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短編小説/のぼり

 
校門の前の横断歩道に幽霊がいる。小学五年生の男の子で、毎日同じ場所に立って、通りをじっと見つめている。

僕の隣の席の子だった。名前は渡辺智くん。半年前にこの横断歩道を自転車で渡ろうとした時、赤信号を無視した車とぶつかって亡くなった。犯人は逃走したが、二日後には捕まった。お葬式も終わったはずの翌日に、渡辺君は事故現場となった歩道に現れるようになった。

その姿は昼間でもはっきり確認できた。霊感の有無に関係なく、全員が見えるのだ。おかっぱ頭に白と黒のラグランシャツ。デニムのハーフパンツ。そしてなぜか裸足だった。なにも知らずに通り掛かったら「僕、靴どうしたの?」と、尋ねてしまうぐらい鮮明。低学年の子は怖がって近くを通りたがらず、親と一緒に登校する子もいた。

しかし誰にもどうにもできない。相手は幽霊で、不幸な事故で亡くなった子供。学校はお寺のお坊さんに頼んでお祓いをしてもらった。塩やお酒を撒いてお清めし、信号機の電柱に御札も貼った。献花台も設えて山ほど花やお菓子を手向けたが、渡辺君は消えなかった。彼の両親がやって来ては何度も呼び掛けた。

「智くん、おうちに帰ろう。裸足じゃ寒いでしょ。新しいカード買ってあげるから、一緒に行こう」

すると渡辺君は一旦はいなくなるが、翌日にはまた立っている。けれど僕らは話し掛けない。話しかけてはいけないと言われていたからだ。

渡辺君を気の毒に思った同級生が声を掛けた次の日に、学校の三階から転落して亡くなった。渡辺君の祟りだと恐怖心はさらに大きく募り、無視するように学校から指導がなされ、信号機の脇に奇妙なのぼりが設置された。

『安全のため ここにいる子供に 声を掛けないで下さい』

担任だった佐藤先生が白い布に黒マジックで書いた。その文言こそが怖いのだが、みな渡辺君を積極的に無視した。

噂はたちまち広がり、やがて心霊スポットとして有名になり、わんさかYoutuberや、オカルトマニアが撮影にやってきたが、渡辺君はなぜかカメラには映らず、証拠に残らないので、次第に誰も来なくなった。けれど目視では変わらずそこにいて、恨めしそうに見つめているのだった。

きっと心残りがあるんだ。僕は渡辺君を助けたくなった。友達だったから。隣の席だった時は消しゴムを貸してくれたり、世界的人気のカードゲーム『プチットモンスター』のバトル仲間だった。

渡辺君は世界大会にも出場するほど強く、カードを500枚所持するプチモンマニアだった。校内の『プチモンクラブ』の部長で、僕も部員だった。プチモンの知識をクイズで競い合ったり、カードバトルをするのだが、いつも渡辺君の圧勝だった。対戦の後はモンスター達に「いい仲間だ。ありがとな」と労い、勝てない僕にコレクションのレベルVのカードを「あげるよ」と差し出し、戦術のアドバイスもくれる。お陰で僕は学校以外の友達とのバトルでは最強になれた。そのお返しをしたかった。友達だから祟ったりしないと信じて。

一度下校してから交差点に戻り「渡辺君」と声を掛けた。渡辺君は「声を掛けないで下さい」の下で前を見つめていた。

「僕だよ。隣の席だった川本。覚えてる?」

すると「覚えてるよ。だって毎日見てるもん」と答えた。生前と同じ声。
同じ喋り方。口唇を少し尖らせる癖もそのまま。

「どうしてずっとここにいるの?なにか待ってるの?」

僕はスマホを見てるふりして渡辺君の横に並んだ。

「違うよ。見張ってるのさ」

「なにを?」

「佐藤先生」

顔を上げると、横断歩道の先にある校舎の二階の廊下の窓からこちらを見てる佐藤先生がいた。左分けの髪に黒縁の眼鏡。白いポロシャツ。その目線は渡辺君だけに注がれていた。

「先生、僕が事故に遭った時にすぐに駆けてきて、救急車呼んでくれたんだけど、その時に僕のプチモンの激レアカードを盗んだんだ。ネットで五千万で取り引きされてるから、いつもスニーカーの中敷きの下に隠してたんだけど、事故で脱げて飛び出しちゃったんだ。それを必死で掴んだ僕の手から先生は奪っていった。高値で売買されてるけど、あれは抽選で当たった20人しか持ってない。シリアルナンバーが付いてて僕の名で登録されてる。売るなら持ち主の登録変換が必要なるし、バトルで使用したくても僕の血が付着してるから人前に出せない。けど五千万を手放せなくてずっと持ってるんだ。前に同級生の子が取り返そうとしてくれたけど、逆に口封じで殺されてしまった。救急車が来る前にあいつが僕の息の根を止めたんだ。僕の親も躍起になってカードを探してる。金の亡者で、あいつらこそが本物のモンスターさ。僕は仲間が来るのをずっと待ってた。一緒に戦ってくれるよね?」

窓に立つ佐藤先生が顔を歪めて眼鏡をくっと上げた。「安全のため」はそういう意味だったのか…。僕もバトルさせられる。手足が冷えてゆく夕暮れ。ひゅうと風が吹き抜けて、頭上ののぼりがはためいた。

                        〈2000字〉

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 豆島圭さんのハッシュタグに参加させていただきました。
 2000字はわりと好きな文字数です。
 設定なしで現状だけをパキッと書けばいいだけなので楽しいです。
 書くときはいつも「~だったら」「かもしれない」の発想から始めます。
 横断歩道の向こう側に小学生の男の子が立っていた時に
 あの子が自分にだけ見えてる幽霊だったらとか、信号待ちの間退屈なので
 そういうことを考えていたのを文字数に当てはめて一本に仕上げます。
 あと夏はやっぱり怪談ですよね~👻
 ホラー映画大嫌いで絶対見ないのですが、怪談話は大好きなんですよ~✨
 五時間でも六時間でも聞いていたいぐらいです。
 ついでに怪談ではないですが、今まで聞いた中で印象に残ってるお話。

 エレベーターで異世界に行く方法知ってますか?それをお教えします。


10階以上ある建物のエレベーターで行います。

 1.まずエレベーターに乗る。乗るときは必ずひとりで。
 
2.次にエレベーターに乗ったまま、4階、2階、6階、2階、10階と移動する。(この際、誰かが乗ってきたら成功しない) 

3.10階についたら、降りずに5階を押す。

4.5階に着いたら若い女の人が乗ってくる。(その人には話しかけてはならない) 

5.乗ってきたら、1階を押す。

 6.押したらエレベーターは1階に降りず、10階に上がっていく。(上がっている途中に、違う階を押すと失敗する。ただしやめるなら、ここが最後のチャンス) 

7.9階を通り過ぎたら、ほぼ成功したといってもいいらしい。 
 

異世界に行ったら戻ってこれないので成功例は聞いたことがないのですが
4、が一番怖くないですか?女の人乗ってくるって。何者なの?ねえねえ。

もちろんエレベーターは不特定多数の方が利用するものなので
このような遊びは迷惑行為に当たるのでやってはいけません。
しかしたまに誰もいないな…と思うとつい4階を押したくなる。
この4のような「乗ってくるかもしれない」が創作の根元かもしれません。
ついでに異世界に行っても責任は取れませんのでご注意を。


面白そうだったのでつい寄せられてしまいました。
皆様の作品読みごたえあって震えます~((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
豆島圭様 宜しくお願いいたします。
素敵な企画をありがとうございました😊🐧


#今2000字で書けって言われたらどこからの発想で書き始めますか