見出し画像

刑務官になって初めて知った“普通じゃない世界” 刺青や暴力団の世界、そして新法拘禁刑への戸惑い

刑務官の仕事は、犯罪者を遠くから監視する仕事ではありません。

刑務所の中で刑期を務める受刑者の衣食住に関することから、出所するまで、すべてに刑務官が関わっています。受刑者が生活するあらゆる場所に刑務官が存在しています。

立場は違いますが、毎日顔を合わせ、会話をする――そのような関係です。だからこそ、受刑者と刑務官の距離は難しく、一様ではないのです。

新人刑務官のころ、上司からこう言われます。

「刑務所に入る人間は、相当悪いことをしていると思え」

普段は礼儀正しく、真面目に振る舞っていたとしても、刑務所に入る人間は、相当悪いことをしてここにきている――その認識を忘れないようにしなさい、と指導されます。
ホテルに宿泊するお客様ではない。

殺人や強盗、性犯罪などの凶悪犯はもちろん、何度も再犯を繰り返し、刑務所に出入りする人生を送っている者。犯罪に手を染めて逮捕されても、実刑を言い渡されずに社会で生活していた者。執行猶予中にもかかわらず、さらに犯罪を重ねる者。

罪を犯すことに抵抗がない。慣れている。
社会でそうした人間が友達で、常に周囲にいる環境の者。

摘発されたのがたまたまその一件だっただけで、見つかっていない犯罪に手を染めている可能性もある。罰金や労役を経て、留置場や拘置所での拘留、長い裁判を経て、最終的に刑務所へやって来るのです。

要するに、刑務官が接する受刑者とは、言い方を変えると「犯罪のプロ」である――その認識を持て、と言われます。

生きてきた環境が違う。人を騙すこと、脅すこと、弱みを握ることに長けている。

だからこそ、どんな受刑者も決して甘く見てはいけない。

そう教えられるところから、刑務官人生は始まります。

ここから先は

3,646字
この記事のみ ¥ 500

元刑務官として20年以上勤務してきた中で見てきた、日本の刑務所の現実を記録しています。 受刑者は本当に反省しているのか。外国人受刑者の実態、刑務官への暴力、制圧、護身術、変わり続ける刑務所制度――ニュースでは語られない「塀の中」を、現場経験をもとに書いています。 マガジンでは2000円でまとめて読むことができます。 今後も記事を追加予定です。 刑務所・治安・社会問題・矯正のリアルに興味がある方へ。

受刑者は本当に反省しているのか。外国人受刑者の実態、刑務官への暴力、制圧、護身術、変わり続ける刑務所制度――ニュースでは語られない「塀の中…

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?