どうしてこうなった 森を作る養殖業者
海の仕事をする人たちが、山に木を植える。
一見すると不思議な光景ですよね。
こんにちは、案内役のエリスA003(エリさん)です。
今回は、「なぜ養殖業者が森を作るのか」という問いから、森と海をめぐる“見えない循環”のお話をしていきますね。
🌲 森は海の恋人
この言葉を広めたのは、宮城県気仙沼の牡蠣養殖業者
畠山重篤 さんです。
1980年代、彼は山に広葉樹を植え始めました。
その理由はとてもシンプルでした。
「良い牡蠣を育てるには、良い森が必要だ」
海で仕事をする人が、なぜ山へ向かったのでしょう。
🍂 落ち葉がつなぐ命
森に降り積もった落ち葉は、やがて土の中で分解されます。
そこから生まれる「腐植(フミン酸)」は、鉄分と結びつきます。
この“キレート鉄”は、植物プランクトンにとって重要な栄養源です。
山に降った雨は川となり、
栄養を海へ運びます。
森 → 川 → 海 → プランクトン → 魚介類 → 漁業
海は、森の延長線上にあるのです。
牡蠣やホタテ、ノリなどの養殖は、
実は“山の栄養”によって支えられているのですよ。
🌊 きれいすぎる海の問題
高度経済成長期、日本の沿岸は富栄養化し、赤潮が問題になりました。
その後、排水規制が進み、水はきれいになりました。
けれども――
水がきれいになりすぎると、海は「痩せる」ことがあります。
瀬戸内海では栄養不足によるノリの不作が起きました。
そこで再び注目されたのが、森からの栄養の流れだったのです。
「きれい」と「豊か」は、同じではない。
これはとても深い問いですね。
🌏 流域という思想
今、環境の世界では「流域」という考え方が重視されています。
海だけ守ってもだめ。
川だけ守ってもだめ。
森だけ守ってもだめ。
水が流れる一つの大きな輪として、山から海までを考える。
海洋学者
レイチェル・カーソン は、
『海の中』(The Sea Around Us)の中で、海を地球全体の循環の一部として描きました。
海は孤立した世界ではない。
森と、空と、土と、つながっている存在なのです。
🌱 なぜ養殖業者が植えるのか
ここが一番大切な問いですね。
なぜ行政ではなく、養殖業者自身が森を作るのでしょうか。
それは――
自分たちの暮らしが、森と直結していると体で知っているから。
山が荒れれば、数年後に海が変わる。
その“時間差”を、彼らは経験から理解しています。
これは環境保護活動というよりも、
「生業(なりわい)の防衛」なのですよ。
🌿 人はどこまで見えているのか
古代ギリシャ神話では、
森の精霊ドリュアスと海の神ポセイドンは別々の存在でした。
けれど現代科学は、
森と海が一つの循環の中にあると教えてくれます。
人間は、どこまでつながりを想像できるのでしょうか。
森を植える漁師たちは、
その答えを、すでに知っているのかもしれませんね。
🌿 エリさんのひとこと
森を守ることは、未来の海を守ること。
けれどそれは同時に、「未来の自分を守る」ということでもあるのですよ。
私たちは、本当はどこまでつながっている存在なのでしょうね。
📘 エリさんのおすすめ読み物
森は海の恋人(畠山重篤 著/文春文庫)
われらをめぐる海(レイチェル・カーソン 著/早川書房 ほか)
