【ショートショート】餃子とソフトクリーム~風まかせ文芸部
「ソフトクリームが食べたい」と、目の前の旦那がいう。
餃子でもなく、焼肉でもなく、ソフトクリームが食べたいと。
だが、目の前では餃子の匂いがプンプンしていた。
お昼用にと、私がたった今、スーパーから買ってきた徳用冷凍餃子50個入りを焼いたためである。自宅のリビングではエプロンをつけたままの私が、イライラしている。
はあ、無神経な奴・・・
掃除仕立ての床はピカピカだ。その掃除仕立てのカーペットの上で、寝転がりゲームをしながら、旦那はそのテレビの画面に向かい、大きな声ではやし立てている。
目の前のテーブルには、コーヒーカップやらポテトチップスの空袋やらが散在している。よくもまあ、こんなに昼前に食べたものだ。私が買物に出掛けるときにはなかったのに・・・
その目の前には、よく見覚えのある空のお皿があった。
ウソでしょ・・・マーボ焼きそば・・・
私が昨日残したマーボー焼きそばを、旦那が食べてしまったのだった。昨日の夜、お腹一杯だからと、ラップにくるんで冷蔵庫に取っておいたものだった。
辛いから、半分だけ食べて、明日また食べようと思っていたのに・・・
旦那は「辛くて食べきれないと言っていたから、てっきり食べないものだと思って食べてしまった」と言っている。
「言ってくれればいいのに・・・
そうしたら、食べなかったのに・・・」
なんて、心なしか申し訳なさそうに言っているが、食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
もう、こうなったら、旦那の好きな餃子、全部一人で食べてやる。
と思って、勢いで焼いた餃子だった。半分の25個焼いたのだが、私一人で、一気にこんなに食べきれるかな。どうしよう・・・
ちょっと、落ち着こう。コーヒーでも飲みながら・・・考えよう。
夕ご飯に回そうかな、とも思ったが、それもダメだった。今晩は約束があるんだった。
旦那の目線が痛い。期待の目で私を見ているような。気のせいかな・・・と思いたかった。
結局、大抵は旦那の腹に収まったのだった。
なんか、悲しい・・・
旦那の膨れた腹を見る度に溜息が止まらない・・・
そう言えば、昨日痛風の検査をしてきたと言ってなかったか?
夕ご飯は、約束の焼肉屋さんだった。
塩タンと冷麺は絶対に欠かせない。私は、それさえあれば満足なのだ。旦那は贅沢だというが、食べる金額は旦那の方とそんなに変わらないし。そして、食後のソフトクリームが私の定番、決まってバニラのソフトクリームを頼む。コーンが付いてなお美味しい。思わずニンマリ笑顔になってしまうおいしさだ。
なんか、うまく胡麻化された感じもするが、私は一体何に腹を立てていたんでしょうか?
了
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