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化石ジジイは燃料を持つ ― 初出店で42冊売って分かった、「ターボ理論」の物理的証明―2026年5月4日、文学フリマ東京42

2026年5月4日、文学フリマ東京42。アンジー森というペンネームの本をリリースしました。出品50部のうち42部が売れ、そのうちのひとつ『サイボーグジジイになりたい』は25部すべてが手に渡りました。本記事はイベント参加の記録に加え、自分が唱える「ターボ理論」の物理的証明です。


アンジー森、東京ビッグサイトに立つ!

ペンネーム「アンジー森」は、社名と本名を結んだ名前です。会社は「アンジー」、姓は森のまま。これは所属するライターコミュニティに参加するためにつけた名前ですが、まあペンネームとして自分としてもしっくりきました。

これまで30年以上、私は記者、編集者・森英信としておもに商業出版物やメディア記事にその名を残してきました。インタビュー、講演レポート、事例記事、書籍——どれも他社のプロダクトでの仕事です。自分の名前で商業出版した本もいくつかありましたが、いずれも共著でした。

今日からは違います。

ブースに並べた2タイトルは、自分の責任、自社をパブリッシャーとして世に出すものです。

『サイボーグジジイになりたい』はAI×還暦前のジジイの実存を記しつつ、AIとともに質の高い記事をつくるためのノウハウを提供する本。『Tech Leaders' English』(TLE)はこれまで250人以上の海外テック企業創業者・経営者に対して行ったインタビュー時にメモしたビジネス英語のフレーズ集。どちらも自分の蓄積から生まれた本です。

朝、ブースに本を並べたときは「果たして売れるのだろうか……」と不安でいっぱいでした。


売れた、完売した

12時の開場から20分ほど経過した頃でしょうか、最初の一冊が売れました。『Tech Leaders' English』でした。

事前にカタログを見て、ブースを目指して来てくれた方です。即決。指名買いでした。意外でしたが、思わず脳汁が出ました。1冊売れただけで、「もう今日の目的は達成」と感じるほど嬉しかったです。

その後も、Tech Leaders' Englishはカタログを見た指名買いがつづきました。やがて中盤からサイボーグジジイ本が動きはじめます。POPを見て立ち止まり、表紙を見て、見本を手にとって、買う。あまり声をかけてはいけないと思いつつ、その後は「AIといっしょに記事や本をつくるやり方を説明しています」と、概要を話しました。そうしたコミュニケーションもあり、ぽつぽつと売れていきました。

さてここで、正直に告白しておきます。印刷した本は各100部。でも持参したのは各25部、合計50部(見本・献本除く)だけでした。「サイボーグジジイになりたい」と言いながら、当日の運搬力はリアルなジジイのまま。200部も運べるわけはありません。はやく機械の身体もほしいですね。

あるお客様の来訪で、衝撃の事実を知ります。文学フリマにはじめて出店するにあたり、何気なく選んだカテゴリが「評論・研究|ビジネス」だったんですね。それで、そのお客様が「ビジネス書の編集をしているんですけど、ビジネスのブースってここだけなんですよね」と……それでWebカタログを検索するとなんと!「評論・研究|ビジネス(1)」と、その1件がアンジーだったのです。初登場でいきなりカテゴリ1位を獲得したようなものですね。

さて、中盤以降、出店されているライターコミュニティのみなさんや、編集仲間など知り合いの方がブースを訪れ、購入いただきました。こうした交流も文学フリマのいいところですね。

そして終了15分前。サイボーグジジイ本の25冊目が売れました。なんと完売です。

出来すぎた話に聞こえるかもしれませんが、事実です。終了15分前にぴったり25冊目が出ました。あと数分後ろにずれていたら、完売には届かなかった。

帰って在庫をカウントし、出品50部のうち42部が売れたことを確認しました。ブースに来ていただいた方、お話させていただいた方、ご購入いただいた方、大変ありがとうございました!


タイトルが完売を決めた

12時〜17時までブースに立ち、買われ方を観察していて、TLEとサイボーグジジイ本で動き方が少し違うことに気づきました(関係者とか知り合いはまあ両方買ってくださいました)。

TLEは指名買い型。事前にカタログで存在を知った人が、ブースに足を運んで買っていく。ニッチで具体的な需要に応える本だから、目的を持った読者が探し当てる構造です。

サイボーグジジイ本はブース即決型。通りがかりに表紙を見て、立ち止まり、その場で買う。汎用エッセイとしての引力です。

買ってくれた人の何人かは、購入時にこんなことを口にしてくれました。

「私もAIを使って仕事をしているんですよ」
「note記事を整えたくて」
「コンスタントに発信したいんです」

サイボーグジジイ本の横には「毎日、AIと戦っています。」というコピーのPOPを置いていました。現役記者の悪戦苦闘の書ということで、普段AIを使っている人やAIに興味がある人の心に響いたようです。


一方、Tech Leaders' Englishのほうには、POPを用意していませんでした。それというのも、机が狭くてPOPを置くスペースがなかったからです。タイトルも英語なのでぱっと見なんの本かわかりません。次回からはPOPも含めたコミュニケーション設計が課題だと思いました。

タイトル、表紙、POP、声かけ——どれも編集者として何度も組んできた装置です。30年、万単位の記事を作ってきた経験が、ようやく自分のために働いた瞬間でした。


化石は燃料だぜ ― ターボ理論の物理的証明

なぜタイトルや表紙、POPが装置として効いたのか。その根っこに「ターボ理論」というのがあります。今回の2冊に共通するキーワードです。

ターボ理論とは、次のようなものです。

30年の経験は、AI時代において時代遅れの化石ではない。それはAIで燃焼させる燃料である。

タグラインはこうです。

ジジイは化石かもしれない。だが、燃料だぜ。

今日売れた42冊が、何の燃焼結果だったのでしょうか。30年で会った人、書いた記事、編集した本——その全部がサイボーグジジイ本の素地になっています。これまでの編集記者業務で得た知見やノウハウを、AIとの協働にブレンドしていきました。AIに業務を依頼するためのプロンプトの1行1行に過去の現場が透けて入っています。

AIがなかった時代、この蓄積は私の中だけにあり、私だけが使う。外には出ない、地中に埋もれた化石のようでした。AIが来て、何が変わったか。蓄積に火がついたのです。

文字起こしのクレンジング、ドラフト生成、ファクトチェックや校正、これまで自分一人で抱えていた工程をAIと分担する。その分の時間と気力で、自分の本を書ける。

化石燃料(蓄積)+ 触媒(AI)= ターボ稼働。

また、Tech Leaders' English本も、ターボを体現したものです。テック企業の経営者インタビューの際にメモしていたフレーズが化石燃料となり、こちらもターボ稼働です。

ジジイは化石かもしれませんが、たとえ転んだとしても過去の資産を燃やして起き上がることができます。

終了15分前の25冊目(合計42冊目)を、燃焼の比喩で言い直すならこうなります。化石燃料が、最後の一片まで燃え尽きた瞬間でした。ほぼ完全燃焼といっていいでしょう。

このターボが効くかどうかは、化石燃料の質と量で決まります。だから三項対立があります。

化石燃料(=経験)を持たないと、AIだけ与えられても燃やすものがない。
蓄積はあっても、燃やし方を知らない人は化石として朽ちる。
サイボーグジジイは、その間にいる。

蓄積がある。AIもなんとか使おうとする。あとは火をつけるだけです。

俺は化石かもしれない。だが、燃料だぜ。


次の燃焼へ

次のイベント参加は7月11日のZineフェス東京。さらに11月の文学フリマ東京43にも再出展する予定です。GitHubに「AI編集部OS」を公開していることもあって、技術書典への進出も視野に入れています。

そのために新作も準備中です。これは、多重下請け零細編集プロダクションが、負債を1週間で返すためにAIエージェントチームを作って悪戦苦闘するストーリーです。GitHub上の「AI編集部OS」と連動した小説になる見込みです。小説に加え、GitHubに投稿したOSもあいまって、ターボに拍車をかけるのが狙いです。

ジジイの肉体では、イベントに持ち込める部数は限られていますが、なるべく多くの人たちに楽しんでいただけるよう、筋トレもがんばります。

アンジー森という名前を、今日文学フリマの会場で初めて知ってくれた方もいると思います。ありがとうございました。次の本でまた会いましょう!


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