「食欲がわかない」の理由は4つに分かれる|漢方でみる食欲不振のタイプ別ケア
「食べたくない」「食事がおいしく感じない」「おなかが空かない」。こうしたお悩みは、実はとても多くの方が抱えています。漢方では食欲不振をひとくくりにせず、ほかにどんな症状が一緒に出ているかでタイプを分けて考えます。今回の動画では、その見分け方と、それぞれに合いやすい漢方薬を、かんぽぽ博士がやさしく解説しています。
■ まず確かめたい「4つのサイン」
食欲不振そのものよりも、一緒に出ている症状のほうが手がかりになります。動画で挙げているのは次の4つです。
・便秘はあるか
・軟便や下痢はあるか
・おなかの冷えはあるか
・胃下垂はあるか
同じ「食欲がない」でも、この4つのどれをともなうかで、選ぶ漢方薬は変わってきます。まずはご自身がどれに当てはまるか、思い浮かべてみてください。
■ タイプ別の考え方
【食欲不振だけのとき】
ほかに目立った症状がなく、ただ食欲がわかない。そんな方には六君子湯(りっくんしとう)が使いやすい処方とされています。配合されている陳皮(ちんぴ)は、みかんの皮を乾燥させた生薬。胃腸の余分な水分をさばいて、胃の調子を整えるとされています。
【便秘をともなうとき】
意外に思われるかもしれませんが、このタイプではまず便秘のほうを整えることを優先します。お通じが滞ると胃腸全体のはたらきが落ちやすく、食欲不振も長引きやすくなるためです。お通じが整うと、自然と食欲も戻ってくることが多いものです。
【軟便・下痢をともなうとき/おなかの冷えがあるとき】
どちらも、胃腸が冷えて弱っている状態と考えます。おなかを触ると冷たい、冷たいものを食べると胃がもたれやすい——そんな方にも、人参湯(にんじんとう)が向いています。配合される乾姜(かんきょう)は、蒸して乾燥させた生姜。体を芯からあたためて、冷えによる胃腸の不調を整えるとされています。
【胃下垂をともなうとき】
胃下垂とは、胃が本来の位置よりも下に下がった状態のこと。少し食べただけでおなかがいっぱいになる、食後に胃が重く感じる、という方はその可能性があります。こうしたタイプには補中益気湯(ほちゅうえっきとう)。エネルギーを補い、下がった胃を持ち上げるようにはたらくと考えられています。
■ 毎日の養生も3つ
動画の後半では、漢方薬に頼るだけでなく日常でできる養生も紹介しています。
ひとつめは食事のとり方。胃腸が弱っているときは無理にたくさん食べず、腹七分目を心がけること。よく噛むだけでも胃の負担は減ります。
ふたつめは体を冷やさないこと。冷たい飲み物や生野菜、アイスは胃を冷やします。あたたかいスープやおかゆなど、消化のよいものを中心に。
みっつめはストレスをためないこと。ストレスで自律神経が乱れると、胃のはたらきは落ちやすくなります。食後すぐに横にならず、軽く背筋を伸ばして座るのもおすすめです。
■ 漢方薬剤師からの補足
動画では触れきれなかった点を、いくつか補足します。
ひとつは、「食欲がない」は体からのサインだということ。漢方では、胃腸を「後天の本(こうてんのもと)」と呼びます。生まれたあとの元気は食べ物から作られる、という意味です。だからこそ食欲が落ちているときは、まず胃腸に無理をさせないことが先決になります。栄養をつけようと無理に食べるより、量を減らしてでも消化のよいものを選ぶほうが、結果として回復が早いことが少なくありません。
ふたつめは、夏こそ多い「冷たいもの」の落とし穴です。暑い時期は冷たい飲み物が増え、気づかないうちに胃腸が冷えていることがあります。運龍堂でも、夏の終わりから秋口にかけて「食欲が戻らない」というご相談が増える印象があります。氷入りの飲み物を常温に変えるだけでも、体感が変わる方がいらっしゃいます。
みっつめは、ストレスと胃の関係です。「緊張すると食べられない」という経験は多くの方にあると思います。漢方では、気の流れが滞ると胃腸のはたらきも滞ると考えます。この場合は胃腸そのものより、気の巡りを整えるほうを重視することもあります。同じ食欲不振でも、背景によってアプローチが変わるということです。
なお、食欲不振が長く続く場合や、体重が減っていく場合、強い痛みをともなう場合は、まず医療機関にご相談ください。漢方はその上で、体質に合わせて選んでいくものです。
■ まとめ
食欲不振は「原因タイプ」によって選ぶ漢方薬が変わります。便秘・軟便や下痢・おなかの冷え・胃下垂——この4つのどれをともなうかを手がかりに、ご自身のタイプを知ることが第一歩です。そして日常では、よく噛むこと、あたたかい食事をとること、ストレスをためないこと。この3つを意識するだけでも、胃腸のはたらきは少しずつ整っていきます。
食欲不振は、体が「少し休ませてほしい」と教えてくれているサインでもあります。焦らず、胃腸にやさしい生活を続けていきましょう。
漢方についてのご相談は、仙台の漢方薬局・運龍堂までお気軽にどうぞ。オンライン相談も承っております。
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