第二章|准看護学校編⑩|実習前に待っていた”写経”|遠回りでも、看護師になれた。
看護過程や関連図にも、少しずつ慣れてきた頃でした。
「ようやく学校生活にも慣れてきたかな。」
そんなことを思い始めていた矢先、先生から新しい課題が配られます。
手渡された資料を見て、思わず固まりました。
「……ん?」
「これ、看護技術の教科書一冊分くらいあるぞ。」
何十ページどころではありません。
しかも、すべて直筆。
コピーでもパソコンでもありません。
指定されたルーズリーフに、一文字一文字、自分の手で書き写さなければならないのです。
さらに、
ルーズリーフは指定のもの。
穴あけ部分には補強シール。
項目ごとにタグを付けて整理。
細かいルールまで決められていました。
思わず心の中で叫びました。
「おいおい……。」
「手が折れるだろう。」
そして、もう一つ思ったことがあります。
「これ、どうして冬休み前に渡してくれなかったんだろう……。」
実習まで残された時間は決して多くありません。
終わる気がしませんでした。
学校中が、どこか張り詰めた空気になります。
「間に合うのかな……。」
そんな声も聞こえてきました。
放課後になると、友人たちとファミリーレストランへ向かいます。
ドリンクバーを頼み、それぞれが黙々とペンを走らせる。
誰も雑談をしません。
聞こえてくるのは、紙をめくる音とペンの音だけ。
分からないところだけ、小さな声で確認し合う。
そんな日々が何日も続きました。
今振り返っても、あれほど文字を書いた経験はありません。
だから学生の間では、この課題をみんな**「写経」**と呼んでいました。
決して大げさな表現ではありません。
本当に、写経そのものだったのです。
ようやく最後の一枚を書き終えた時の達成感は忘れられません。
「やっと終わった。」
そう思いながら提出したのですが……。
もちろん、それで終わる学校ではありませんでした。
返ってきた課題には、先生から赤字でびっしりと添削が入っています。
「ここは違います。」
「根拠を書きましょう。」
「表現を修正してください。」
まさに添削の嵐。
思わず苦笑いしながら、
「やってくれるな……。」
と心の中でつぶやいたことを覚えています。
でも今思えば、この厳しさがあったからこそ、一つひとつの看護技術を理解しながら覚えることができました。
当時は大変でしかありませんでしたが、あの膨大な課題は、実習へ向かうための土台になっていたのだと思います。
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📖 次回予告
いよいよ初めての病院見学。
教科書では分からない現場の空気。
緊張と期待を胸に、実習への一歩を踏み出します。
第二章|准看護学校編⑪|実習前の病院見学|遠回りでも、看護師になれた。
