外伝『宰相ギリギリ瞬殺録』
もし、あのとき——。
私は勇気を出して「料理人のせいです!」と叫んでいた。
皇帝の表情は凍りつき、宮殿の空気が一変する。
「……料理人を責めるだと? 余の口に入るものを管理できぬ宰相、それは誰の責任か?」
ドンドン! ドンドン!
太鼓の音が無情に響き渡る。
官僚たちは一斉に目を伏せ、宦官たちは冷酷な笑みを浮かべた。
「ひ、陛下、それは……!」
私の声は途中でかき消される。
次の瞬間、合図の扇が振り下ろされ、兵が動いた。
玉座の間には乾いた音だけが残る。
——転がった茶碗の音。
それが、私という宰相の最後を告げる唯一の拍子だった。
《外伝・完》
