【息子14話】別世界にいました|みんなが前を向く中、私だけ別世界にいました


息子が高校を辞めると決まって、
主人と一緒に学校へ向かいました。

担任の先生と、主任の先生にご挨拶をするためです。

今思い返しても、不思議なくらい、私は別世界にいました。

主人は、家を出る前から空気が違っていました。

もちろん心配はしていたと思います。
でも、私みたいな悲壮感をまとっていませんでした。

今思えば、主人はもう「次」を見ていたんだと思います。

でも私は違いました。

私の中では、「高校を辞める」ということは、終わりに近かったんです。

学校へ着くと、担任の先生が迎えてくださいました。

以前も書きましたが、本当に温かい先生でした。

高校の先生って、こんなに寄り添ってくださるんだと思うくらい、息子のことを理解しようとしてくださっていました。

主任の先生も、とても穏やかで優しい方でした。

息子と話したことがあったらしく、

「すごくいいところを持っていますよね」

そんなふうに話してくださいました。

そしてお二人とも、同じようなことを言われました。

「自分に合う場所へ行くのが、一番いいんですよ」

優しく、穏やかに。

今の私なら、その言葉がよくわかります。

本当に、その通りなんです。

でも、あの時の私は受け取れませんでした。

心の中で、ずっと叫んでいました。

「高校を辞めるんだよ」

「付属の高校を辞めるんだよ」

「なんでそんなふうに笑顔になれるの?」

「なんでもう未来を見てるの?」

そんな気持ちでした。

今思うと、かなり怒っていました。

「所詮、他人事だから言えるんじゃないの?」

そんなふうに思ってしまったんです。

みんなが前を向いているように見えました。

主人も、先生たちも、もしかしたら息子も。

でも私だけが、そこに立ち止まっていました。

ちゃんと挨拶はしました。

お世話になった感謝も伝えました。

でも心だけは、まるで別の場所にいました。

取り残されているような感覚でした。

今ならわかります。

先生たちは、「終わり」ではなく「始まり」を見てくださっていたんだと思います。

でも、あの時の私は、まだそこへ行けませんでした。

あの頃の私は、もう正常な精神状態ではありませんでした。

だから、「大丈夫ですよ」という空気の中に、自分だけ入れなかったんです。

そして私は、息子のことだけではなく、自分自身のことも手放せなかったんだと思います。

「付属高校に通っている息子の母」でいること。

頑張ってきた自分。

ちゃんとしてきたつもりだった子育て。

それが全部、崩れていくような気がしていました。

だから私は、あの部屋の中で、ひとり別世界にいました。


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息子は昨日の自分と比べていました。でも私は、まだ周りと比べていました


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