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【episode4-2】 靴の劣化②


靴は『大切に保管しておく』ほど、思わぬ劣化が起きやすいんです。



見つけてくれてありがとうございます。
元シューフィッターのRueです。

靴店で働いていた経験とシューフィッターとして得た知識を元にこのシリーズを書いています。



今回の「足と靴のいい関係」は・・・

前回の続編
『靴の劣化』についてです。



前回は、靴のアッパーに使われる素材の劣化についてお話ししました。

今回は、大きく2つのテーマに分けてお伝えします。
・靴のソール(靴底)に使われている主な素材の特徴
・劣化の見分け方と、見分けられることで避けられること

劣化について知っておくことで
「知らないまま損をしてしまう」
状況を避けられるかもしれません。

少しでも気になったら、ぜひ最後までお付き合いくださいね。





靴底の仕組み


まず、靴底は大きく分けると2つの層で出来ています。
・クッションになる『ミッドソール』
・地面に触れる部分『アウトソール』

この構造を前提に続けますね。


その前に―――

ソールはアッパーと違って、すり減ったり、潰れたり、歪んだりと、
どうしても消耗していく部分です。
だから今回は「どう対処するか」よりも、
素材ごとにどんなふうに劣化していくのか、そして修理が可能なものなのか、それとも実質的に履き潰しになるのか──

その見極め方に目を向けていただけたらと思います。


それでは、素材の解説に進みますね。



靴底(ソール)に使われている素材

靴底にはどんな素材が使われているでしょう。

細かく分けて7種類です。
① ラバー(合成ゴム) 
② 発泡ラバー
③ EVA(エチレン酢酸ビニル)
④ TPU(熱可塑性ポリウレタン)
⑤ PU(ポリウレタン)
⑥ PVC(塩化ビニル)
⑦ 天然皮革

それぞれの素材について解説していきますね。

① ラバー(合成ゴム)
ラバー(ゴム底)は、滑りにくくて長持ちする素材です。
ラバーだけの靴底もありますが、それ以外、ほとんどの靴のアウトソールに使われています。
擦り減りに強く、突然壊れる心配もありません。

ただし、紫外線・高温で劣化するので、
日光で硬くなったり、ひび割れが出ることがあります。

保管環境を気をつけていれば、10年以上保管していても大きな変化はありません。


②発砲ラバー

発泡ラバーは、ゴムに空気を含ませて軽くした素材です。
ラバーより軽く、EVAよりも滑りにくいのが特徴です。
スニーカーのアウトソールによく使われます。

ただし、普通のラバーよりは擦り減りやすく、耐久性は中くらいです。
軽さと滑りにくさのバランスを取った素材です。


③ EVA(エチレン酢酸ビニル)

EVAは、とても軽くて柔らかいクッション素材です。
『軽量シューズ』と謳われているものの大半のミッドソールに使われています。
圧縮されたスポンジのような見た目です。
経年劣化で、気泡構造が徐々に潰れていき、クッションが弱くなり固くなるのが特徴です。

ただ日常履きにしている種類に多く使われているので、履いているうちに潰れていき‪‪ ‪「よく履いてたから潰れてきた」と、勘違いされることも・・・
『経年劣化』なので、履いていると潰れが早く進みますが、履かなくても少しづつ潰れて固くなります。
劣化が見た目で分かりやすい素材です。

④ TPU(熱可塑性ポリウレタン)

TPUは、硬めで弾力のある丈夫な素材です。
EVAより反発力が強く、PUのように加水分解で壊れることもありません。
擦り減りにくく形が崩れにくいため、ミッドソールの他に、スポーツシューズの補強や反発パーツによく使われます。
スニーカーのヒールに内蔵されている透明パーツもそうです。

劣化もほとんどなく、強いていえば固くなってくるくらい。
『反発と耐久のための素材』
ですが、これ自体は滑りやすいので、アウトソールに使われることはほとんどありません。


⑤ PU(ポリウレタン)

PU(ポリウレタン)は、軽くて柔らかいクッション素材です。
スニーカーだけでなく、コンフォートシューズなどクッション性の高いシューズのミッドソールにもよく使われます。

履き心地は良いですが、湿気に弱く、時間が経つと加水分解で崩れることがあります。
数年経つと、見た目がきれいでも突然ボロボロになることがあるため、長期保管には向きません。

※episode4-1の冒頭に登場したお客様の靴に使われていたのは、この『PU』です。

⑥ PVC(塩化ビニル)

PVC(ポリ塩化ビニル)は、水に強くて丈夫な合成素材です。安価。
加水分解せず、汚れにも強いため、レインブーツなどによく使われます。

インジェクション製法で本体と底を一体化で作り、完全防水にできる素材です。
ただし質感はやや硬めで、低温や経年で硬化してひび割れることがあります。

まれにパンプスのリフトに使われていることがありますが、滑ります。

⑦ 革底(天然皮革)

革底(天然皮革のソール)は、通気性がよく足になじむ高級素材です。
履き始めは滑りやすいですが、使うほど傷がついてグリップが増え、足に合わせて柔らかく育ちます。

ただし雨に弱く、濡れると硬化や変形が起きやすいため、天気を選んで履く必要があります。


『加水分解』について

ここまででよく出てきた加水分解について少しお話しますね。
加水分解は、空気中の湿気と素材がゆっくり反応して、内部から崩れていく現象です。

見た目がきれいでも、触るとベタついたり、突然割れたりします。
PU(ポリウレタン)で特に起きやすい劣化です。

水に触れる触れないではなく、空気中の湿気と化学反応を起こす現象なので、完全に防ぐことは難しいです。


以上が、素材の解説です。


靴底の構造

  〈 靴底に使われている素材は一種類ではない!〉

では、この素材がどのようにソールに使われているのか。

一般的なスニーカーを例にあげて進めますね。

下の図をご覧ください。

スニーカーのソール参考図


一時ランニングシューズでよく見かけた、
エアクッションが内蔵されているタイプのソールです。

細かいことをいえば、スポーツ用のシューズはもっとパーツが細分化されていますが、今回は『外から見てわかるパーツ』だけにしました。

図のソールは、ミッドソールにクッション性の高いPUを全体的に使用されていて、衝撃を受けやすいヒール部分には、反発性のあるTPUのエアクッションを内蔵しています。
構造は空気がクッションで、TPUはその空気を包む容器です。

アウトソールには、ラバーを使っていますね。



このように、たいていのスニーカー(靴)は少なくとも2種類以上の素材を組み合わせて使われています。

さて、時間が経つとどのように変化していくでしょう。

このソールのスニーカーでいうと―――

日常使いしていると、まずすり減っていくのは、アウトソールのラバーです。

ですが、もし
「人気があって、レアだから履くのもったいない!コレクションとして保管しておこう!」
と、10年近く保管しておいたとしたら、どうなると思います?

そうです。

長期保管で劇的に劣化するのは、ミッドソールに使われている、PUだけなんです。


  〈 気をつけるべきはPU(ポリウレタン) 〉

10年ほど経ち、人気が落ち着いて
「もういいかな?」と履き出したら、
ミッドソールがボロボロと崩れてまともに履けなかった──

そんな話を聞いたことがある方もいるかもしれません。

この例え話は、90年代に一世を風靡した NIKE のエアマックスのことです。


 〈新素材が生んだ新しいトラブル〉

PUが靴に使われ始めたのは70年代ですが、日本で一般的に見られるようになったのは90年代になってからです。

当時はまだ、PUミッドソールの経年劣化について、靴業界に携わっていても知らない人の方が多かったです。
私もそうです。
「PU底は時間が経つと崩壊する」
という事実は本当に衝撃的でした。

それまでの靴底は革底かラバーが中心で、
すり減る・へたる・割れるといった
“使用中の劣化” がほとんど。

そして、日本の気候とも相性が悪かった。
日本は湿度が高い時期が長く、夏は特に“高温多湿”になります。
この環境は、PU(ポリウレタン)の加水分解が進みやすい条件です。


まさか保管中に劣化し、履いたら粉々に崩れる素材なんて、誰も想定していなかったんです。

だから、エアマックスの件はまさに
『新素材が生んだ新しいトラブル』
でした。

あれから20年以上経ちましたが、
PUミッドソールの経年劣化は、現代の技術でも避けられないそうです。

本当に加水分解を避けたければ、美術館レベルで保管しなくてはいけない。
それは、現実的ではありません。

その経験からか、
今のスニーカーコレクターは素材の特性を理解して、ローテーションしながら “たまに履いて長く楽しむ” 人が多いですね。

保管しておくメリットがないからです。

もし、たくさんスニーカーを持っていて、
「もったいなくて履けない」
と思っているスニーカーがあったら──

どうか履いてください。
履いて、楽しんでください。


もちろん、スニーカーだけに限定されるものじゃありません。
意外と見逃されているのが
『革靴(合皮も)』です。

  〈 見逃されがちなビジネスシューズ 〉

PU底は、スニーカーだけに使われている訳ではありません。

男女問わず
『歩きやすさ、クッションの良さ』を
ウリにしている革靴などファッションシューズにも、使われています。



一般的な軽量ビジネスシューズ参考図


例えば、図のようなタイプの靴。
一日中歩くお仕事でも、PUミッドソールが衝撃を吸収して疲れにくい──

そんな “お仕事応援シューズ” として作られているものです。

でも、見た目はどうでしょう。
ブラックフォーマルにも履けそうなくらい、普通の革靴に見えます。

しかも、足を入れたときのあたりが柔らかくて心地いい。
さらに、価格帯も手頃なものが多い。

だから、冠婚葬祭用として選ばれる方も少なくありません。

昨今は、普段から革靴を履かない方も増えました。

ですが、
靴店では正直なところ
「5年・10年先の状態」
までは想定して販売していませんし、そこまで説明されることも少ないでしょう。


その結果──
長期保管して、いざ出番が来たときには劣化が進んでいて、履いた瞬間に崩れてしまうのです。

まさに、前回冒頭に登場したあのお客様のように。


女性もしかりです。

ウエッジソールの参考図


図は、ヒールがやや高めの参考図ですが
『歩きやすいパンプス』の一例です。

やはり “お仕事応援シューズ” の部類に入りますが、見た目ではブラックフォーマルでも通る印象ですよね。

最近では、女性も
「正装にこだわるより、履きやすさを選ぶ」
方が増えています。

でも、黒いパンプスやカッターシューズの中には、図のようにPU素材が使われているタイプもあり、長期保管には向きません。

PUは、安価な靴に使われやすいのではなく、むしろ、高価な靴でも『履き心地をよくする』ために採用されていることがあります。

それだけ、PUは優れたクッション性があるということです。


どちらにしても、
製造者側は、足に負担をかけないビジネスシューズやパンプスを目指し
"スニーカーのように毎日気軽に履いてほしい靴”
として設計しています。


足あたりが良く、歩き心地を重視し、毎日でも履ける構造──

つまり、長期保管は想定されていないのです。



〈 PU底は修理できない 〉

そして、残念ながら "修理" はできません。

とはいえ、製法によっては
『オールソール張り替え』ができる場合もあります。

必要であれば、購入した靴店に相談してみると良いと思います。

単純な判断として、ソールの修理は・・・
スニーカーは "修理不可"
革靴の類は "修理要相談"
と言った所でしょうか。

以上のことから、ソールに一部でもPUが使われていたら、長期保管せずに "履いてあげる" ことをおすすめします。



一旦整理

ここまで、素材の話とソールの仕組みをお話ししましたが、なんとなくでもイメージしていただけたでしょうか?

ここで一度、ポイントを整理してみますね。


  • ソールに使われている素材は、大きく分けて7種類ある

  • ソールは1つの素材だけで作られているのではなく、複数の素材を組み合わせて作られている(ざっくり分けると、ミッドソールとアウトソール)

  • ソールの劣化は「すり減り」や「歪み」だけではない

  • ソールの一部分にPUが使われているだけでも、加水分解で崩れる可能性がある

  • ソールにPUが使われている靴は、長期保管より “履いてあげる” 方が良い


さて、これを踏まえてここからは
『見分け方』です。


劣化の見分け方

〈〈 素材の見分け方 〉〉

ここまで素材の特徴と劣化の仕組みをお話ししてきましたが
「じゃあ、まずどうやって素材を見分ければいいの?」
という疑問が出てくると思います。

ここからは、お店でも家でもできる“簡単な見分け方”をお伝えしますね。

まずは、自分が持っている靴で試してみてください。

いちばん簡単なのは、
「押してみる」ことです。
見た目で「ゴムっぽい」「革っぽい」
という直感は、実はかなり当たっています。

・ツヤがあり、弾力がある → PU・TPU
・圧縮したスポンジのよう → EVA
・しっとり重め → ラバー

ざっくりした見分け方ですが、細かく覚えるより、このくらいの感覚のほうが実際に役立ちます。


表記で分かる場合もあります。

「合成底」 → PU・EVA・TPU・PVC のいずれか
「合成ゴム底」 → ラバー
「革底」 → 天然皮革

ただし「合成底」はとても幅が広い表記なので、PUかどうかまでは分かりません。最終的には、見た目と触感の確認が必要です。

価格帯で“傾向”が分かることもあります。

・軽量ビジネスシューズ(5,000〜20,000円)
・歩きやすいパンプス(4,000〜12,000円)
・コンフォートシューズ(5,000〜20,000円)

このあたりの価格帯は、PUミッドソールが採用されやすいゾーンです。

大まかな素材の見分け方をお伝えしましたが、次は "劣化の見分け方" です。


 〈気にするべきは『長期保管』している靴 〉

普段履いている靴は、PUが使われていたとしても、急に崩れる心配はほとんどありません。

なぜなら、その前に「すり減り」や「歪み」で自然と買い替え時が来るからです。

問題は、誰もが一足は持っている
いわゆる “よそいきの靴”

冠婚葬祭や大事な場面のために、
箱にしまったままのあの靴です。


こうした「長期間眠っている靴」こそ、
劣化のリスクが高くなります。



✩.*˚保管している靴をチェックしよう✩.*˚


ここで、チェックするのは、
"アッパー" と"ソール" の状態です。

使用したか未使用かは関係ありません。


前回のアッパー回でも触れましたが、合皮(PU)の劣化は “素材が作られた瞬間” から始まっています。
まだ未使用でも、時間とともに少しずつ進んでいくものなんです。

そして、購入時の価格もあまり関係ありません。
いわゆるハイブランドの靴でも、この点は同じです。


一例として、一般的に保管されていることが多い、革靴などのビジネス・ファッション系の靴でスムース革を仮定して、話を進めます。


☆アッパーのポイント

アッパー(外側)は本革ですか?合皮ですか?

アッパー(外側)が本革か合皮か分からない場合は、購入時を思い出してみてください。
見た目(ツルツルで光沢がある)や手触りがほとんど変わっていなければ合皮。
靴クリームを塗って保管していると、光沢はありますが、合皮のようなツルンとしたツヤ感ではないです。
もし固くなったり、少しくすんだように感じるなら本革の可能性が高いです。

これはあくまで "簡単な見極め方" です。

新品の時は匂いで見極めもできますが、時間が経つと薄れますので、見た目と手触りで見極めるしかありません。

なので、先程書いたポイントを参考に目安に見極めてくださいね。


〈 劣化の見極め方 〉

合皮の場合、見るべきポイントは『質感』です。

・触ると柔らかい
・ヒビが、はいっている
・一部が“浮いている”(水ぶくれのように膨らんで見える)

このような特徴が出てきたら、劣化の最終段階です。
ですが、一見変わりなく見えることも多いです。

少しだけ爪を立てて爪痕が残ったら、引っ掻いてみてください。
爪痕が戻らず、剥がれたらお別れの合図。
履くとボロボロ剥がれてくる可能性があります。


劣化した合皮の状態


これは、靴の内側でも同じことが起こるので、内側のチェックも忘れずにしてみてくださいね。

ライナーやインソールが合皮で、劣化した場合とても気づきにくいです。

履いて出かけて靴を脱いだら、中の合皮が崩れてストッキングやソックスに細かくくっついていて、取るのに困った。
なんて事も・・・

履く前は変わりなく見えても、劣化して弱っているところを急に履くので、簡単に一気に崩れ剥がれます。

なので、履く前にチェックする事をオススメします。


本革の場合、見るべきポイントは『質感』『見た目』です。

・見た目が曇って見える
・触ると固い(板や厚紙のような、乾燥して曲げたら割れそうな質感)

注意!!
実際に曲げると本当にひび割れることがあるので、曲げないでください。
本革なら“柔軟剤入りの靴クリーム”を塗るだけでも、やわらかさが戻り、ひび割れを防げる可能性があります。


☆ソールのポイント

ソールにPUが使われていますか?
革底、ラバーは見てわかりやすいと思います。

ソールの構造の説明で『ソールには2種類以上使われている』と書きましたが、例外があります。

それは、革底です。

革底を使われるのは、今ではほとんどがドレスシューズです。

革底の靴にPUが挟まれることは、まずありません。
革底靴は革を重ねるシンプル構造で、
・足馴染み
・修理ができる
・見た目のクラシックさエレガントさ
を重視していて、10年20年と長く愛用していただくことを前提に作られているので
『寿命の短い素材』を使うことをブランド側が避けているのです。


もしPUが入っているなら、それは革底“風”の合成底のファッション靴である可能性が高いです。

見分け方としては、ソールの側面を見ていただいて、スボンジ状に見える部分があるか、もしくは触ってみて弾力のある柔らかい部分があったら、革底風の合成底です。

だだ、現在の一般的な男性用のビジネスシューズは、PUが使われているものがとても多い。

理由は「軽くてクッションが良い靴」を求める人が多く、メーカーも歩きやすさを優先してPUミッドソールを採用するためです。

価格帯で見ると、5,000〜20,000円の軽量ビジネスシューズはPUが入っている可能性が高い。

そして、ドレスシューズよりも、足あたりの良いビジネスシューズを冠婚葬祭用に選ぶ方も増えています。

価格から見ても、1万円~2万円位が売れ筋でなので、PU底の革靴をお持ちの方がほとんどと言ってもいいと思います。

ちなみに革底の革靴の相場は平均で4万円くらいです。

保管して数年経っていたら、劣化が最終段階に入っているだろうと仮定してチェックしてみてください。

見るべきポイントは『感触』です。

靴底のミッドソールの側面を、指で押してみてください。

PUであれば弾力があるので凹みます。
指を離して凹みが戻れば大丈夫です。
もし戻らなければ、かなり劣化が進んでいます。


そうしたら、次のチェックです。

その凹んだままのところに、爪を立てて軽く引っ掻いてみてください。

アッパーの時と違うのは『剥がれる』のではなくボロっと『崩れ』て取れる感覚です。

このときのソール内部は、
古くなった生け花用の吸水スポンジ(オアシス)のように、
指で触れるだけで崩れてしまう状態に近いので、引っ掻いただけで崩れてしまうことがあります。

これに気づかず履いて出かけると、
歩いているうちにボロボロ崩れて落ちた。
と、なったりするわけです。

崩れなくても、爪痕が戻らない時は、劣化は進んでいるサインです。
履けなくなる前に、ぜひたくさん履いてあげてください。


〈〈 今の状態を知ること 〉〉

男性の靴の場合、ソールの劣化に、
女性の靴(パンプス)の場合、靴の内側の劣化で困って飛び込みで来店される方が多いです。

もし、箱にしまったままの靴があれば、
ほんの数十秒だけでいいので、そっと取り出してみてください。

アッパーの質感、ソールの弾力。
どちらも“今の状態”を知るだけで、靴の未来が変わります。

大切な場面で困らないためにも、
あなたの靴を、少しだけ気にかけてあげてくださいね。





まとめ

2回にわたりお伝えしてきた
『靴の劣化』
長くなりましたが、“劣化”について少しでも分かっていただけたでしょうか。

靴屋で働いていた頃、お客様によく聞かれていたことのひとつに
「これ、長く履けるかな?」
という質問がありました。

この『episode4』で お伝えした通り、靴の寿命は、素材・保管方法・履く頻度など、さまざまな要因が重なるため、一概には言えません。

よく履いていて、見た目で分かる傷みは判断しやすいのですが、劣化の進み具合は分かりにくいものですし、状態の違いを知る機会もなかなかありません。

だからこそ、今回あらためて“劣化”についてまとめてみました。

最後にもう一度お伝えしたいことがあります。
靴は消耗品です。
履けばすり減り、時間が経てば劣化します。

冠婚葬祭用の一足は持っておきたいものですが
「しまう前にお手入れしたから大丈夫」
と思わず、たまに状態をチェックしてあげてください。

どうか劣化のサインを見逃さないでください。

そして、お気に入りこそ、しまっておかずに、たくさん履いてあげてください。

「せっかく綺麗にして取っておいたのに…」と、がっかりされたお客様の顔を、何度も見てきました。
あの瞬間が、本当に切なかったんです。

大切な一足ほど、どうか“今”を一緒に歩いてあげてください。



最後に―――
ここまで読んでくださってありがとうございます。

靴に関わってきた経験が、どなたかの一足を守るヒントになれば嬉しいです。


もし「この靴はどうだろう?」という疑問があれば、気軽にコメントしてくださいね。




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