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第二話:悪魔の足跡

第二話:悪魔の足跡

検察官が読み上げる調書の声は、まるで私の脳を直接ナイフで削るような苦痛を伴っていた。

「……事件当日、被告人ジュリアン・ロランは、朝から目的もなく市街を徘徊していた」

検察官が、証拠物件であるマンションの写真を示す。

「大学での学習用として与えられたその部屋は、実際には酒、薬物、そして乱交パーティーの巣窟と化していた。事件直前まで、被告人はそこで悪友たちと夜通し狂騒に耽っていたのである」

私は傍聴席で、膝の上の拳を血が滲むほどに握りしめた。 俺が……エリック(俺)が、家族のために必死で夜勤をこなし、毎日泥のように疲れ働いていたその時、この獣は「退屈」を紛らわせるための獲物を探していたのだ。

「午前八時すぎ。公園で煙草を吸っていた被告人は、偶然、被害者宅のアパートに目を止めた。そこには、妻リナと娘クレアに送り出され、出勤するエリック・ヴァン・デル・ベルグの姿があった」

やめてくれ。その光景を語るな。 私の脳裏に、あの朝の、リナの柔らかいキスの感触が蘇る。

「被告人はすぐに行動を開始した。エリックが去った直後、アパートの扉をノックしたのである。リナは夫が忘れ物したのだと思い込み、警戒することなくドアを開けてしまった。被告人はそこへ強引に押し入り、リナを暴行。抵抗力を失った彼女を……」

検察官の言葉が続く中、法廷内には重苦しい沈黙と、時折漏れる嗚咽が混じり合った。 ジュリアンは、リナを蹂躙した後、通報を恐れるというあまりにも身勝手な理由で、台所にあったナイフを手に取った。

「異変を感じて部屋から飛び出してきた娘クレアを、被告人は大型のクローゼットの中へ力任せに押し込み、扉を閉ざした。そして……リナを殺害。クローゼットの中から聞こえるクレアの泣き叫ぶ声に苛立ち、扉を開け、幼い彼女をもその刃で刺し殺したのである」

「……う、あああああ!」

被告人席に座る「ジュリアン」が、頭を抱えて椅子から転げ落ちた。 それは、エリックの記憶が、ジュリアンの肉体を使って絶叫している姿だった。クレアがクローゼットの中でどれほど暗く、冷たく、恐ろしい思いをしたか。その恐怖が、HERP法によって今、ジュリアンの神経を焼き切らんばかりに逆流しているのだ。

だが、調書は止まらない。

「犯行後、被告人は驚くべき冷静さを見せた。浴室で返り血を浴びた手を洗い、シャワーを浴びて、エリック氏のクローゼットから奪った服に着替えた。血まみれの自らの服はゴミ袋にまとめ、近くの公園のゴミ箱へ捨てた後、平然と自室へ戻っている。さらに彼は、集まっていた悪友たちに対し、その犯行を自慢げに語って聞かせたのである」

悪友たちは恐怖のあまり沈黙し、誰一人として通報しなかった。 その夜、変わり果てた家族を発見したエリックの絶望など、彼らにとってはスリリングな「物語」の一節に過ぎなかったのだ。

「警察は、公園で発見された血痕付着の衣類、および近辺の防犯カメラの映像から被告人を特定。事件発生から十二時間後、緊急逮捕に至った」

検察官が調書を閉じ、冷徹な視線を被告人に向けた。

「以上が、人道の一欠片もない、獣の所業の全容です」

私は、被告席で嗚咽する「獣」を、冷え切った目で見つめていた。今、その肉体の中に私の心が入っているからといって、どうして許せるだろうか。

どのような人生背景があれば、この地獄が正当化されるというのか。 握りしめた拳の傷口から、血が床に一滴、滴り落ちた。

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