【noteでBL】晴々雷鳴〜観察日記ノススメ〜
今回はnoteでBL第21弾にして、三回目の激重感情仄暗不穏祭でございます。
不穏の淑女、かし子嬢リクエストのお題です。
詳細は↑を見て頂くとして、最低ラインは以下の通り。
最悪、
「可哀想な過去話NG!治安のいい不穏を!」
「ベタ惚れ攻め×誘い受け」
「2人だけが幸せな倒錯した世界」
この3つを最低限守ってくれたらいいと思います。
【ジャンル】
コメディ
【あらすじ】
彼氏が俺の観察日記つけてた。
真面目なクラス委員長が見せた、様子のおかしい執着と嫉妬に“俺”こと駒澤の反応は……?
シリアスだけが不穏じゃない? 不穏×コメディのススメ!
【登場人物】
駒澤和成(受)
クラスの賑やかし担当ムードメーカー。
「ウゼェ時もあるが、場の空気が重くなりすぎなくて助かる」(同級生Sくん談)
青山寿明(攻)
真面目で面倒見が良いクラス委員長。
「いつか反動で何かやらかすんじゃないかと思ってました」(同級生Nくん談)
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【本文文字:4,902文字】
俺は周りの人達にどう思われているのだろう。
「明るい」「ひょうきん」「ムードメーカー」「盛り上げ役」「もう少し落ち着きましょう」?自分でもその通りだなと思うし、不満もない。
俺にはそういうキャラが望まれてると自覚してからは、ちょっと意識してるまであるけど、別に演技してるって程でもない。
根っからウケ狙い気質なのかな、フリには応えたくなるじゃん。
うん、誓って自分の扱いに不満はない。
ただ、時々、ほんの少しだけ。
(こいつ、俺のどこが好きなんだろ)
なんて、疑問に思ってしまう時もある訳で。
例えばそう、こっちは触れるだけのキス一つでもいっぱいいっぱいなのに、涼しい顔してる時とか。
余裕綽々な態度が悔しいとーーそう思っていた時もありました。
晴々雷鳴〜観察日記ノススメ〜
「なんだこれ」
バツが悪そうな、それでもやっぱり涼しい顔の恋人を目前に、俺は混乱していた。
青天の霹靂、藪から棒、机に出しっぱなしだった恋人の日記。
ちょっとした出来心で覗いてみた俺が悪いのは承知の上で、情状酌量を求める。だって、これ、シンプルなキャンパスノートに、例えばこんなこと書かれてんの。
付き合う前からボディタッチの多い奴だったけど、未だに照れる基準が分からん。膝に座るのは良くて手を繋ぐのはアウトって意味わからん。
ヘソ弄るのは腹痛くなりそうだからやめろってのは分かる。
うん、改めて並べられると確かに意味わからんな。
でも違うんだよ。寄りかかったりは友達でもするじゃん。手繋ぎなしないじゃん。少なくとも男子高校生同士ではしないじゃん。
ぶっちゃけ背面座位っぽくて大変けしからん。
俺の前世は世界でも救ったのか?
「怖い怖い怖い怖い、お前涼しい顔してそんなこと考えてたの怖いって」
「待て誤解だ!」
「え、じゃあそのノート、委員長の物じゃないの?」
「いやそれは俺の物だけど」
「あってんじゃんか!」
懐かしの某コピペネタなんて挟んでみたけど、今時の高校生は知らないネタじゃないかなァと、和成くん思うわけ。案外余裕そうってか。現実逃避に決まってるでしょうが常識的に考えて。
「でも元ネタみたいに物理的な距離取ろうとはしないんだな」
「いや委員長もこのネタ知ってんのかーい」
距離も何も、こちとら既にベッド脇まで追い込まれてんだよ。座り込んでる姿勢だから機動力にも限度があるし、これ以上下がれば背中にめり込むしかない。
「いやなんで恋人に追い込み漁されてんの俺!」
「追い込み漁て」
あれれーおかしいなー。声も顔も笑ってるのに、眼鏡越しでも分かるレベルで目だけが死んだ魚のように濁ってるよ、マイダーリン。目付きが怖いのは裸眼の時だけにしてくれ。
「あのちょっと、落ち着こ? 落ち着いてルマンドでも食べよ?」
「取り乱してるのはお前だし、今日の茶菓子はオレオだが」
「いやそこはどっちでも良い」
そうだね、部屋に戻って来た直後、ノート持ったままフリーズしてた俺を見て、特に騒ぐでもなく、コーヒーの乗ったお盆を机に置いてからそっとノート回収してたもんね委員長。腹立つくらい冷静。俺ならお盆ごとひっくり返してたわ。
「てかさ」
キスでも出来そうな距離にある顔。腰のすぐ左右を両手をついて囲まれていて、壁ドンならぬベッドドン? 前提さえなければ中々ときめくシチュエーションだと思うのだけど、現実はままならない。
「申し開きするのは委員長の方だよね?」
「………………やましい事はしてない」
「じゃあなんで目ぇ逸らすかな!?」
つい襟口掴んで揺さぶっちゃったけど、微動だにしないの腹立つな。途端に叱られた大型犬みたいな雰囲気を醸し出し始めたけど、今回ワンコ系攻めはNGだからやめようぜ。
「メタ発言やめろ」
「あっごめん。どっちかと言えば委員長は飼い主側だよね」
「そういう問題でもない」
ーー閑話休題。
「で、何なのソレ」
「……日々の記録」
「見ちゃった範囲では俺のことしか書いてないんだが〜? そもそもwhatじゃなくてWhyを聞きたいんですけど〜?」
マジで飼い主よろしく首輪付けて監禁とか飼育とかやりたいタイプか。ドロドロに甘やかして依存させて「俺なしではもう生きていけないだろう?」とか言っちゃうご主人様か。助けてクラスメイト諸君、俺たちの委員長が鬼畜眼鏡になっちゃう。
「ぶっちゃけ首輪は付けてみたい」
「ヒエ」
「あと監禁なんかしなくても事足りるだろ」
「エッ」
アーッ困りますお客様! お客様? ご主人様? 申し開きの体で性癖開示はおやめください!
「まさかそういう願望とか、俺にさせたい特殊プレイとか書き留めてた的な呪物……?」
「呪物て。そもそも特殊って程か?」
「首輪プレイは特殊ですぅ〜!」
特殊だよな。これが特殊じゃない世界線なんて嫌なんだが。
フッ、と小さく噴き出した吐息が鼻先にかかってもどかしい。
「コマって意外と初心だよな。知ってた」
「いや意外とって何」
「興味ないって訳じゃないだろうけど、照れかな。羞恥心のが勝るだろ」
脱力したようにうなだれた頭が肩に伸し掛かる。妹ちゃん達の好みだと言う柔軟剤の香りが少し甘ったるくて、こんな状況だというのに心臓が落ち着かない。
「恥ずかしいとボケ倒すし、重い空気苦手だからって空気読めない振りしてすぐシリアスをクラッシュするし」
「うん?」
「そのくせ耳だけ真っ赤だったりしてさ、バレバレなんだが」
「うえ!?」
後方彼氏面なら後方でやってくれ……!
自分分かってますよ、みたいな態度取られるとめっちゃ恥ずかしいんだが。渾身の一発ギャグを懇切丁寧に解説されるお笑い芸人ってこんな気分なのかな、やめてあげて。
「むしろ誰よりも空気読めてるから良くない空気の時は率先して変えようとしてるだろ。周りに求められてるキャラクターを把握してるから道化に徹してるとこある。そういうとこだぞ」
というか、イマジナリー芸人より俺の情緒の危機だ。この、なんだ。何のスイッチ入ったのこれ。
「お前みたいなやつがいると周りは助かるよ。俺だってそうだ、真面目な正論や理屈だけじゃ人は動かない。ゲームならヒーラーやタンクみたいなもんだよ、補助役がいなくちゃ組織は動かない。それをやれ単体の攻撃力がどうの楽して不公平だの正統な評価軸もなしに勝手なこと言い出すような追放もの地雷」
「待って本当に何のスイッチ入った!?」
よく分からないけど、色々と思うところがあるんだろうな。抑圧強そうだし。
肩口に伸し掛かったままの頭をわしゃわしゃ撫で回してやると、ベッドに押しつけられていた両腕が離れて胴体に巻き付いてきた。ハグもストレス軽減効果があるというし、結局は惚れた弱みってやつでそのままにしておく。
「いや、それと観察日記とは話が別な?」
「別に話変わってないが」
「本当か〜?」
いやまて、変わっていないということは、これ?
こういうことを書いてると?
「は? ゲームならヒーラーかタンクとか書かれてんの?」
「それは書いてない」
「意味がわからない!」
📔📔📔
「最初はコイツ面白いこと言うな、と思って」
始まりは忘備録ってやつだったらしい。
ベッドの上に座り直し、観念した容疑者がしぶしぶ差し出した証拠品のページをめくる。
正直、地雷原に突撃する行為にしか思えないのだけど、知ってしまった以上は見ないふりも恐ろしい。監禁計画でも書かれてたらどうしよう、なんて懸念も無くはないけれど、「お前の恋人だろ、手遅れになる前にどうにかしろ」と発破をかけてくる脳内クラスメイト達に勇気を奮い立たせる。
そんな悲壮な決意は、最初の”面白いこと“であっさりと方向転換を強いられた。
「メロンパンってカツ丼と同じくらいカロリーあるんだって。即ちジェネリックカツ丼。これを食らう時、人はカツ丼をも食らっていると同義。それならカツ丼食わせろ」
「……こんなの言ったっけ」
「言った言った」
「個性ってな、イコール毒よ。上手く扱えれば万能薬だけど、生半可だと中毒なったり最悪死人が出る。そんなもん欲しがるなら、まずは健康を手に入れろ。個性より筋肉。筋トレで中毒死はしない。しないだろ?」
「言ったかなぁ??」
「言ったって。うまいこと言うなって感心したんだぞ」
「知らない間にクリティカルヒットしてる……さすが筋肉……」
ページが進むにつれて、俺が言ったらしい台詞の他にも、感想というかちょっとした考察みたいな文章も出てくるようになる。
反語がだいたい「いや」。口癖か?
「言うわ、これめっちゃ言ってるわ」
自分でもちょっと面白くなってきた頃合いに、なんだがアヤしい文章が混じってきた。
センター分けの前髪、体育や部活の時は全体をまとめて上にねじってピンで止めてる。妹がポンパって呼んでた髪型と完全一致。女子中学生か。
デコ出しは陽キャ
「なんて?」
「陰キャはデコなんて出さない」
「なんて??」
リーディングの時間に爪噛み。他の授業では見かけないど、集中したい時の癖だろうか。
お前も授業に集中しろ委員長。
たまたま気付いた発見から、わざわざ観察した結論に変化してきた。
首の付け根、Tシャツでギリギリ隠れるラインの背骨の上にほくろ。
決意、決意さん戻ってきて。
いつ見たんだとか以前に、特に所感とか無しで事実だけ述べてるのが逆に怖い。ぴえん。
最近駿河や佐原とよく話してるのを見かける。
駿河は同じ陸上部だから以前からよくからんでいたけど、連休明け辺りからは駿河から声をかけている姿もよく見る。
佐原に至っては共通点がとんと分からん。クラスだって一緒になったの4月からだろう。どうしてお前がレモンティーよりミルクティー派って知ってる?そもそもコマが学校で紅茶飲んでる事ほとんどないだろ。
俺、どちらかといえばコーヒー派だから、紅茶選ぶ機会もレアなんだけど。どうして知ってるんだろうな、二人とも。突っ込みどころはそこじゃねぇだろって? それはそう。
コマは暖色系が似合う。
赤とかオレンジとか、明度の高いやつ。
赤い首輪なんか似合うと思う。
「よくもまぁ、やましくはないなんて言えたね!?」
「……すまん」
客観的に見て自分でもこれは、とでも思ったのか、単純にあれこれパッションに任せて書き殴った文章を人に見られて赤っ恥なのか。
とうとう頭を抱えだした横顔を睨む俺だって涙目だ。
「駿河っちと佐原っちはさ、あれ、恋バナしてんだよ」
「恋バナ」
俺たちを含め、同じクラスに同性と付き合ってる奴が何組もいるってどういう確立だという話だけど、BLの世界だからね、仕方ないね。
そうはいっても少数派である事実は変わらないので、情報収集や相談事をする相手も限られてくる。自然とつるむ機会も増えるってもんだろう。
「ちなみに駿河っちは愚痴や文句の体した惚気だし、佐原っちはストレートに惚気てくるけどツボが独特」
「それ、俺が聞いても大丈夫なやつか」
「お互いさまだから大丈夫っしょ多分」
今度は俺も、相談事の体で話してやろう。「彼氏が俺の観察日記つけてた」って。ドン引きされるかウケるか、ちょっと楽しみに感じ始めた俺も大概か。
「……ヘソいじらせてくれるなら許す」
「ヘソに対する執着心は何なの?」
割れ鍋に綴じ蓋ってやつなのか、吊り橋効果ではない事だけ願う。
ーーおまけーー
駒澤の、重くて不穏な空気をなんとなく有耶無耶にする気質は思いの外根が深い。
一種の現実逃避、と分析する青山は、そっと視線を己の机に向けた。その引き出しの奥に思いをはせる。駒澤に見せた、実は二冊目である日記。その一冊目を脳裏に思い描く。
「古の平成ギャルですら絶対評価世代なのに、なんで相対評価守ってんの?真似するならギャルピだけにしろ?」
他人の評価を自覚してて、どう応えるのが正解か理解してるのも同じなのに、どうしてあいつは自由でいられるんだろう。
「愛さえあればとか愛はあるんだとかさ、実は愛情の有無って免罪符にはなんねーんだわ。愛や善意が人を殺さないなんて保証はないよ」
愛されてるから。期待されてるから。
自分を支えていたものの不確かさを突き付けたのはお前だから、責任取れとすがりたくなるのは八つ当たりかな。
突き放すような毒すら含んだ言葉達が、青天の霹靂よろしく打ち鳴らした衝撃を、青山は決して忘れない。
