フェーズフリーはもう語り尽くされたのか――理念から建築・都市への実装へ
近年、「フェーズフリー」を掲げる防災シンポジウムや講演会が増えています。
フェーズフリーとは、平常時と災害時の境界をできるだけなくし、普段利用している製品、施設、サービス、情報を、災害時にも役立てる考え方です。
この言葉はすでに、行政、教育、企業、観光、公共空間、商品開発などへ広がっています。
そのため、フェーズフリーという言葉を使うだけで新しい企画になる段階ではありません。
しかし、理念が語り尽くされたことと、実装が終わったことは別です。
理念紹介型は増えている
フェーズフリーを紹介する際には、
日常のものを災害時にも使う。
防災専用品だけに頼らない。
普段から使うことで、維持管理と訓練を兼ねる。
という説明が一般的です。
こうした理念紹介は重要ですが、シンポジウムとしては、さらに具体的な対象と組み合わせる必要があります。
建築と公共施設
学校、庁舎、図書館、公園、集会所、商業施設、ホテルなどは、平時に利用される一方、災害時には避難、滞在、物資供給、情報提供の拠点になります。
しかし、設備を置くだけでは機能しません。
誰が維持管理するのか。
誰が操作方法を知っているのか。
平時の利用と災害時の利用が競合しないか。
電源、水、通信が失われても使えるか。
こうした運用面の検討が必要です。
デジタル情報
普段の地域アプリ、施設予約、デジタルサイネージ、位置情報、施設台帳などを、災害時の情報伝達、避難者把握、利用可能施設の検索へ使うことが考えられます。
災害専用システムは、普段使われないため、登録情報や操作方法が古くなりがちです。
日常業務で利用し、更新されている情報を災害時にも使う方が、鮮度を維持しやすいという利点があります。
企業BCPとの関係
首都直下地震を想定する場合、企業BCPだけでは対応できない課題があります。
建物を使い続けられるか。
電源、水、通信、トイレを確保できるか。
従業員が移動できるか。
周辺地域や物流が機能しているか。
企業単体の計画だけではなく、建物、地域、交通、公共施設、周辺企業との連携が必要です。
フェーズフリーは、BCPを日常側から支える考え方として位置づけることができます。
SHMはフェーズフリー技術になり得る
構造ヘルスモニタリング、SHMは、建物へ設置したセンサーから振動や変形の情報を取得し、建物の状態を把握する技術です。
従来は、地震後の被災度判定や継続使用判断が強調されてきました。
しかしSHMは、平時にも、
経年変化の監視。
劣化の兆候の把握。
設備振動の確認。
補強や改修効果の検証。
維持管理記録の蓄積。
に利用できます。
平時の維持管理と、災害時の安全確認を、同じセンサーとデータで行うことは、建築分野におけるフェーズフリーの分かりやすい例です。
シンポジウムの構成
首都直下地震をテーマにする場合は、
第1部
首都直下地震の被害想定と企業BCP
第2部
フェーズフリーから建築・都市を考える
という構成が自然です。
第1部では、被害想定、帰宅困難者、企業活動、建物の継続使用を扱います。
第2部では、公共施設、SHM、BIM・GIS、デジタル情報、公園、地域サービスを扱います。
最後に、
企業単体のBCPから地域連携へ。
防災専用品から日常利用へ。
平時の建築・都市情報を災害時へ。
という軸で討論します。
題名としては、
「首都直下地震に備える企業・建築・都市――BCPからフェーズフリーへ」
が分かりやすいでしょう。
フェーズフリーは、災害時の備えを日常へ戻す考え方です。
しかし、日常と災害時を同じ担当者がすべて担えば、仕事にも境目がなくなります。
フェーズフリーは、担当者の休日までなくす考え方ではありません。
実装には、費用、分担、維持管理、人材を含めた仕組みが必要です。
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