【アメリカ議会に生きる分断の中の指導者vol.1】下院議長解任と混乱の背景

今回のねらい

アメリカ連邦議会で前例のない下院議長の解任が起き、議会が混乱しました。その経緯をたどり、政党内の対立がどのように政治の停滞を生むのかを考えます。

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アメリカ政治において、下院議長(Speaker of the House)は、議会運営の中心に立つ重要な存在です。議事の進行を管理し、法案審議の優先順位を決め、与党の方針をまとめる役割を担います。その下院議長が、自らの所属政党によって解任されるという事態が、2023年に初めて起こりました。解任されたのは、ケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)議長です。

発端は、政府機関閉鎖(government shutdown)を避けるための「つなぎ予算案」をめぐる対応でした。マッカーシー議長は、行政サービスを止めないようにするため、野党・民主党との協力に踏み切りました。しかし、これを共和党内の強硬派(hard-liners)は「裏切り」と受け止め、議長解任の動議を提出しました。これに賛成した共和党議員は数名でしたが、民主党の賛成が加わり、議長の解任が成立しました。これはアメリカ史上初めての「自党による議長解任」でした。

議長がいなくなった下院は、ただちに機能を停止しました。法案審議も予算編成も進まないまま、議会は混乱に陥りました。共和党は新しい議長を選ぶため、複数の候補を立てましたが、穏健派と強硬派の対立は深刻で、候補者は次々に辞退。党内の分裂(intraparty division)が、国の政治そのものを止めてしまう状況が続きました。

この間、アメリカ政府は再び閉鎖の危機に直面し、国内外から「議会の機能不全」と批判されました。議長不在のまま約3週間が過ぎたのち、ようやく共和党が一人の人物にまとまります。それが、ルイジアナ州選出の下院議員、マイク・ジョンソン(Mike Johnson)です。彼は知名度こそ低かったものの、強硬派・穏健派の双方から「これ以上対立を深めない人物」として受け入れられました。

ジョンソンが選ばれた背景には、「もう争いに疲れた」という党内の心理がありました。何度も候補者を否決するうちに、党内は消耗し、妥協以外の選択肢がなくなっていったのです。こうしてジョンソンは第56代下院議長に選出されました。しかし、この選出は「分断が終わった」ことを意味しません。むしろ、分断の中でようやく見つけた一時的な均衡(temporary balance)にすぎなかったのです。

次回は、ジョンソン議長がどのような立場で議会運営に臨み、分断の中でどんな苦闘を強いられたのかを考えます。

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Jolly_Panda これからも社会の仕組みについて理解できる記事を書いていきます。