食べない子が、たい焼きで覚醒した日

転勤で引っ越してきたのは、こどもが一歳三ヶ月のとき。

離乳食はうまくいかず、まだ母乳をあげていた記憶がある。
とにかく食べない子だった。

(あとで思えば、母乳をやめればよかったのかもしれない。でもそのときは、そんな余裕はなかった。)

引っ越し直後、段ボールに囲まれた生活の中で、私は一時保育を利用した。
荷解きという名の、終わりの見えない作業のために。

迎えに行って、おたより帳(一日の様子)をひらく。

昼食は中華丼。
口元まで持っていくと、プイッと横を向いてしまいました。

……知ってる。
それ、家でも毎回見てるやつ。

おやつはおせんべい。
少し食べました。

……少し。

荷解きでヘロヘロのまま帰宅。

そのとき。

マンションのエレベーターで、ご高齢の婦人に声をかけられた。

「かわいいわねぇ。これあげるね」

手には、たい焼き。

「あんことクリーム、どっちがいいかしらね」

まだ一歳のわが子に 、ちゃんと聞いてくださった。(なお本人は選んでいない)

家に帰ると、奇跡が起きた。

あんなに食べなかった子が。
あんなにプイッとしていた子が。

たい焼き、食べた。

しかも普通に。
前のめりで。

たぶん、味とか栄養とかじゃない。

知らない人からのやさしさとか、急に一時保育に預けられたこととか、いろんなものが一緒に重なっていたんだと思う。

ちなみにこの出来事、こどもは覚えていない。

……それはそれとして。

中華丼、私が食べたかった。

ご覧くださりありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集