきます。
プレーヤーからは見えにくい、ゴルフ場の裏方の仕事。
マスター室、コース管理、設備管理、そして各部門の連携。
そこを理解することで、ゴルフ場という事業の実態はさらに立体的に見えてくるはずです。

福島淳一

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