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歌川広重 / メトロポリタン美術館
老いてなおさら華々しく在る物語りたち:その7「中華料理小説 満漢全席」

「中華料理小説 満漢全席」
南條竹則(集英社文庫) 1998年
世界三大料理といえばフランス料理にトルコ料理に中華料理。
フランスがイタリアになったりトルコに疑問を感じる人があったとしても、中華料理は万民が認めるところであるらしい。
たしかに世界中あらゆる街角に、大なり小なり中華料理のお店があるのもうなずける。
机以外(正確には、椅子や机という家具という意味らしい)のものなら「足」のあるものは何でも食べてしまうといわれた人たちならでは、究極の食の楽しみというのはこの世のありとあらゆるものを胃中に納めてしまおうということのようだ。それを実感するのがこのタイトルの通り「中華料理小説」というにふさわしいこの物語。
こちらで饗されるメニューは、麺あり老酒あり餃子ありトンポーロありもちろんデザートありと、なんとも食欲を誘う盛りだくさんの内容である。象の足や駱駝のこぶと云った摩訶不思議な食材も登場する。お味の具合もなんとも微妙。
小説冒頭の「東瀛の客」という話は、まさに満漢全席を食べに中国へと行く話(文学賞受賞の賞金を当て込んで、という嘘のような実際の話のような不思議な筋立てが絶妙である)だが、そのほかすべてひっくるめて小説のタイトルを「満漢全席」としたところに、著者の洒落ッ気を感じさせてくれる。
中華料理が好きな方もそうでない方もご一読召されたし。
著者の摩訶不思議な書きぶりにあれよあれよと翻弄され、あっという間に腹いっぱいになること請け合いである。
さて、食欲無くして何の楽しみ有ろうか・・・衰えた我が身を悼む今日この頃。せめて想いの中だけでも芳醇な味わいを繰り返し呼び起こすものなり。
