バウハウス出身女性写真家が記録したデザイン運動の形成過程 | Kunsthalle praha「Lucia Moholy : Exposures」
プラハ市内の中心部にある美術館「Kunsthalle praha」に訪問。ゼンガー変電所の跡地に2022年オープンした新しい現代美術館。特に何の事前調べもなく、訪問したのだが大学院の講義で取り上げられたバウハウスに関連した内容で良い学習になった。写真に関連している内容だったり、アーカイブされた資料の量も充実しており、見応えのある内容だったので、記録する。

ルーシー・モホリの初の大規模回顧展『Exposures』
『Exposures』は、プラハ生まれの写真家でコラムニストのルーシー・モホラ(1894~1989)の初の大規模回顧展。この展覧会では、20世紀後半から1970年代までの彼女のキャリア全体が網羅され、600点以上の写真、マイクロフィルム、手紙、記事、書籍、音声録音が展示される予定である。それらの多くは初めて一般公開される。これは、影響力のあるバウハウスデザイン学校やロンドンで撮影された彼女の最も有名な写真を、トルコでの情報科学者としての活動やチューリッヒアートシーンの中心での彼女の作品とともに紹介する最初のプロジェクトである。
バウハウスは、1919年から1933年までの間に、ドイツのワイマールで始まった影響力のある芸術とデザインの運動です。バウハウスは、個人の芸術性と大量生産・機能性を融合させ、あらゆる芸術的媒体を一つの統一的なアプローチで融合させることを目指しました。
ざっとした彼女のキャリアとして、ルチア・モホーリは、ドイツ系ユダヤ人の家庭で育ち、第一次世界大戦中にドイツに移住し、そこで出版に携わる。社会的に変容している激動の時代に、著名なハンガリー人芸術家ラースル・モホリ=ナジと出会い結婚。二人は視覚、文字、音声の再現方法を共同で研究し始め、雑誌『デ・ステイル』にエッセイ『Pruduce-Reproduce(生産-複製)』を寄稿した。

その後、1920 年代半ばから、ルチア・モホーリは ワイマールのバウハウスで、その後デッサウの学校の新しいキャンパスで写真を撮影した。そのフォトコレクションは、ルーシー・モホラの個人的および職業的コミュニティの視覚的な物語を伝えている。また、アーツアンドクラフツ運動の影響を受け、台頭したバウハウスにおける芸術・デザイン運動の形成過程を鮮明に記録している。合理主義・機能主義・表現主義的なバウハウスの運動が芸術・デザイン実験を経ている過程を覗き込めることは、資料的な価値が高い。


おそらく、その結果として、一般の人々もバウハウスの役割と重要性をどのように認識するかにおいて重要な役割を果たしたのだろう。
自然から見つけ出した合理性
彼女のバウハウス時代の写真を見る中で気づいたことは、植物の標本や学生の身体行為を記録した写真が多いということ。ある種、バウハウスのデザイン運動が自然や身体への観察から始まったのは、必然だったように思える。目指していたのは、芸術性と実用性の調和。そこに行きつくために、最初に目を向けるべきはやはり自然と身体だったのだろう。


植物の構造には、形と機能が一体化した合理性が見られる。バウハウスのデザインにおいても、シンプルで実用的、そして効率的な形状が追求された。自然の持つ秩序やシステムを模倣しつつ、デザインを構築していくという考え方が根底にあったのだろうか。幾何学的な模様の追求も、自然探究への結果としてたどり着いた結論なのかもしれない。自然界には、幾何学的なパターンや反復性、対称性など、バウハウスが目指したデザインの「単純さと秩序」が多く存在していた。自然の合理性には無駄がないけれど、美しさには余白が響く。


自然と身体との対話
身体との関係も同じかもしれない。デザインされたモノは、私たちの手で触れ、身体で使うものだ。バウハウスは、物と人との間に流れる無言の対話を大事にしていたのではないか。人が使うことを前提にしたデザイン、それが彼らの理念の核につながるだろう。手を動かし、素材に触れ、ものを作る。その過程で、例えば木が持つ温かみや鉄の冷たさ、ガラスの脆さを体感する。自然の力を手で感じることで、デザインの本質に触れ、それが作品に反映される。そんな教育を大事にしていたことが、彼女の写真から感じられた。


写真家としてのルチアの再評価
ちなみに、ルーシー・モホリ自身の写真家としての評価は今までそれほど高くはなかった。それは、バウハウスにおける公式な位置づけが他の男性アーティストに比べて影が薄かったことや、ナチスによるバウハウスの崩壊と戦争の影響で、多くの彼女のネガは散逸し、一部は他のアーティストにクレジットで発表されたことが影響しているようだ。近年になり彼女の独自の芸術的視点と功績が再評価され、彼女の作品はバウハウスの記録写真家としてだけでなく、前衛的な女性写真家としても認識されつつある模様。今回の展示内容もバウハウスに限らず、彼女が旅して撮影してきた写真が多く展示されていた。ユーゴスラヴィアなどにも出向いていたようだ。



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