【息子16話】イヤホンの向こう側|息子が教えてくれた、繊細さの豊かさ


通信高校に通うことになった息子は、電車とバスを乗り継いで通学していました。

隣の県にある学校です。

最初は本当に大変でした。

人が多い場所が苦手な息子にとって、通学そのものが大きな挑戦だったからです。

それでも少しずつ、自分なりの過ごし方を見つけていきました。

その一つがイヤホンでした。

私は最初、音楽を聴いているのだと思っていました。

でも実際には違いました。

息子が聴いていたのは、HSPについて発信している方の音声配信でした。

その方が主催するオンラインサロンがあることを知り、私も息子と一緒に参加することになりました。

そこで私は初めて、HSPの人たちの世界に触れました。

正直に言うと、それまでの私はHSPの「生きづらさ」ばかりを見ていました。

なぜこんなに疲れてしまうのだろう。

なぜ人と同じようにできないのだろう。

そんなことばかり考えていました。

でもサロンの中で出会った人たちは、とても優しい人たちでした。

絵を描く人。

音楽をつくる人。

ものづくりが得意な人。

人が見過ごしてしまうようなことに気づき、丁寧に言葉にできる人。

そんな方たちがたくさんいました。

私はそこで初めて、繊細さの持つ豊かさを見た気がしました。

一方で、皆さんの悩みや苦しさにも触れました。

学校で。

職場で。

人間関係の中で。

たくさんの情報や感情を受け取りすぎてしまうこと。

周りには理解されにくいこと。

その現実も知りました。

優しい世界でした。

でも同時に、生きづらさを抱えながら生きている人たちの世界でもありました。

だからこそ思ったのです。

こんなに優しい人たちが、もう少し生きやすい社会だったらいいのに、と。

今振り返ると、息子がイヤホンで聴いていたのは単なる音声配信ではありませんでした。

自分を理解してくれる言葉だったのかもしれません。

安心できる居場所だったのかもしれません。

そしてそのイヤホンの向こう側には、私の知らなかった世界が広がっていました。


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