【私のこと】悲しくもないのに
私の目には、何かとトラブルがあります。
学生の頃、真冬のグランドで寒い日でした。野球部とラグビー部合同でサッカーをやっていました。突っ立って見ているだけでは耐えきれない寒さで、私もサッカーに参加していました。といっても、グランドの端っこのほうをボールの動きにあわせて走ってるだけなんですけど。その時、誰かが強く蹴ったボールが、振り向いて方向を変えようとした私の顔を直撃しました。ドロだらけのボールが右目に当たっていました。
身体が吹っ飛んで、仰向けに倒れて、少し気を失いました。皆で私を運び出そうとしているので、焦って、自分で起き上がりました。顔、右目の周辺が激しく痛んで、ハンカチを軽く当てて息を整えていました。顧問が来てくださり、様子を聞かれ、ハンカチを外して目を開けると、目はほとんど見えず、真っ黒な円の端だけ細く光の輪が見えました。すぐに眼科に連れて行ってもらい、入院しました。眼球内の出血が引くのに十日ほどかかり、眼底の様子がやっと分かりました。網膜が半分はがれて浮いていたそうです。上を向いて絶対安静。網膜は何とかもとに戻ってくれ、失明は免れました。視野がかなり狭くなっていましたが、次第に回復するだろうとの診断でした。最終的に、視野も視力も戻り、乱視が強くなりました。先生方に、このお転婆娘がっと叱られました。16歳でした。
以来、右目は疲れやすく、細密な絵を描いたりすると、翌日から視界が曇ったりするので、無理のないように気をつけてきました。右目は、心とは別に、よく涙ぐみました。特に、赤ん坊を見ると右目が勝手に泣いていました。不妊も長かったので、ひょっとしたら、私の母性は右目に宿っているのかと思ったほどです。
齢を取ったら、赤ん坊を見なくても、右目がダラダラ涙を零すようになりました。白内障と緑内障を発症して定期的に眼科受診をするようになっていました。利き目の左はどちらも軽症で、右目は深刻です。右目の視神経は半分が死滅し、中心部が助かっているためにそれほどの不自由は感じていません。数年前に、右目の白内障が急激に悪化して、手術を受けました。このお陰で、乱視が消えました。でも、涙はとめどなく流れ、先生に相談すると、ドライアイと。こんなにウエットなのに、ドライアイ……要するに、涙の調節機能が弱って、涙が止まらないのだとか。ドライアイ用の目薬まで増えました。
最近急に、左目の視界が曇ってきました。夏に白内障の手術を受けることが決まりました。友人たちは、それなのにレースなんか編んで!と呆れています。でも、眼科からは何の制限も出ていません。本も読むし、ネットからも離れられないし。
ドライアイであることを忘れて過ごしていると、また、右目が涙をこぼし始めます。悲しくもないのに。何かが心の琴線に触れると、すぐに右目からは涙があふれ始めます。やはり、右目には私の鈍い心の代わりに、感受性みたいなものがあるのかも?まさかね。
