#091 ★6年の過去問、9月から“全部”は危険?——「1校集中」が裏目に出るワケ
導入:9月、家庭に漂う「過去問ラッシュ」の空気
9月の最初の週末。
ダイニングテーブルに積み上がった分厚い過去問冊子を前に、母と子が向かい合っています。
母「とにかく第一志望の10年分を一気に解き切ろう。模試も近いし、早めに慣れておかないと」
子「でも…10年分ってそんなに時間あるのかな。他の学校もやらなきゃいけないんでしょ?」
そんな会話が、全国の家庭で繰り広げられています。
9月は、模試・文化祭・願書準備が重なり、家庭の空気が一気に受験モードへと変わる季節です。
「全部回す安心」と「第一志望に集中する情熱」。この二つの思いが衝突し、テーブルの上には緊張感が漂います。
しかし、ここに大きな誤解が潜んでいます。
**「9月から過去問を全部解く」「第一志望に全集中する」**という発想は、むしろ合格から遠ざかる危険をはらんでいるのです。
第1章:9月の“全部”が危険な理由
9月に入り、過去問演習を一気に進めるご家庭は少なくありません。
けれども、そこには大きく3つの落とし穴があります。
1. 復習の希薄化——「やりっぱなし」で翌朝が空白に
過去問を2年度分、3年度分と連続で解く。
確かに「今日だけでここまで進んだ」という達成感は得られます。
しかし翌朝、子に確認してみると——
母「昨日の大問2、どうやって解いたか説明できる?」
子「……忘れた。式は見れば思い出せるかも」
このような会話が生まれることは珍しくありません。
過去問演習の真価は「その場の得点」ではなく、翌日に再現できるかどうかにあります。
30秒で口頭説明できるか
1問だけでも答案を再現できるか
この二つをクリアして初めて「点になる知識」になります。
ところが、全部を一気に解く方式では復習時間が確保できず、知識が翌朝には霧散してしまうのです。
「解いた」という事実だけが残り、理解の土台は積み上がりません。
2. 型の転用不全——「校風依存」で初見に弱くなる
ある家庭の例です。
第一志望の問題は、計算処理が多いタイプ。そこで親はこう提案しました。
母「慣れれば点数が上がるはず。まずはこの学校だけを徹底的に」
結果、子はその形式に強くなりました。ところが——
模試で全く別の形式(資料読み取りや長文記述)が出ると、途端に手が止まります。
これは「校風依存」の典型です。
1校だけを追うことで、その型にだけ強く、転用力が育たないのです。
逆に複数校を一気に進めても、共通点を整理する余裕がないまま疲弊し、
「どこでも解けない」状態に陥りやすくなります。
過去問は、横断的に型を拾い出すことで初見に強くなるものです。
それを無視した「全部解き」や「1校集中」は、結局どちらも失敗パターンに近づきます。
3. 時間・体力の赤字——生活リズムを崩壊させる
9月は学校行事・文化祭・模試が重なる季節です。
加えて台風や登校再開で予定が揺れ、まとまった学習時間を確保するのが難しい時期でもあります。
その中で「全部やる」となると、どうなるでしょうか。
父「今日、文化祭に行ってたんだから夜に2年分解こう」
子「眠いよ…でもやらないと終わらない」
——翌朝は頭が回らず、テストで失速。
これは典型的な「時間・体力の赤字」です。
連続性が崩れることで、せっかくの努力がゼロリセットされてしまいます。
9月に無理をすると、10月以降の伸びしろまで削り取ってしまうのです。
ここまでが「全部やる」の危険性です。
次の章では、もう一つの落とし穴——「1校集中」が裏目に出る瞬間を見ていきます。
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