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全線遅延中につき、ホテル直行便のみ通常運行

後輩の可愛い女子を連れて行きつけのバーに入った瞬間、今日はきっと楽しい夜になると確信しました。



カウンターに目を向けると、見覚えのある顔が2つ並んでいます。
セフレの深澤くん(仮)と初対面の時から永遠に「付き合ってください」と言い続けてくる宮田くん(仮)。どちらも3歳年下。

その隣には、それぞれに狙いを定めたらしい女の子たちが座っていて、そこだけが独特の熱を帯びていました。

しかも、深澤くんと宮田くんの服装が黒のチェックシャツに白パンツと、なぜか被っています。

想像してみてください。
分かりやすくエロがりを奏でている女の子を侍らかしているアラサー男性が、双子コーデでカウンターに並んでいる姿を。

まだ何も起きていないのに、その空気感だけでもう面白い。4軒目だというのに、ますますお酒が進んでしまいます。



ひとまず店員さんに案内され、ボックス席で後輩と乾杯すると、2人でニヤニヤしつつカウンターを眺めます。

女の子の1人は、初対面だという深澤くんに対して足を絡ませ、いつの間にか肩をはだけさせていました。
もう1人は以前、宮田くんと体の関係があったらしく、露骨に持って帰ってほしいオーラを出しながら、手はずっと宮田くんの太ももに添えられています。
こういう場で遭遇する肉食系女子、とても良いですよね。男女問わず、全力で狩りに行く姿勢はある意味見ていて気持ちがいいなと思います。
一応本心です。



お客さんが帰り、カウンターに案内されたタイミングで少しだけ火をつけてみることにしました。
若い男女の駆け引きを傍観するのが正しい大人なのだと理解していますが、わたしは好奇心旺盛な正しくない大人なので。

隣に座った深澤くんの耳元で、「今日はわたしを持って帰ってくれるんじゃないの?」と囁いてみました。
ついでに宮田くんには、「わたしのこと好きって言ってくれてたの嘘なんだ」と軽く揺さぶりをかけておきます。

どちらも思考が止まるような顔をしたことを確認してから、わたしは後輩と向き直り、我関せずでお酒を楽しみました。

どう転ぶのか、その先の展開なんて知ったことではありません。わたしは今その瞬間が楽しければ良いという歪んだ思考の持ち主です。性格が悪いは褒め言葉として受け取らせていただきます。



結果として、4人はそのまま連れ立って店を出ていきました。

それで終われば普通の夜だったのに、彼等が店を出てから30分後、先に帰るという後輩を見送るために大通りに向かって歩いていたところ、その4人が目の前から歩いてきました。

あんなに分かりやすい構図だったのに、どうやら誰も決断できず、もう一押しもできず、時間だけが過ぎていたようでした。

その不器用さが妙に人間らしくて、「夜の街ってほんとに変な人達しかいないよねぇ」なんて後輩と爆笑しながら彼等を見送り、わたしは店へと戻りました。



するとさらに20分後、深澤くんと彼に抱かれたそうだった女の子が2人で戻ってきたのです。
ホテルに行かなかったらしい。
なんでだよ、行けよ。
そこは行くところだろ。


深澤くんはカウンターにいたわたしの隣に座り、普通に話しかけてきます。しかし、女の子は明らかにわたしとの会話を遮断してきて、不機嫌さを隠そうともしません。

その素直さが、可愛いなと思いました。
それと同時に、若さっていいなとも思いました。

そんな風に、感情がそのまま表に出る感じ。
服装も態度も何もかも、全身で「分かってほしい」をアピールしているのに、遠回しにノーを突きつけられてる感じ。

一方で、わたしはその全てを少し引いた場所から眺め、それをツマミにお酒を飲む女になってしまいました。枯れ具合が嘆かわしい。



ちなみに、深澤くんとは2年くらい前にこの店で知り合いました。
たまたま店で会った時には一緒に飲んで、彼の家にお泊まりして体を重ねる。でも、連絡先の交換はしない。それで成立させている関係です。

交換しようと思えばいつでもできるけど、単純に知らないままの方が面白くない?というわたしのカスみたいな発想のもと、未だにお互い名前と年齢くらいしか知りません。インスタで友達申請がきていましたが、許可はしないことにしています。なぜか?そっちの方が面白そうだからです。



それから少し経って、宮田くんから
「ちゃんと女の子をタクシーで帰らせました」
と連絡がありました。
お前もかい。
そこはいっとけよ。
分かりやすく据え膳してただろうが。


誰の思い通りにもならない夜すぎる。



─帰る直前まで、わたしもそう思っていました。




深澤くんからの助けてくれというアイコンタクトを無視しつつ、店員とのゲームでしこたま飲まされ、見知らぬお客さんからテキーラとシャンパンまで重ねられて、完全にグロッキーになったわたしは店外の非常階段でひとり黄昏ていました。


そのとき、ふと隣に目を向けると、吉沢亮似のイケメンが立っています。
最初は、飲みすぎて幻覚が見え出したのかと震えていたのですが、どうやら実在している模様。そして、見れば見るほど吉沢亮にしか見えない。

しかも彼は、わたしが飲んでいるバーの店員の友達で、バイトが終わるのを待っていると言うのです。

その瞬間確変を確信したわたしは、彼に声をかけてそのまま店に戻り、営業終わりを待たず吉沢くん(仮)とホテルへと向かいました。
え、深澤くん?置いて帰りました。(カス)



あれだけグダグダしていた4人を横目に、結局いちばんシンプルに夜を回収していたのはわたしだったのかもしれません。



それにしても、我が事ながらあの夜はやけに上手い具合に、わたしに都合良く、すべてが噛み合っていたなぁと感心します。

たまにこういう日があるから夜遊びって止められないんですよね。

でも、面白がりすぎてそろそろ誰かに刺されそうな気もしているので、若い子を揶揄うのは程々にしようかなと反省はしておきます。

とは言いつつ、また面白い夜を探しに街へ繰り出すんでしょうけど。




あ、画像は双子コーデの証拠写真です。
どうぞお納めください。