【恋】あのとき私たちは、きっと恋をしていた
彼と最後に言葉を交わしたのは、
小学校5年生の3月。
彼からの電話で、
私は「うん」としか言えなかった。
彼はその春、転校した。
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私の名前は、『カハリー』。
4歳からクラシックバレエを習っている。
ふりふりの服をよく着ていて、みんなからは「お姫様みたい」と言われていた。
でも、兄は昆虫博士。虫は大好き♡
そのギャップに驚かれていた。
どちらかというと大人しいタイプ。
でも学校では木登りもするほど、自然の中でよく駆け回る女の子だった。

当時、私が好きになった彼の名前は『アキト』。
切れ長の目をしていて、色白の細身の男の子。
転勤族で、2年前に転校してきた。
勉強はできないけど、スポーツ万能。
いつも恥ずかしそうに笑う彼だったけど、積極的に声をかけてくる。
私はそんな彼の姿に心奪われた。

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もう、30年近く前の話になる。
アキトとは小学校5年生のとき、1年間だけ同じクラスになった。
勉強はちょっと苦手。でも運動は何でもできた。
授業で得意なものを発表するときには、教室の前に立ち、狭い場所でも楽々、片手で側転をして見せた。
恥ずかしがり屋だけど甘え上手なアキトは、特に算数が苦手。
私は「教えて〜」と言われては、アキトの机の前に立ち、教えていた。
アキトは、からかってくることもあった。
私が頭にヘアバンドをしていると「かして」と言って自分につけ、女の子を演じる。
アキトといつも一緒にいる仲良しのユウキにも、私のヘアバンドをつけさせていた。
私は「返してよ〜」と言いながらも、自分のものに触れられたり、話したり、笑い合ったりするだけでうれしかった。
クラスでは、月に一回、席替えがあった。
毎回、ご対面方式。
男女それぞれが交代で廊下に出て、好きな席を選ぶ。先生の「ご対面」の合図で、隣の席が誰なのかわかるという方法だった。
席替えはいつも楽しみで、先生が「席替えするよ」と言うと、みんな「やったー!」と喜んだ。
私も、アキトの近くにならないかと、いつも願っていた。
でも、そんなあるとき、席替えをする前に、アキトが私のところに来て、指を差しながら小さな声で言った。
「この席にして」

その瞬間、アキトに「好きだ」と言われたくらいうれしかった。
願わなくても、アキトの隣の席になれる。
そう思った。
“誰にもこの席を取られたくない”
女子の番になり、私は急いでその席を選んだ。
そして先生の合図で、男女ご対面。
アキトに言われた席に向かうと、隣には違う男の子がいた。
期待させられただけだった。
でも、ふと斜め後ろを見ると......
アキトが小さく手を振っていた。
私の方を見てニコニコしていた。

本当は隣の席がよかったけど、アキトの近くで、グループになるときは同じ班になれる。
なぜそんな距離にしたのかはわからないけど、この席を指定されたことは、うれしかった。
ある日、学校の授業でスケートリンクに行く機会があった。
みんなが壁を持って転ばないようにしがみついている中、スポーツ万能のアキトは、誰よりも上手にリンクを何周も滑っていた。
いつも一緒に楽しんでいるのに、そのときは、できるアキトの姿を遠目で見ながら、私とは違う世界を楽しんでいるようだった。
しばらくすると、私も少しずつ壁から手を離せるようになった。
でも......
ドスン!
思い切り尻もちをついて転んでしまった。
すると、アキトが来た。
私の目の前に、すーっと滑ってきて
「大丈夫?」
手を差し出してくれた。

いつもからかってきたり、恥ずかしそうにするアキトが、とても自然に。
私はその瞬間、アキトの本当の優しさに触れたような気がした。
11月、アキトは家族で旅行に行った。
その翌日、学校で会うと、「はい」と一言だけ言われて、花柄の小さな袋を渡された。
私は見ただけでわかった。
“旅行のお土産”
その場で中を開けてみた。
赤くて丸い、小さな鈴のついたイルカのキーホルダーが入っていた。
「ぼくとお揃いだよ」

そう言って笑ったアキトの手には、青い鈴のついた同じイルカのキーホルダー。
アキトは絶対に「好き」とは言ってくれない。
でも、好きでいてくれていることは、感じていた。
私はそのイルカのキーホルダーを、名札につけた。
歩くたびに鳴る鈴。
鳴るたびに、イルカが揺れるのを見る。
私にだけくれたお土産。
誰にも言えないけど、アキトとは気持ちがつながっていると思えた。
そんなアキトが、帰りの会の前に、私に言った。
小さな声で。
私は聞こえていたけど、聞こえないふりをして「何?」って何回も聞いた。
うれしかったから。
もっと大きな声で言ってほしかったから。
「一緒に遊ぼう」
学校外で遊ぶのは、初めてだった。
クリーニング屋さんの前で待ち合わせ。
私は一人で歩いて向かった。
でも、アキトは全然現れない。
時間になっても来ない。
また期待だけさせられたのかな、と思っていると、自転車に乗ったアキトと、いつも一緒にいるユウキたち3人が、私の目の前にシューッと走ってきた。
ニコニコしているアキト。
でも私は、てっきり二人きりだと思っていたから、ちょっとがっかりだった。
みんなで学校に行った。
夕方までバスケをした。
ドキドキは、あんまりしなかった。
ちょっと、すねていた。
アキトの想いが掴めないまま、月日は過ぎていった。
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年が明けたころだった。
アキトから突然、言われた。
「ユウキが、カハリーのこと好きなんだって」
アキトの後ろに、ユウキもいた。
私は頭が真っ白になった。
何も言えなくなった。
すると、ユウキは階段を駆け降りていった。
アキトもユウキを追いかけた。
私はその後ろ姿を見ながら、二人が駆け降りた階段に向かって叫んだ。
「私には、好きな人がいるんだもん!!!」

人生で、一番叫んだ瞬間だった。
思わず、そう声が出てしまった。
彼らに聞こえていたかどうかは、わからない。
けれども、アキトもユウキも、その後もいつものように接してくれた。
一緒にいて、本当に楽しかった。
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でも、その日は来てしまった。
アキトはもともと転勤族。
また引っ越すことが決まった。
転校する前、担任の先生は、アキトの家の電話番号が書かれた紙を、みんなに配った。
私は家に持ち帰って、机の一番下の引き出しにしまった。

そして、3月の終業日。
アキトとは何も言葉を交わさなかった。
アキトの周りには、いつも一緒に遊んでいた男の子たちがいっぱいだった。
好きという気持ちが、少しずつ薄れていた。
でも、忘れられなかった。
名札につけたイルカのキーホルダー。
私の中に、アキトのことが好きという気持ちが、まだここにあった。

終業日が過ぎて、春休みに入った。
私は毎日のように友だちと遊んでいた。
アキトがいなくても、時は過ぎていく。
そんなある日、家にいると電話がかかってきた。
いつものように、私は受話器を取った。
すると、少し間を空けたあと、聞こえた。
「元気?」

声だけでわかった。
アキトだった。
アキトからの電話は、初めてだった。
たまたま、私が取ることができた。
アキトの小さな声に、私は答えた。
もっと小さな声で、
「うん」と。
でも、そのあと、アキトは黙っていた。
何か言われる。そんな気がした。
そしたら、アキトは言った。
「よかった。じゃあね。」
私はアキトに何も言えず、そのまま受話器を置いた。
「好き」とも聞けず、「好き」とも言えず、アキトとはそれっきり、もう話すことも、会うこともなくなった。
あのとき、お互い言えなかったけど、
私たちはきっと「恋」をしていた。
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私は彼との電話を切ってから、何度も机の引き出しを開けて見た。
彼の名前と、彼の電話番号が書かれたメモ。
また電話がかかってくるかもしれない。
そう思いながら待った日もある。
でも、もう電話はかかってこなかった。
私も電話をすることはなかった。
新学期が始まって、新しいクラスになった。
そこには彼はいない。
でも、彼からもらったイルカのキーホルダーは、名札につけたままだった。
もう、私の鈴しか聴こえない。
数日後、寂しくなって、そっと外して、缶にしまった。
大切な思い出とともに。

お読みいただき、ありがとうございました。
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過去の思い出話をつらつらとさせていただき、ちょっと恥ずかしいですが、みなさんの『恋』の話も聞くことができて、うれしいです♡
まだまだ楽しみにしております!
まきちゃん、kenさん、
素敵な機会を、本当にありがとうございました♪
引き続き、よろしくお願いします。
