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兄さんの絵【額に入った夕暮れ】

僕の姉さんにはとても大切にしている絵がある。30センチ位の水彩画で、十年前に死んだ兄さんが描いたらしい。
兄さんが死んだのは僕が5歳の時だから、僕は兄さんの事はあまり覚えていない。生まれつき虚弱体質だったそうで、絵を描くのが上手な、大人みたいに笑う人だった。

「これ夕暮れ?」

灰色掛かった薄い空色に、黄色に近いオレンジと藤色のグラデーション。全体的に淡い色彩をくっきりと線引くように伸びる電線と電柱の黒が邪魔だな、と僕なら思う。絵なのだからいっそ取っ払ってしまえば良いのに、生真面目な人だったのかな。

「ええ。これはお祖母さまの家から見た風景ですよ」

僕より4歳年上の姉さんは、いつかの兄さんそっくりの微笑みで教えてくれた。

「私だけに描いてくださったと思っていたのに」

ーー後に、兄さんの級友だった雪乃さんに兄さんの別の絵を見せてもらう機会があった。電柱どころか影一つない夜明けの絵。
僕はすっかり兄さんの絵が嫌いになってしまった。





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