Photo by
kubochi___
【月夜の寝ぐせ】ベランダの喫煙仲間
眠れない夜、ベランダで月を見る。
マルボロを挟む指先がかじかんできた頃、隣の部屋の引き戸が開く音がした。薄い仕切り板の向こうに人の気配が立つ。
「こんばんは」
「はいこんばんは。珍しいすね、こんな時間に」「卒論の追い込みでね」
同じ学生寮の隣の人。ちょくちょく煙草を吸うタイミングが重なり、日常会話くらいは交わすようになった。顔も知らない喫煙仲間。
「先輩だったんかぁ」
「今更ー?」
くすくす笑う声色は普段より少し子どもっぽい。徹夜ハイかな?
「そちらは夜ふかし?」
「まぁちょっとお月見を」
糸のようなか細い光に、また笑う声。
「お月様好きだねぇ」
「だって丁度よいじゃないすか」
ギラギラ太陽なんかまっぴらだけど、完全な暗闇も落ち着かない。
何より、例えばネタ土産のご当地Tシャツだろうが優しく受け入れてくれる包容力。眠れない罪悪感も消し去ってくれそうだ。
「月は何も言いませんし」
この人も寝ぐせ付いてたりするのかな。
冷えた指先を擦る夜は続く。
こちら参加させて頂きました(本文410文字)
作者は大阪の専門学校に通っていた頃、十二階建ての大型学生寮に住んでいたので、まじで顔も知らない寮生仲間がいっぱいいました。
