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「矜持の女神」7.

「矜持の女神」7.

~Succession meeting Vol.1~

     後編


3階、大会議室。
定刻10:00開会。
社長の入室を待つ…。


ドアノブが廻る音

来た。

社長が入室。

と、同時に
身体の大きな大叔父の後ろを母といとこがニタニタ
しながら入室してくる。


…だから、
公式な場所での振る舞いを
身に付けようよ…カズヒロ


オマエ…知り合いだ、仲良しだ
アピールするんだったら、
壇上でも、舞台でも、
ついてくるのか?


ワンフロアーなら
感性が鈍るのか?


この平たいフロアーにも、
心の目を開いてよく見ろ!


不可侵領域が分からない
のか?

それを上座と云う、と思え!

本当にガッカリな男…


だいたい母は、どういう立場で此処へ来たんだろう?

株主?

なら8月9日の第2回目の会議
ですよ、出席するのは。


いや、気を取られるのは
止めよう。


だいたい社長室から直の
ドアを通ってはイケナイ。


定刻前に社長室から廊下に
出て、一般向けのドアから
入りなさいよ…きちんと
ケジメをつけなさい。


みんな、そういうところを
見てるものよ


「この人物は会社を私物化
 しやしないか?」

「公私混同か?」


出席者が揃ったので、
ワタクシは司会進行を始める…


開会の口上、

議題、

資料配布、

後継者の資質、

後継者の心構え、

KPI方式資料配布と説明、

最終判断の期限、


…今朝、心に懸かる不安が払拭
されたおかげで、
調子が良いわ。


一項目ごとに
いとこが勉強不足ゆえの質疑
を投げてくる…


質問してもイイけど、
よく考えなさい。

その質疑のレベルが自分の
レベルだと開示してるのよ?


今のご時世ググれば勉強
できるんだから。


その後も項目を述べ、
こちら側の提案、
誰に代表権を託すかを述べ、
意外に思われた方々は
どよめき、
さもありなん、な方々は
拍手で賛同を示し、

いよいよワタクシが
なにを守り、なにを遺すのか
を申し上げる時を迎えた。


4月下旬、ワタクシはトオルに
後継問題について投げかけた
ことがある。

トオルは境界を踏み越えない
ように洗練された感性で見事
な見解を述べた。

その話の中には父の急逝にも
初めて触れていた…
でもトオルは敢えて心象には
触れず、完璧に
ワタクシが受け答えて欲しい
レイヤーで話してくれた。

その心地よさ…はじめてヒトに
相談して良かった、と
思えた。


トオルも言っていた
「なにを守り、
 なにを遺すのか」


ワタクシは
「祖父は、建立した神社や関係仏閣が語り継いでくれるでしょう。

父は、この会社と共に育成した職人さん方の中に遺っていくでしょう。

だからこそ、ワタクシは雇用を守り職人を遺していきたい!と考えます。」


ヒトクチにそう言っても、技能組とユニット組とか色々あるのだが、それはまた別のお話…。


同じ項目でカズヒロにも平等に発言を求める。

それは司会進行として、だ。

ところがカズヒロは、顔が赤らんで震えている。


…え?怒り?


こういう質疑回すから、
考えときなさいよーッて
先週教えたじゃん(泣)


騙し討ちみたいにならない
ように。


モゴモゴで終わるカズヒロ。

歯を食い縛る母。

…まずい!

まさかここでは口撃しないわよね?

仮にも初代社長の奥様、なんだから。


もう11:50だわ…
母が噴火する前に閉めよう。


「次回、第2回目の会議は
8月9日です。」

終了、終了。

ツヨシくん、皆さんを早急に会議室から出して!っと
目配せする。


母が立ってこちらに来た!


「またカズヒロちゃんに
 恥かかせたわね!?」


バーンッ


…なに?

何が起こった?

頬を張られた、のは分かった

でも、何で血が…?


「いやいや、カヨちゃん、
 しおりはちゃんと俺に
 教えてはくれてた…」

「そんな庇わなくてイイのよ
 カズヒロちゃん」


まだ廊下にヒトがいる!

この場で、コレは、スキャンダルやんか…!


ツヨシくんに


「内線で離れのタケちゃんに
救急箱持ってこっち来て、
って伝えて!

つばの大きな帽子も、
シルクスカーフも持って来て
って!」


「カズヒロ!母の指輪
 全部外して!
 ワタクシの血が着いてない
 ように拭き取って!」


あっ、ヤバ…母とタケちゃんは
犬猿の仲だった。

平成初期に
育児放棄三昧だった母、
代わりにワタクシのオムツを
全て替え、ミルクを3時間置き
に飲ませてくれたタケちゃん…


指輪の当たりが悪かった

あんなメリケンサックみたいな指輪、どこで手に入れたのよ…


アクセサリーは細いほうが
品があるのに…


母もそんなつもりはなかったのは分かってる…

ただ想定が出来ないだけ、ね

お母さま…


タケちゃんが消毒しテープを傷口に張りながら

「まあ!一体誰がこんなこと
 を?」

…もういい、もういい。

もういいから…


母といとこに、くれぐれも他言無用を諭す。

アの発音と
イの発音と
エの発音が頬っぺた痛い…
こりゃ当分
イタリア歌曲歌えないなあ…(泣)


名古屋2人を帰す…

母と目が合ったので

「…大丈夫ですよ。」
と言っておく。

じゃないと、
あっちもこっちも
火の気がするから。


母は、無言だった。


愛情もかけない、
声も、かけない…か。ふ…


なぜか笑いが出る…壊れたか?
まさかね。
緊張が解けたんだろう
これでまた、強い、とか
騒がれたらやだな


ワタクシの中の「しおり」はショボンとしちゃうわよ。
強いだなんて。


まあ、でも会議でケガ
しちゃって

テルオに一応報告しなきゃ
なんないけど、


気が重い…


トオルには心配かけたくない
から
この潜航中に頬っぺた
治りますように…。


なんか名古屋2人がいると

いつもドタバタね…

会議が終わっといて
ソコだけは良かったわ…


後はツヨシくんとモリさんに頼んで

一度タケちゃんを離れに送る…


「さあ、タケちゃん。
 帰ろう…シロクロの所へ」



2026.06.09
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