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【ハチマンコーヒー設定資料】

なぜ小説を書いたのか?「触媒」と「コミュニティナース」が交差するカフェの作り方


「ハチマンコーヒーで、また会おう」
「ありがとうの旅路」の作者の土谷です。

この記事では、これら二つの作品の設定資料などを、制作の背景とともにご紹介したいと思います。


まず、いきなりですが、もともとは小説を書くつもりではありませんでした。

どういうことかと言いますと、ハチマンコーヒー、そのものが作りたい、作るにはどうしたらいいか、というのが始まりでした。
そんなわけで、実在の空き家をベースに簡単な配置図を書いてみたりしてました。

豊後高田市の一角にある建屋をリノベーションして、そこにコミュニティナースがいて、暮らしの保健室があって、近所のお年寄りや、働く人や子どもたちが寄って一休みできる場所。ときどきイベントがあったり、小さな新しいことが生まれるサードスペース。そんなことを想像してました。

初期イメージ
地域の中に置いたイメージ
初期ロゴイメージ


なぜ、こんなことを考え始めたのか。

それは、最近いろんな本と出会う中で、感じられた未来の社会の有り姿として、ぼんやりと、うっすらと見えた希望を、具体的にイメージしてみたくなったからです。

幸福度、多様性、ポスト資本主義、脱炭素、DX

個々のテーマ、議論に触れながら、20世紀型未来観ではない未来を、諦めでなくイメージしていったところ、20世紀ど真ん中の、昭和の町、大分県豊後高田市をベースにアイデアを積み重ねてみました。

「限界を迎えた『省エネ』と、自然科学の踊り場」


おそらく、はじまりは脱炭素でした。
私自身、子どもの頃から、環境問題などのテーマに触れ始めたころの世代というのもあり、また、野山で走り回っていた原体験もあるためか、脱炭素は関心がある一つのテーマでした。
大学でも"触媒"を専攻し、環境問題、エネルギー問題、そして経済成長。この3つの課題を同時に解決する「トリレンマ」の打破を命題に学んでいました。

触媒とは、要するに、省エネにするための補助システムみたいなものです。
とある、よく使われる化学反応に触媒を入れると、200℃必要だった反応が、100℃でできるようになるわけです。
これにより、トリレンマを解消した発展ができないか、というアプローチでした。
私が大学に入った、およそ三十年前から。いや、社会はオイルショックのころから、このアプローチはずっと行ってきました。

ただ、以下のスライドを見ていただいてもわかりますが、オイルショックからバブル崩壊までの間に、既にかなり省エネは行われました。
そのあとは、省エネ効果は横ばい。ご存知の通りに、経済成長もしていません。

スライド抜粋



省エネはあくまで「効率化」であり、エネルギーや資源の消費をゼロにできるわけではないため、どうしても限界があります。また、それは指数関数のように、高度になるほどに省エネのコスパは悪くなります。

省エネを止め、環境に悪くても作りやすいように製品を作る方が、経済成長します。逆も真なりです。
ただ、技術や工夫によって、ギリギリ両方を取るように苦労をしてきました。
教育により技術や工夫を生み出す人をたくさん確保し、大量生産時代の成長を支えてきたのだと思います。
省エネの横ばいは、先進国で日本だけというわけでもないと思いますので、自然科学の発展として、一旦、成熟期に入ってしまって、踊り場に辿り着いたのではないかと思います。

さて話を戻すと、脱炭素は貧しくなることとの戦いであることは、忘れがちです。
地球で使えるエネルギーは、大きくは二種類。太陽光エネルギー(化石燃料[太古の太陽光エネルギー]も含む)か、核エネルギー(核分裂、核融合、地熱[地球内の核反応])。世界の主流は、前者をもっと収穫することを考えています。それは、既得権益者(生態系も含めて)との取り合いでもあり、また、電気は貯めるのが難しいため、水素など物質に変換すれば、またロスが発生します。
大量生産、大量消費で経済を維持することが前提なのは変わらないので、収奪が増えていくメカニズムは避けがたい事実です。
価値を加速度的に生み出さないといけませんので。

自然科学として踊り場に達した今、ディストピアなのか、と言いますと、フェーズが変わったと考えるのが適切だと思っています。
自然科学の発展はエネルギー収奪利用の拡大ですが、歴史ににおいて、エネルギー収奪の効率化(農耕文化、大航海時代、産業革命)の間には、社会制度の成熟を図る時代(封建時代、中世)、社会科学の発展時代があったのではないかと思います。
そうすると、これからの時代は社会科学的な成熟を図って問題を解決することを考える必要があるのではないかと思いました。

「社会を動かす新しい『触媒』=コミュニティナースとDAO」


コミュニティナースや、社会的処方、もっと身近な例ではOne on Oneなどの"聞く"を通じて問題解決を図る取り組みなど、これらは社会科学的に成熟を試みている、最近の取り組みのように思えます。
リンクワーカーと呼ばれる、人と人をつなぐ役割は、私にはまるで、触媒のように思えました。
DX技術である、DAOなども、社会科学的なツールであり、これもまた触媒になり得るものと感じられます。
また、次から次へと難しい問題が発生する世界に対して、柔らかく、また細かく形を変えて対応していく小さな地域コミュニティのレジリエンスの増強。つなぐ力がレベルアップした小さな組織で実現すれば可能ではないか、とも思いました。


このような、人をつなぐ取り組みを、触媒として解釈して考えたら、自然科学的なモデルを社会科学的アプローチにも模倣できるのではないかと思って構想したのがハチマンコーヒーです。

ハチマンコーヒーの仕組み構想図
世界の仕組みに地域をフィッティングさせる機能イメージ図


ただ、ここで壁にぶつかります。こうした温かい「人をつなぐ仕組み」を、利益を追求する資本主義の中でどう自走させ、調和させるのか。その青写真が、どうしても描けずにいました。

「そして、構想は物語(小説)になった」


この構想について、いろんな方と前向きに議論したい。

このために、夢を共有することが必要と考えました。
また、夢を共有するのには、プレゼンテーションでは相手が限られてしまうように感じていました。私は、この構想を、町の、近所の方たちとも共有できることが必要だと思ったからです。

そのためには、実践することも、一つの強力な方法だと思います。しかし、リスクもある。
そこで、物語を作ることにしました。

面白い物語なら、もっと広がって、遠くまで届くかもしれない。それぞれの発想も重ねられるかもしれない。

面白い物語ができるかはわかりませんでしたが、学生時代の演劇サークルや、映画を撮ったりした経験を思い出して、小説を書くことに挑戦してみました。

そこで出来上がったのが、
「ハチマンコーヒーで、また会おう」
「ありがとうの旅路」
です。

「ハチマンコーヒーで、また会おう」はハチマンコーヒー、触媒の物語で、人と人を繋いでいく物語にしました。

「ありがとうの旅路」は温度の物語です。触媒も温度が必要です。触媒がもっと活性化するための、温度の必要性を、ありがとう、という言葉に乗せて描きました。

出来上がった物語をきっかけに、この構想について、いろんな話ができたらと思っています。

ですが、難しい話はひとまずここまで。まずは、彼らが織りなすカフェの日常を、コーヒーでも飲みながら単純に楽しんでいただけたら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


現在、以下の二作品がTalesで連載中です。
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