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Your Star Will Shine|キャトルイルミネーション|毎週ショートショートnote

通勤の行き帰り、私は車でキャトルの下をいつも通る。
この夜も、駅前交差点の信号待ちで停まって、前方にキャトルの建屋が見えた。
どことなく、寂しそうだ。

名前が「キャトル」に変わったのは20年ほど前だが、駅近の商業施設として建ったのは、私が生まれた1980(昭和55)年だ。
それで勝手に、「同級生」みたいに、親しく思っていた。

私はずっとこの街にいる。
小さい頃から、キャトルへは親と一緒に買い物に来ていた。
高校生の頃は友達とアイスを食べたり、アクセサリーや服を見に訪れた。
看護師になり交代制で働くようになってからは、寝静まる街を車で通過し、駅前まで来てキャトルが見えると、なんかホッとした。
震災の時、勤務のない日で、ぐうぜんキャトルにいた。皆で最上階に逃げ、津波から逃れた。駐車場から外を見た。ものすごく寒かった、けど、キャトルに命を救ってもらったようにも思っている。

ずっと続いていた男性がいた。
夜、彼の住むアパートへ行き、キャトルまだ開いてるねって出かけ、鍋の具材を買ったりした。
今日と同じ時期、クリスマス直前の頃だった。
もしキャトルがイルミで装飾かざられて、輝いたら楽しいのにねぇってやりとりもしたっけ。
コロナ禍で、色々な理由で、別れてしまった。その後彼はこの街を出た。
そしてキャトルも、ある意味コロナ禍の犠牲で、廃業が決まった。
その入口は閉ざされ、チェーンが巻かれている。
後処理●●●のため市が買い取った、元商業施設。誰も訪れない建物。

信号が青に変わった。
(行かなければ)
アクセルを踏む前に、ふっと外を見た。

口をあんぐり開けて、ただその光景を見ていた。
背に工具をしょった巨大なおじいさん⸻和装だが、少しサンタみたい⸻が、キャトルに、いそいそとイルミネーションの飾り付けをしている。店前、大きなクリスマスツリーまである。
「ありがとう わすれないよ」の文字が輝いている。
深夜近くで車通りはなかったけれど、車道にいるわけにもいかないと左に寄せて停めた。
スマホを構え、おじいさんに何も言わず撮るのは違う気がしたので小声で
「撮りますね…」
とつぶやき、ボタンを押した。
おじいさんの作業は続いていたが、車で帰宅した。
少しだけ食べ、シャワーを浴び、ベッドに入り、スマホをいじる。
さっきの写真は、消えたりせず、ある。
SNSが騒ぎになっていないか見るが、何もなし。
自分で投稿したい誘惑にも駆られたが、やめた。
その代わり迷った末、元彼にLINEで「ひさしぶり、元気?」に続けて、メッセージと写真を送った。

翌朝またキャトルの前を通った。
昨夜見たようなことは、何ひとつ残っていない。
そんな気がしていた。少し笑った。
ぶいん、と、スマホから何かの通知のバイブ音が鳴った。

(本文1,122文字)


(2025.12.22  22時  追記)事情により、当初の画像から変更しました。


今回に限ってはセレクション狙いの気持ちはさっぱりなく(じゃあ、いつもは「ある」…ってコト?)、書けたこと、このお題をくださったたらはさんに、ただ感謝です。

岩手県宮古市に地縁がある者として、ぼく版の「ありがとう西武大津店」(宮島未奈さんの「女による女のためのR-18文学賞」の大賞受賞作。最初に触れたのがこちらだったので、『成瀬〜』ではなく敢えてこう書く)を書いて、見てきたキャトルに捧げられたつもりです。

文中で表現できませんでしたが、おじいさんはこの地にゆかりの深い「鞭牛上人」をイメージしてます。
近隣各地に道を切り拓きつづけた、地域の偉人です。
彼女も道を切り拓くのか。

物語BGMにはこの曲を。
アルバムの前曲「daybreak」の最後、イアンが「夢見る人のために、もう一曲」と歌ってこの曲がはじまる。その構成も、「あなたの星は輝く、ある日ふたたび」という優しい歌詞も大好きです。


田原にかさんの企画に参加しています。

アップ後追記、なんか嬉しい並び!☆

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