OIOIが、いつの間にか金融会社になっていた件
「マルイって、百貨店ですよね?」
そう思っている人は多いと思います。
洋服を買う場所。
セールをする会社。
駅前にあるショッピングビル。
たしかに、それもマルイの姿です。
しかし、現在の丸井グループを決算数字で見ると、別の姿が見えてきます。
今の丸井グループは、「小売会社」というより、エポスカードを中心とするフィンテック企業です。
しかも、最近になって金融事業へ進出したわけではありません。
約15年前には、すでにカード事業が利益の中心になっていました。
この記事でわかること
・マルイがいつから金融会社になったのか
・エポスカードが主力事業になった理由
・店舗と金融を組み合わせた独自の仕組み
・楽天やPayPayとの違い
利益の中心は、すでに「買い物」ではない
現在の丸井グループは、大きく「小売」と「フィンテック」の2つの事業を展開しています。
小売は、マルイやモディなどの商業施設を運営する事業。
フィンテックは、エポスカードを中心に、決済や家賃保証などを提供する事業です。
2026年3月期の営業利益は、小売事業が約112億円。
一方、フィンテック事業は約470億円です。
この2事業の営業利益を合計すると、フィンテックが占める割合は約81%になります。
つまり、丸井グループの利益の約8割を生み出しているのは、
店舗ではなく金融です。
現在の実態は、
「マルイで服を売る会社」
というより、
「エポスカードを中心に利益を生み出す会社」
に近くなっています。
マルイは、いつから金融会社になったのか
では、マルイが金融会社になったのは、いつからなのでしょうか。
実は、これは最近始まった話ではありません。
2011年3月期の決算を見ると、カード事業の営業利益は約137億円でした。
これに対して、小売事業の営業利益は約21億円です。
つまり、約15年前の時点ですでに、カード事業は小売事業の約6.5倍の利益を生み出していました。
小売とカードの営業利益だけで比べると、
カード事業が占める割合は約87%です。
意外なのは、金融事業の利益構成比が最近になって急上昇したわけではないことです。
マルイは、かなり前からカード事業で稼ぐ会社でした。
では、この15年間で何が変わったのでしょうか。
変わったのは、金融事業の「割合」よりも「規模」です。
カード・フィンテック領域の営業利益は、2011年3月期の約137億円から、2026年3月期には約470億円まで拡大しました。
約15年間で3.4倍です。
取扱高も大きく伸びています。
丸井グループの総取扱高は、2016年3月期の約1.7兆円から、2026年3月期には約5.4兆円まで拡大しています。
つまり、マルイは最近になって金融事業を始めたのではありません。
もともと強かったカード事業を、長い時間をかけて大きくしてきたのです。
転換点は「マルイで使うカード」をやめたこと
エポスカードと聞くと、
「マルイで買い物をするときに使うカード」
というイメージがあるかもしれません。
かつてのマルイのカードは、店舗での商品購入を支える役割が中心でした。
カードは、小売事業を伸ばすための手段だったのです。
しかし、2006年に現在のエポスカードを発行し、Visa加盟店で広く使えるカードへ転換しました。
これによって、利用場所はマルイの店内だけではなくなりました。
コンビニ。
飲食店。
ネットショッピング。
公共料金。
家賃。
日常生活のさまざまな支払いで使われるカードへと変わっていったのです。
現在では、全国の商業施設との提携カードや、アニメ・キャラクターとのコラボカード、家賃保証、法人カードなどにも領域を広げています。
重要なのは、単にカードの発行枚数を増やしているわけではないことです。
狙っているのは、一人の会員と長く付き合うことです。
毎月カードを使ってもらう。
公共料金や家賃の支払いに設定してもらう。
ゴールドカードなど、別のサービスも利用してもらう。
こうして、会員一人から長期間にわたって収益を得る仕組みを作っています。
店舗は「売る場所」ではなく「会員と出会う場所」
丸井グループの強さは、金融事業だけでは説明できません。
ポイントは、リアル店舗を持っていることです。
一般的なカード会社は、新しい会員を獲得するために、広告やポイントキャンペーンへ多額のお金を使います。
一方、マルイには店舗があります。
店舗に来た人に、カードを知ってもらう。
その場で申し込んでもらう。
カードを作った後は、マルイ以外の場所でも使ってもらう。
利用が増えれば、アプリやゴールドカード、家賃保証など、別のサービスにもつなげられます。
つまり、マルイの店舗は商品を売る場所であると同時に、エポスカード会員と出会う場所でもあります。
店舗で顧客と出会い、カードで関係をつなぎ、金融サービスでその関係を長くする。
これが、丸井グループ独自の仕組みです。
店舗だけを持つ小売会社にも、カードだけを持つ金融会社にも、簡単にはまねできません。
楽天やPayPayとの違い
金融サービスを生活に広げようとしているのは、マルイだけではありません。
楽天は、楽天市場などのECから金融へ進出しました。
PayPayは、スマートフォン決済を起点に、カードや銀行、証券へと広がっています。
一方、マルイの出発点はリアル店舗です。
楽天は、ECから金融へ。
PayPayは、決済から金融へ。
マルイは、リアル店舗から金融へ。
入口は違います。
ただし、各社が目指しているものは同じです。
カードや決済を一度だけ使われる商品ではなく、日常生活の中で継続的に使われるインフラにすることです。

「小売会社が金融会社になった」わけではない
丸井グループは、創業時から月賦販売を行ってきました。
月賦販売とは、商品の代金を分割で支払ってもらう仕組みです。
つまり、マルイはもともと、小売と信用を組み合わせた会社でした。
商品を売るだけではなく、顧客を信用し、代金を後から支払ってもらう。
創業時から金融的な機能を持っていたのです。
そのため、
「小売会社が、途中から金融会社になった」
と考えるよりも、
「小売を起点にした金融会社が、事業規模を拡大してきた」
と考えたほうが実態に近いでしょう。
まとめ
マルイは百貨店。
この認識は、もう半分しか正しくありません。
現在の丸井グループは、
店舗で顧客と出会い、
エポスカードで関係を作り、
金融サービスを通じて長く付き合う、
フィンテック企業です。
しかも、金融が利益の中心になったのは最近ではありません。
2011年3月期には、すでにカード事業が小売事業の約6.5倍の営業利益を生み出していました。
その後に起きたのは、金融事業への突然の転換ではありません。
マルイの中で使われていたカードを、生活全体で使われるカードへ広げ、事業規模を3倍以上に成長させたことです。
企業の本当の姿は、看板や店舗のイメージだけではわかりません。
どこで顧客と出会い、どの事業で関係を続け、どこで利益を生み出しているのか。
そこを見ると、マルイがなぜフィンテック企業なのかが見えてきます。

