【試し読み】銀魂 3年Z組銀八先生でらっくす おいでよ林間学校
『銀魂 3年Z組銀八先生でらっくす おいでよ林間学校』の発売を記念して、冒頭の試し読みを公開します!

あらすじ
『銀魂』まるちばーす学園コメディ「3年Z組銀八先生」の最新刊が、TVアニメ放映に合わせて登場! 銀八と新八と神楽の忘れ物奪い合いバトル、真選組を筆頭としたドキドキホワイトデー合戦、まるでダメなオッさん=マダオこと長谷川に替わって銀八先生が何故かウー◯ーイーツばりにアルバイト!? そして、無人島の林間学校で行われた秘宝探しで3Z生徒たちが見つけたものとは...!? でらっくすおバカでカオスなエピソードが盛りだくさん! この巻から読んでもだいたい大丈夫! アニメと一緒に読んでみてェェ!
それでは物語をお楽しみください。
第一講 「忘れ物を取りに来た」って言葉をカッコいい感じで使うのはそろそろやめないか
1
部屋の壁際には、ずらりとスチールラックが並び、そこに傘だの上履きだの、なんかの袋だの箱だの、とにかく種々雑多、いろんなものが置かれている。
部屋の引き戸は開放され、入ってすぐのところに長机が置かれていた。そこが受付というわけである。
長机を前に、受付係として立つのは、坂田銀八、志村新八、神楽の三人であった。
「あのー……」
新八がおずおずという。
「なんですか、この、地味~な絵ヅラからのスタートは。仮にもこの本、『3年Z組銀八先生』のアニメが始まるタイミングで出版されるんですよね?」
「地味なやつが地味な絵ヅラを指摘してんじゃねーよ」銀八が、例によってローテンションな声でいう。「大体お前みたいなやつ、華やかな絵ヅラんとこに放り込んだら、まぶしくて死ぬだろ」
「雑に殺すのやめてもらえます? 死にませんから」
「でも、先生、たしかにこの状況は寂しすぎるアル。ジョイマンのサイン会みたいネ」と神楽。
「別に俺らはサインなんかしねーから。あと、待ってりゃそのうち人も来るだろ」
「けど、それにしても……」
と、新八は改めて室内のスチールラックに置かれた物を見回していう。
「多すぎませんか? これ全部、校内で見つかった落とし物とか忘れ物なんですよね?」
「らしいぜ」と銀八。「で、まあ、保管スペースであるここが、いよいよパンパンになってきたから、そろそろ整理したいって、バカ、いやハタ校長がよ」
保管スペースには限りがある。増えすぎた拾得物をリストアップして、全校生徒に配布し、心当たりのある者は、放課後、保管室まで受け取りに来るように、というお触れが出されたのだった。
「でも、どうして、その受付係を先生がやることになったんですか?」と新八。
「それがよー」と、銀八が軽く舌打ちする。「俺、この一か月で、遅刻七回、無断早退五回、職員会議中に居眠り十七回してんだけどよ、その罰として、今日のこの仕事押しつけられたんだよ。ひでーとは思わねえか?」
「あんたがね」と新八は呆れる。「なんでこの一か月で、不真面目な行為、固め打ちしてんですか」
「てゆーか、先生」と神楽。「それならどうして、私と、この童貞ダメガネまで駆り出されてるアルか」
「誰が童貞ダメガネだ!」
「ガタガタいわずに手伝えよ」担任がめんどくさそうにいう。「おめーら今日、日直だろ? 『日直は落とし物保管室の受付をしなければならない』って、生徒手帳にも書いてあったろ」
「書いてないでしょ、そんなこと」
「そうだっけ? 五十二ページの4コマ目に書いてない?」
「なんで生徒手帳、漫画なんですか」
「まー、頼むわ」銀八が頭をかいていう。「来たやつに落とし物を渡すだけだ。そんな重労働じゃねえ。それによ」と、銀八は親指で背後の拾得物を指す。「今日五時までやって、落とし主が現れなかった品物は、俺たちが自由に持ち帰っていいんだとよ。いってみりゃ、それが俺たちの報酬ってわけだ」
「報酬っていわれても……」
誰のものだかわからない上履きや、使いかけの消しゴムをもらっても、別に嬉しくもなんともない。だがまあ、反論や抗弁をきき入れる担任ではないことは、長い付き合いでわかっている。やるとしますか。新八は腹を決めた。
すると、それが合図になったわけでもないだろうが、配られた拾得物リストを手にした生徒が、ぽつぽつと訪れ始めた。
リストには落とし物の品名が列記されており、すべてに番号が振られている。「7番 折り畳み傘 黒」といった感じだ。保管室に来た生徒は、自分が落としたと心当たりのある品を受付係に告げる。それをきき、受付係の新八たちがラックから該当の品を取ってきて、渡すというのが、作業の流れだった。
「12番の文庫本カバーっていうの、たぶん私なんですけど」
そう告げる女子生徒に、ラックから持ってきたその品を見せる。「やっぱり私のでした」と、女子生徒はいって、品物を受け取る。その際、受け取りのサインとして、クラスと名前を書いてもらう。あとでトラブルが起きないようにするためだ。
スポーツタオルを受け取りに来た男子生徒にそれを返却し、キーホルダーを受け取りに来た女子生徒にそれを返却した。いいペースで生徒が現れ、ラックの拾得物が減っていく。
「この調子なら、意外と早く終わるかもしれませんね」
新八がいうと、神楽がやや不満そうにいう。
「でも、全部返却されたら、私たちの報酬がなくなっちゃうアル」
「それは別にいいじゃない」
新八が苦笑したところへ、銀八がいう。
「おめーら、楽観すんのはまだ早いんじゃねえか?」
「といいますと?」
「まだ、3Zのバカどもが受け取りに来てねえ」
う、と新八は身を固くする。たしかに、まだZ組の生徒は誰もここに現れていない。
銀八が続ける。
「Z組のやつが、誰一人落とし物をしてないなんてわけがねえ。むしろ全員なにか落としてると思ったほうがいい」
それはいいすぎでしょ、とはいえないのが3Zクオリティだった。
そして、担任の言葉を裏付けるように、本日最初のZ組生徒が現れた。
東城歩である。
2
「東城です。忘れ物を取りに来ました」
「はいはい、東城ね。物はなんだ? カーテンのレールのシャーってなるやつか?」
銀八がきくと、東城はリストを手に答える。
「いえ、この22番の『おどうぐばこ』です」
「おどうぐばこって、お前、小学生じゃねえんだからよ」銀八は軽くつっこんでから、「新八、出してやってくれ」と、背後のスチールラックを指す。
いわれた新八は、ラックにそれを見つけ、受付の机のところまで持ってくる。
薄いグリーンの箱で、蓋の部分に「おどうぐばこ」と書かれている。「3年Z組 とうじょうあゆむ」と、名前まで入っていた。
「なにこれ、子どもの頃使ってたやつか?」と銀八。
「まあ、使い勝手のいいサイズなので」と東城。
「どうせエロい道具ばっか入ってるアル」と神楽。
「よし、ちょっと中身見せてみろ」
「あ、やめてください、勝手に」
東城が抵抗したが、銀八はさっさと開けてしまう。中には「大人のおもちゃ」的なグッズがぎっしり……というわけではなかった。
蓋つきの容器に入った糊。ハサミ。なわとび。クレヨン。カスタネット。そういう物だった。
「なんだオイ、拍子抜けだな」銀八がいう。「てっきり電動ナンチャラでも入ってると思ったのによ」
「糊とかハサミとか、フツーのもんばっかアル」
「当たり前でしょう」東城が心外そうにいう。「ちなみに、この蓋つきの容器に入ってるのは糊じゃなくてローションですが」
「やっぱそっち系じゃねーか」銀八がつっこむ。
「なわとびは、体を縛る用。ハサミは、そのなわがほどけなくなったときに切る用です。あとこれはクレヨンに見えますが、カ●リーメイト的な栄養補助食品です。プレイ中に手早く栄養を補給したいときに食べます。ほかにご質問は?」
「そもそも質問してねーんだよ」銀八がつっこむ。「結局、用途は全部エロじゃねーか」
「このカスタネットはなにに使うアルか」
「いや、質問しなくていいから、神楽ちゃん」
新八がたしなめたが、東城は答える。
「カスタネットは、体の一部に装着しておけば、プレイ中に音が出せます」
「『出せます』じゃねーんだよ。あとその『プレイ中』って言葉、やめてくんない?」
もういいから帰れ、と、「エロ具箱」を持たせて、東城を去らせる。
開始早々、数ページでエロネタとは、と、新八が嘆いていると、第二のZ戦士が現れた。
「すいやせーん、落とし物取りに来やしたー」
風紀委員の沖田総悟である。
「お前はなに落としたアルか? 拷問器具か? それとも脳みそか?」
神楽が早速悪態をつく。
「うるせー。おめーを絞め落としてやろーか」
と、沖田も応戦する。
「ちょっと、やめてくださいよ、喧嘩は」と新八。
「そうだよ。こっちはこんな仕事さっさと終わらせてーんだ。落とした物をいえ、沖田」
銀八にいわれ、沖田はリストを示していう。
「俺ぁ、この、8番の落語のCDでさァ」
それはラックの中に確かにあった。渡してやると、沖田はニヤリとしていう。
「いやー、戻ってきてよかった。まあでも、また落としちまうかもしれませんがね。なんせ落語には、『オチ』がつきもんだ」
「ウザッ」と銀八が顔をしかめる。「なにそのうまい感じ。うざー」
「どや顔も腹立つアル」神楽も、まずいものを食わされたような顔をする。
まあまあ、と新八がなだめていると、そこへ現れたのが、風紀委員長の近藤勲だ。
「やー、先生、すいません。俺も落とし物を受け取りに来ました」
「ゴリか。リストにバナナはなかったと思うがな」
銀八がいうと、近藤は笑う。
「やだなあ、バナナじゃないですよ。俺が落としたのはパスケースですよ。茶色の革製のやつです」
ラックの中にそれを見つけ、新八は近藤に手渡してやった。
「ありがとう、新八くん。見つかってよかったよ。なにしろこのパスケースには、愛しいお妙さんの写真を入れてあるからね」
そういってパスケースを胸に抱き、頰を赤らめる近藤を見て、新八はコメントに困る。
「ま、まあ、もう落とさないでくださいね」
「もちろんだ。もうこのパスケースは落とさない。でも……」と、そこで近藤はキメ顔を作っていう。「お妙さんという女性は、オトしてみたいがね」
「ウザッ」と、今度は新八が顔をしかめた。「『でも』のあとの間も腹立つ!」
「つーか、なにこの、うまいこという感じのノリ。風紀委員会で流行ってんの?」
銀八が冷めた目でいう。
そこへ、三人目の風紀委員が現れた。風紀委員会の副委員長をつとめる土方十四郎だ。
が、しかし、今日の土方は、いつもと様子が違う。頭にバンダナを巻き、袖のない学生服を素肌の上に羽織っている。
「すいません、僕も落とし物を取りに来ました……」
こちらと目を合わさず、ぼそぼそと声を発するこの人物は、
「ト……」新八は目を剝く。いや、銀八と神楽もだ。目を見開き、「トッシー!?」と、三人の声がそろう。
クールな土方のなかに眠るオタクの人格、それがトッシーである。
「あのー、リストの37番の、美少女フィギュアって、僕のなんです。持ってきてもらえますか。やー、ほんと大切なコレクションを落としてしまうなんて、一生の不覚でした。汚れてないですか? 壊れてないですか? 変なシミとかついてないですか? あー、心配だなあ。レア度でいったら……」
「わかりました、わかりました、ちょっと待ってください」
切れ目なく喋り続けるトッシーを制して、新八がラックからそれらしきフィギュアを持ってくる。
「これですか?」
「そうそうこれです。『美少女侍トモエ5000』に出てくる、エリカの覚醒バージョン。あ、志村氏、フィギュアを持つときは手袋をしてほしかったなあ。同じオタクなんだから、そこはわきまえてくれないと」
「いや、僕、フィギュアは守備範囲じゃないですから。つーか、やっぱこの人格の土方さんはイラッと来るな……」
「まったくだぜ」と銀八。「まさか、小説版でもこいつが出てくるとはな」
「学ランの袖ちぎって、もったいないアル」
引き気味の三人を前に、トッシーはフィギュアを愛でながらいう。
「ああ、でも、戻ってきてほんとによかったよ。これからは気をつけるからね、エリカ。なんせ僕はトッシーだけに、落とっしー物には気をつけないと。プススス……」
「おい、殴っていいんじゃねーか、コイツ」銀八がこめかみに筋を浮かべる。
「殴ってはダメですけど、マジでイラつきますね、このノリ」
「ドSの落語ファンに感化されたアルか」
新八たちがそんなことをいっていると、四人目の風紀委員が登場した。
色白、短髪、鼻筋の通った眼鏡のイケメン、その人物は近藤ら幹部に冷ややかな視線を向けると、突き放すようにいった。
「委員長をはじめ、幹部のお歴々が、そろいもそろって落とし物とは、実に嘆かわしいですね」
「伊東くん!」と、近藤が声を上げる。
小説版初登場の、伊東鴨太郎であった。
眼鏡に一度手をやり、伊東は視線同様冷ややかな声で続ける。
「風紀委員は自らが範を示さねばならない存在。にもかかわらず落とし物をし、しかもそれがみな学業の妨げとなる物ばかり。特に近藤さん。あなたは委員会のトップだ。我々を薫陶すべき立場のはずです。猛省していただきたい」
ぴしゃりといわれた近藤は、うろたえ気味に返す。
「あ、ああ、もちろんだ。これからは朝昼晩クントーして、モーセーしまくる所存だよ」
「近藤さん、薫陶ってなんですか?」
と、きいた沖田に、
「子どもは黙ってなさい!」
近藤が目を三角にする。
伊東は土方にもいう。
「土方くん、猛省というなら君もだ。風紀委員の本分、いや、学生の本分を忘れてフィギュアを愛玩するなど、副委員長としての資質を欠いているのではないか」
だが土方、いやトッシーも負けてはいない。
「あ、ちょっと異議があるんだけども、いいかな? フィギュアを愛玩することが、イコール学生の本分を忘れていることにはならないんじゃないかな? 推し活が心を充足させ、学業やその他の活動にも好影響を及ぼす場合だってあるだろうしさ」
「おい、いい加減にしろよ」と、ここで銀八が割って入る。「風紀委員のもめごとなら、よそでやってくれや」
「そーアル、あと、この眼鏡、べらべら喋りすぎネ。初登場で爪痕残そうと必死アル」
「爪痕なんか残そうと思ってないさ」
「だったらなに? 内輪もめが済んだんなら帰ってくんねーかな」
銀八がそういうと、伊東は拾得物リストを取り出して、いった。
「この、29番の『眼鏡ケース 青』を受け取りに来ました」
「いや、おめーも落とし物してたんじゃねーか!」
やれやれと思いながら、新八はラックから眼鏡ケースを取って、伊東に渡した。
受け取った伊東がいう。
「ケースを返す(けえす)ことで、僕たちの時間は終わりというわけだ」
「あーもう、うぜー! おめーら全員消えろ!」
しっしっと手を振ってダジャレ委員会を追い払う銀八であった。
そして、彼らのあとも、保管室を訪れる3Zの生徒は続いた。
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