【毎週ショートショートnote】おせち風呂
「もう正月は終わったんだ」
おせちの良心、筑前煮が宣言した。厳かな、諭すような声色だった。
「何も終わっちゃいない、何も!」
叫び返したのは角煮。古参の伝統あるおせちには煙たがれる宿命の持ち主だ。
「そうだ、俺たちの正月はまだ終わっちゃいないんだ!」
「帰りたい、帰りたいよ……こたつでだらだらとかくし芸大会でも見てたあの頃のお正月に……」
それに続くのは栗きんとんに黒豆。おかずが甘いのはちょっと、なんて心無い言葉にどれほど傷を負ったのか。それは彼等にしか共有出来ない悲哀であった。
「まぁまぁ皆さん、お風呂でも入ってさっぱりしましょうよ」
「アンタだって甘いくせに、人気者の伊達巻め……!」
「そうだ、俺は冷蔵庫に帰らせてもらう!」
「それはそれでフラグでは!?」
かくして大浴場へ向かう栗きんとんと黒豆。クリーム色の液体に飛び込んだ。
「なんだかねっとりしたお湯? だね」
「いやこれは……騙された、オーブンだ!」
「パウンドケーキ出来たよ」

こちら参加させて頂きました。本文410字。
今年もよろしくお願いします。
それにしても何だこれ。
とりあえず黒豆入りパウンドケーキは美味しいです。きんとんは知らんけど、まぁいけるでしょ。
