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楽園フィジーで人生最大の危機を迎えた話

フィジーと聞いて思い浮かぶのは、たいてい南国リゾートではないでしょうか。砂浜で波の音を聞きながら、のんびりと疲れを癒やす——そんな休日を求めて離島を訪れた私は、想像とは違う休み方をする羽目になったのでした。

話は社会人4年目を迎えた頃にさかのぼります。新卒で入社した会社を辞めて、ニュージーランドにワーキングホリデーで1年間滞在していました。旅も終盤に近づき、そろそろ滞在期限が切れる頃、フィジーへの旅行を思い立ちました。離島に1週間滞在して、のんびり過ごすつもりだったのです。

南の島のバックパッカーズは、砂浜の上に柱と屋根が建ててあるだけ。壁もなく、屋根の下に2段ベッドが丸見えの状態で並んでいます。島は小さく、周囲は海です。何もすることがありません。

夜になるとバーが開店したので、宿で知り合ったオーストラリアの女性と夕飯を食べながらおしゃべりしていました。しばらくすると、女性が「この後、ホテルの従業員と飲むから来ない?」と言います。どうせ暇なので行くと答え、一緒に宿の裏口へ移動しました。

裏口に行くと、従業員が輪になって砂浜に座っていました。オージーの女性は「彼らはとても礼儀にうるさいから」と言って、宴会のマナーを説明し始めました。マナーとは、こうです。

順番に名前が呼ばれて杯が回ってくる。来たらまずポンと手を1回打ち「ブラ」と大きな声で言って受け取る。飲む前に両隣の人にお辞儀をする。飲んだら次の人に杯を回す。この繰り返しです。

宴会が始まり、最年長と思われる年配の男性が順番に全員の名前を呼んでいきます。私の名が呼ばれました「ターコー(仮名)」。来た。教わったとおりに手を叩き、ポン「ブラ」小さな杯を受け取って、隣の人にどうもどうもとお辞儀、飲む。「彼女は礼儀正しいね」と遠くでささやき声が聞こえました。

カヴァと言われる飲み物は茶色く濁っていて、まったく酔いません。味もないし、水みたい……。

次第に周りともうち解けて、世間話が始まりました。「オールブラックスの試合、ここに来る前に見ましたよ。サモア戦」あ、回ってきた。ポン、ブラ、どうもどうも、ゴク。「おー、どうだった?」ポン、ブラ、どうもどうも、ゴク。「それが、すごい雨で」ポン、ブラ、(以下同)。

潮風に吹かれながら宴は明け方まで続き、大きな月が水平線に落ちて空が明るくなってきました。そろそろ宴も終了です。解散して私もベッドに戻ります。なんだ、全然酔わなかったな。

危機は、目覚めた瞬間にやってきました。

「体が、動かない」

冷や汗が出ました。全身に力を込めて動かそうとしても、指先がちょっと動くだけ。二日酔いではありません。体が石にでもなったようにまったく動かせないのです。しまった、はめられた。このままどこかに売り飛ばされてしまうのか。

画像はイメージです

昨晩一緒だった従業員の女性がやってきました。

「モーニン、気分はどう?」
「キャント、ムーブ(動けない)」

必死に目で訴える私。すると女性は、やおら大きく手を叩いて

「アーッハッハア!!」

他の従業員も呼んできて全員でベッドを囲み、指さして大笑いです。

「……ヘルプ」

スタッフ大喜び。え、何これ。

結局、私が飲んだカヴァという液体はお酒ではなく、慣れない人が飲むと軽い麻酔のような働きをする飲み物だったようです。のんびり休むはずが、まったく動けなくなってしまった。夕方には元どおりに回復しましたが、すっかり懲りたので翌朝チェックアウトすると伝え、逃げるように出国したのでした。もう全力撤退。

確かに、何もしないで寝て終わったフィジー旅行の話でした。「知らない物を口に入れてはいけません」母の教えが身にしみます。
あー、びっくりした。


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